街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ノヴォシビルスク動物園のシルカが大阪・天王寺動物園へ! ~ 「ロシア血統の闇」の深淵を覗く

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シルカ (2014年9月11日撮影 於 ロシア・ノヴォシビルスク動物園)

大阪の地元情報サイトが本日報じたところによりますと、大阪の地元企業がメスで1歳3か月のホッキョクグマ1頭を天王寺動物園に寄贈することとなったそうです。 (*追記 - 直後に大阪市も正式発表しています。) その情報サイトが天王寺動物園から提供された写真を掲載していますが、その写真はシルカの写真に間違いないと考えられます。 「27・28の両日かに同動物園に到着。その後はホッキョクグマ舎で検疫に入るという。気になるお披露目は現時点では未定だが...」 と報じていますが、要するにシルカ入手交渉が開始していたはずの昨年の段階の時点ではバフィンは年末に出産などするはずはないと予想していたことを強く暗示していると考えられます。 「ホッキョクグマ舎で検疫に入る」という意味は文脈からすれば天王寺動物園のホッキョクグマ舎を意味すると思われ、そうなるとシルカは非展示状態がしばらくは継続されるのか、それとも検疫後は一時的に同園内の別施設に移されるのか、それとも同園外に預けられることになるのかは不明です。 いずれにせよ、シルカを寄贈した企業にとっては現在のバフィン親子は結果的には 「邪魔な存在」 となっていることを意味します。
 
シルカの御挨拶 (2014年9月12日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)

このシルカ (シルカ・クラシノヴナ - Шилка Красиновна) の導入はゴーゴの新しいパートナーとして「海外から新たな血統を入れることで種の保存に寄与できる」 という意味付けが大阪市の発表に述べられています。 しかしシルカを 「新たな個体」 と言うならばともかく 「新たな血統」 などとは到底言えないことはホッキョクグマファンならば誰しも知らぬ人はいないと思われます。 使用語彙の是非はともかく、「アンデルマ/ウスラーダ系」という血統です。 この血統を知らない人がいたとすればモグリのファンでしょう。 ですからそのこと自体はどうこう言うほどのものではありません。 しかしゴーゴとシルカとの間の繁殖は、「個体数の確保」にはつながるでしょうが、「種の保全」には寄与しないでしょう。 これが仮に一企業が独力で考えたことならばいたしかたないでしょうが、そうでない外部の入れ知恵があったとすれば問題でしょう。実はこのシルカの血統問題は「ロシア血統の闇」の部分であり、その真相の追及は「血統登録情報の批判的研究 (critical studies)」 というものが不可欠であり、いつぞや触れましたベルリン動物公園のトーニャの血統問題を上回るマニアだけの世界の研究テーマであるわけです。 これは稿を改めてじっくりと書いた方がよさそうですので今回は触れないでおきます。 
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シルカ (2014年9月11日撮影 於 ロシア・ノヴォシビルスク動物園)

まず簡単にこう考えておいて下さい、それは血統登録上はシルカはアンデルマの孫であるクラーシン(カイ)とアンデルマの曾孫であるゲルダとの間に誕生したことになっています。 ゲルダの母親はモスクワのシモーナであり、クラーシンはシモーナの弟ですから、要するにシルカはクラーシンとゲルダの叔父・姪の間に誕生した個体ということになっています(これを分かり易く言えば、皇太子殿下が雅子妃と離婚されて秋篠宮殿下の娘である佳子内親王と再婚され、生まれてきた娘がシルカということと同じです。 いや、こう言っても同じですが秋篠宮殿下が皇太子殿下の娘である愛子さまを誘惑して生まれたのがシルカであるということです。 これはあくまで血統登録上の話ですが)。まあ犬や猫の世界ですと、こういったことは非常によくある話のようです。さて、今度はアンデルマから見ますと、シルカはアンデルマの曾孫であり同時に玄孫でもあるということです。 一方ゴーゴはアンデルマの息子です。ここまでが血統登録情報による間柄です。つまりゴーゴとシルカのペアはアンデルマの息子とアンデルマの曾孫であり同時に玄孫でもある個体とのペアということになるわけですから新しい血統ではありません。

来園者に自分の存在をアピールするゲルダお母さん
(2014年9月12日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)


