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大阪・天王寺動物園のゴーゴの壮行会が開催される ~ 出張によって予想される漠然とした不安感

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ゴーゴ (クライ・ユーコノヴィチ - Край Юконович)
(2012年4月19日撮影 於 天王寺動物園)

昨日の3月1日に大阪の天王寺動物園で雄のゴーゴのアドベンチャーワールド(AWS) への出張の壮行会が行われたことはご承知の通りです。 多くの大阪のファンがゴーゴの声援を送ったのも当然のことでしょう。 私は今回のゴーゴの移動には悲壮感や情緒的な思い入れは彼に対してむしろ失礼だろうと思っています。 ゴーゴの今回の移動は「雄の勲章」と理解するべきでしょう。 彼はもう10歳の堂々たる雄の成年個体です。 その彼が日本のホッキョクグマ界に貢献するために気軽に出張するのだと考えるべきでしょう。 母親から別れる幼年個体の移動とは全く状況が異なるわけです。 このゴーゴの父親であるユーコン(現 カザン市動物園)は22歳の時にペルミ動物園からカザン市動物園へ繁殖のためにほぼ片道切符で移動し、そして見事にカザンで繁殖に成功しているのです。 それと比較すれば、ゴーゴの出張に必要以上に感傷的な思いを抱くのはゴーゴにとって失礼でしょう。





天王寺動物園の公式ブログを拝見しますと飼育員さんはバフィン親子の存在があってもなんとかゴーゴを同園に置いておけないかと考えたような形跡を感じますが、しかし展示場が一つだけの施設ではゴーゴを終日非展示状態にするのは動物福祉(Animal welfare) にも反することとなるでしょうし、万難を排してなんとしてでもバフィンの育児を成功させてやりたいと考える飼育員さんにとってゴーゴの出張の決断にそれほど多くの迷いがあったとは私には思えません。 そこにあったのは感情の世界以上に理性の世界の判断だっただろうと思います。

実は私が非常に気にしているのはゴーゴがAWSに出張し、そしてオホトをパートナーとして繁殖に挑戦したその後のことです。 私は大阪市とAWSとの間の契約の具体的内容は全く知りません。 通常のBL契約なのだろうとは思います。 これは私がどうこう言う話ではありませんが、伝え聞くところによればAWSは以前からオホトの育児能力に端から信頼感は持っていないようです。 となればゴーゴをパートナーとしたオホトの繁殖挑戦は出産前から人工哺育という筋立てとなる可能性が大きいでしょう。 AWSのホッキョクグマの人工哺育技術はトロント動物園と並ぶほど世界でも一流であろうと思います。 そういった自己の技術に自信を持つAWSは次も前提なしの人工哺育を決行する冷徹な判断を下すでしょう。 この場合、この人工哺育された赤ちゃんの権利が大阪市にあるのかAWSにあるのかはBL契約の条項次第ですが、それがどうであれ結果的に最後はAWSが権利を持つこととなるでしょう。 かつてはホッキョクグマの人工哺育と言えば、「人工哺育」そのものだけを意味していたわけですが近年欧米では 「人工哺育 + 適応化 (Socialization)」 を総合したものが「人工哺育」となっているわけです。 ところがAWSにはこの 「適応化 (Socialization)」 を行おうという意図はないように私には感じます。

ゴーゴは繁殖に寄与して日本のホッキョクグマ界に貢献するためにAWSに出張し、来年(あるいはひょっとして再来年)、大阪に無事凱旋帰還するでしょう。 その成果は白浜に残した「適応化 (Socialization)」 なき、一頭の名前のない幼年個体の出現ということになるでしょう。 これだったらゴーゴは上野に行った方がましだろうと思います。 ただし上野は短期の出張個体をデアのパートナーにさせることは決して望まないでしょうけれど...。

漠然とした将来の不安感を感じるゴーゴの今回の出張です。日本のホッキョクグマ界、どこかがおかしなことになっているような気がします。

ともあれ、ゴーゴの健闘を祈ります。

(*追記 - AWSの情報によりますとゴーゴは無事に到着したそうです。)

(資料)
天王寺動物園 スタッフブログ
(Mar.1 2015 - ゴーゴ壮行会
(Mar.2 2015 - LOVE G0-GO) (LOVE GO-GO 映像
(*追記資料)
アドベンチャーワールド (お知らせ/Mar.2 2015 - ホ​ッ​キ​ョ​ク​グ​マ​「​ゴ​ー​ゴ​」​が​無​事​に​当​園​に​や​っ​て​き​ま​し​た​!

(過去関連投稿)
大阪・天王寺動物園のゴーゴ(クライ・ユーコノヴィチ)が南紀白浜のアドベンチャーワールドへ
by polarbearmaniac | 2015-03-02 14:00 | Polarbearology

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