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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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バフィンお母さんの母親像を考える ~ 覆いかぶさる緊張感を突き抜けて見えてくる本質的部分

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私は今回大阪に来る前には、バフィンの母親像というものは2~3ヶ月経過しないとわからないだろうと考えていた。 何故なら今回はバフィンの育児初体験、しかも一般公開後の落ち着かなさから考えて、バフィンの緊張感や責任感が前面に出るために彼女の本質的な母親像はそれらによって当面は覆い隠されてしまうだろうと考えたからだ。
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しかし一般公開初日の今日は、確かにそういった緊張感が非常に大きく感じられたものの、その奥にあるバフィンの母親としての本質的な部分は、かなりわかったという点で予想外のことであった。
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まずバフィンは対象(赤ちゃん)からは本質的に一定の距離を置く母親である。
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そしてその距離とは自分の娘と何かの感情を必ずしも共有しないという意味での距離である。
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バフィンにとって自分の娘とは、あくまでも自分の personality の外側にある存在として認識している。
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だからそういった自己の外側に存在している自分の娘とはホッキョクグマ同士の理の勝った乾いた関係を確立することとなる。 だからバフィンがフローラ(仮称)に注ぐ愛情は感情の共有という形はとらないのである。
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子供たちを自分の内側で捕え、そしてそれとの関係を感情の共有化で維持しようとするシモーナやララのような「情愛型」の母親像とは異なり、このバフィンはウスラーダやフギースのような「理性型」の母親に分類される。 このホッキョクグマの母親像についての私なりの考え方については以前の投稿である「『情愛型』 と 『理性型』、『対象関与型』 と 『対象非関与型 』 のそれぞれの母親像の違いを探る」 をご参照頂きたい。

さて、今日午前中にフローラ(仮称)が水の抜かれたプールに転落するとう出来事があった。 こういった場合に備えてプールには木などが敷き詰められていてクッションの役割を果たすようにされていたためフローラは全くケガをすることはなかった。 
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しかし早速プールの底に降りるバフィンお母さんである。 以下の映像は音声を全て必ず on にしていただきたい。 これは落下直後の映像である。


水のないプールに落下した赤ちゃんを上に引き戻そうとするバフィンお母さん

上の映像でわかるようにバフィンお母さんはフローラを上の場所に引き戻そうとするのである。 この場所に娘がいるのは正しい状態ではないのである。 正しくない状態は正しい状態に引き戻さねばならないのである。 これが「理性型」である母親の大きな特徴である。 そしてバフィンお母さんはChuffing と呼ばれる鼻を鳴らす音によってフローラの上の展示場への帰還を強く迫り、そしてフローラを咥えようともするのである。
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しかし一方でバフィンお母さんは奇怪とも思える行動をとる。 それはプール下に敷き詰められていた木々を自分で上の展示場に引き上げるという行動である。 そういった一連の様子を以下の二つの映像でご覧いただきたい。


プールの底から這いあがろうと必死の赤ちゃんを心配そうに見つめるバフィンお母さん- 1

プールの底から這いあがろうと必死の赤ちゃんを心配そうに見つめるバフィンお母さん- 2
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バフィンお母さんが木々をプールの下から展示場の上に引き上げた行為は全くの逆効果なのである。 こうするとむしろプールの底から上への距離が若干長くなってしまう。 この行為を「上の木の枝を目標に上がってきなさい」 というバフィンお母さんのフローラに対する指示なのだという解釈をする方がいらしゃったようだが、私は賛成できない。 バフィンの Chuffing を聞くと、それはそういう解釈は成立しないことがわかるはずである。 それから、バフィンお母さんがフローラに対して「自分で上がってきなさい」と激励しているのだという解釈もあったようだが、私はこれにも賛成できない。 ホッキョクグマは Chuffing は激励や励ましの意味ではやらないからである。 本来こういった状況では前脚を使用して抱きかかえるように持ちあげればフローラは上に戻れるのだが、バフィンがそれをやらないのは、それができないからである。 バフィンはそれほど器用なホッキョクグマではないように思う。 そういうことができる母親は実は世界でも片手の指の数にも満たないほどの経験が十分で力量のある母親でないと難しいのである。 23歳にもなっているバフィンお母さんは一生懸命育児を行ってきた。 そして昨日から娘と共に飼育展示場に復帰したのだが神経がピリピリしていて緊張の連続という表情であり、もう余裕がないのである。
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飼育員さんは育児初体験のバフィンお母さんに試練を与えて娘を上にどうやったら引き戻せるかを考えさせたいという意図だったようにも思うのだが、こういう状態が私が動物園を後にするまで4時間近くも継続されていた。 
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ホッキョクグマの母親の Chuffing というのはいろいろな場合になされる。 それはあのララの育児を見ていればよくわかるのである。 それは子供たちに「そちらへ行くと危険だ」という警告であったり、室内での給餌時間となっても展示場でまだ遊んでいる子供に「帰ってきなさい」という命令であったり、ケンカを始めた子供たちを引き離す方法であったりなど種々存在している。 同じ Chuffing を発していても場面場面で異なった多種の意味を持ち、子供たちはそれを状況で理解する。 ところが今日のバフィンの長時間続いた Chuffing は同じ状況に対して一つの意味として延々として発せられたものなのである。 バフィンにとっての今日の試練とは数時間にわたって同じ意味を持った Chuffing をし続けざるを得なかったことこそが試練だっただろう。
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試練というものをどうとらえるかは人それぞれだということである。
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バフィンお母さんのプール底での授乳

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23歳にもなっているホッキョクグマが育児初体験であるということ自体がどれだけ偉大であり素晴らしいことであるかを本当に理解できるかということが我々にとっての試練でもあろう。 試練が与えられるべきなのは我々であって彼女ではないはずである。
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私にとってはバフィン親子についていろいろと得るところの大きかった一般公開初日だった。 しかし、一般的な意味ではこの「公開初日」は成功したとは言えないと考える。

Nikon D5300
シグマ APO 50-500mm f/4.5-6.3 DG OS HSM
(Mar.10 2015@大阪市・天王寺動物園)

(*注 - フローラというのは勿論、この赤ちゃんたちの正式な名前が決まるまで私が便宜上、勝手につけた仮称である。)
by polarbearmaniac | 2015-03-10 23:30 | しろくま紀行

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