かつて一度触れましたが、私はゲルダはシモーナの娘ではなく実はムルマの娘であるという見解を持っているわけです。 つまりゲルダは豪太の妹だというのが真相であると考えています。 ですから、ゲルダとクラーシンの間は「叔父・姪」の関係ではないだろうというのが私の見解です。 非常に複雑な問題ですので、やはり稿を改めて書いた方がよいでしょう。 私はシルカの母親であるゲルダの血統問題について以前からいくつかの情報をもとに追及しているわけですが、まだその過程にあるわけです。 結果的に私の仮説が立証できなければ、やはりゲルダはシモーナの娘という血統登録情報が正しいことになるでしょう。 実にこの問題は非常に難解なのです。 「血統登録上」ということと「血統上」ということは異なるわけで、それは区別しておかねばならないわけです。 私は以前、「自分だったらシルカを導入することは避けたい」 と書いたのはこういった彼女の血統部分での大きな疑惑が払拭できないからです。 シルカのパートナーはアンデルマの血もウスラーダの血も(あるいはムルマの血も)入っていない個体、つまり 「ララファミリー」 というのが、せめて本当は正解なのですが、個人的には私はそれも避けてほしいと思っていました。 やはり血統登録情報が仮に正しくてシルカが「叔父・姪」との間に誕生した個体だとすれば血統面で欠点はやはり否めないからです。 シルカは単に 「アンデルマ/ウスラーダ系」 であると同時に 「アンデルマ/ウスラーダ系」 以上の 「アンデルマ/ウスラーダ系」 である可能性があるわけです。 仮に私の仮説が正しく、ゲルダがムルマの娘であったとしてもクラーシンはやはりアンデルマの孫ですからゲルダとクラーシンの間に生まれたシルカはやはりアンデルマの曾孫であることには違いありません。 ですからゴーゴとシルカとの間の繁殖は「個体数確保」にはなりますが「種の保全」に寄与しないという点ではやはり五十歩百歩といったところなのです。

シルカのポリタンク遊び
(2014年9月12日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)


とりあえず、ノヴォシビルスク動物園のシルカの来日は完全に決定し、そして当初はどこで飼育されるかの問題は別として、飼育園は天王寺動物園であることが明らかになったということで本稿をとりあえず終了しておきます。 それから、このシルカにはすでに新しい名前が付いているようですが、彼女のロシアでの誕生から成長、来日、そして日本でのこれからの生活を一貫して捉え、本ブログでは引き続き今後も彼女の名前を 「シルカ」 (シルカ・クラシノヴナ - Шилка Красиновна)で統一して記載することとします。

(*後記 - シルカの血統に実にピッタリの家系図がありました。 これはスペイン・ハプスブルク家の有名な家系図です(クリックすると拡大します)。 
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この家系図をこう読み替えて下さい。

アンデルマ Joanna of Castile
メンシコフ  Ferdinand I
ウスラーダ Anna of Bohemia
シモーナ  Anne of Habsburg
クラーシン  Charles II
ゲルダ    Maria Anna of Bohemia
シルカ    Ferdinand II
ゴーゴ    Isabella of Burgundy

...と、こうなるわけです。 ただしゴーゴの父とメンシコフの父は異なります。 しかしゴーゴ役の Isabella of Burgundy は真っ直ぐ家系を下に降りてきて Maria Anna of Bavaria と同一となるわけです。 つまりハプスブルク家の家系図の一番上にいる Joanna of Castile の血を濃く残したままシルカ役の Ferdinand II とペアになるということです。 シルカは新しい血統ではないということはそういう意味です。 - 出典- 「ハプスブルク家」Wikipedia)


(資料)
THE PAGE (Mar.19 2015 - 天王寺動物園に新たなホッキョクグマ登場へ ── 551蓬莱が寄贈・ゴーゴの次で「イッちゃん」)
大阪市 (Mar.19 2015 - ホッキョクグマの「イッちゃん」が仲間入りします!

(過去関連投稿)
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(2014年9月ノヴォシビルスク動物園訪問記)
◎2014年9月11日(木曜日)訪問
・リバーパークホテルからノヴォシビルスク動物園へ ~ ホッキョクグマたちに御挨拶
・容姿端麗なゲルダお母さん、その娘への態度に見る子育て初体験の初々しさ ~ 育児スタイルを模索中
・シルカ、順調に成長を遂げるその素顔
◎2014年9月12日(金曜日)訪問
・ノヴォシビルスク動物園訪問二日目 ~ ゲルダお母さんとシルカの不安定な関係
・ゲルダの将来への道のりと課題 ~ 一頭の母親と一頭の雌の二役の演技の動機となっているもの
・シルカ、その聡明かつ醒めた知性が発散する魅力 ~ ミルク、マルル、ポロロを超える逸材か?
・クラーシン(カイ)の性格とその素顔 ~ 双子兄弟のピョートル(ロッシー)との違い
◎2014年9月13日(土曜日)訪問
ノヴォシビルスク動物園訪問三日目 ~ "Pour que Gerda et Shilka soient heureuse..."
シルカちゃん、ゲルダさん、クラーシン君、お元気で! そしてまた会う日まで!
by polarbearmaniac | 2015-03-19 16:15 | Polarbearology

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