街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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イギリスのヨークシャー野生動物公園に移動した二歳の雄のピセル ~ 「基準」を超えた環境へ進む欧州

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ピセル Photo(C)FamerFlynet.uk

大阪や札幌の赤ちゃんたちについて投稿している間も世界ではいくつかのニュースが流れていますので主なものだけも漏らさず投稿しておくことにします。 欧州では生後二年を母親と暮らした若年個体を一か所に集める「集中基地システム」が発動し始めたわけですが、その手始めとしてオランダ・ヌエネンの 「動物帝国 (Dierenrijk)」 で2012年の11月にフリーマスお母さんから誕生した二歳の雄のピセル (Pixel) が3月24日にイギリスのサウス・ヨークシャー州、ドンカスター市近くにあるヨークシャー野生動物公園 (Yorkshire Wildlife Park) に向けて出発したというニュースはすでに投稿しています。 このピセルですが、オランダのロッテルダム港からフェリーでイギリスのハルに渡り翌日ノ3月25日に無事にヨークシャー野生動物公園に到着していますが、その輸送の過程が映像で公開されていますのでご紹介しておきます。 右側通行のオランダから日本と同じ左側通行のイギリスへ、といったところが面白くもありますが搬入の様子も興味深いところです。 ピセルはやはり相当周囲を警戒しています。



次の映像では飼育員さんからいろいろ食べ物をもらっているピセルの様子です。 なかなか食欲があるようです。



次の映像はピセルの様子と共に、このヨークシャー野生動物公園の担当者が “Project Polar” について語っています。 ホッキョクグマ保護活動を目的として、まず欧州における繁殖計画に関わる個体の待機施設といった役割を担うことも紹介されています。



このヨークシャー野生動物公園にはすでに昨年8月にオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園から移動してきた繁殖の舞台から強制引退させられた16歳の雄のヴィクトルが暮らしているわけですが同園では将来的にはピセルとヴィクトルを同居させたいと考えているようです。 同園には広々としたホッキョクグマの飼育場が三つほどあるようですが、年内にまた二頭ほどの若年の雄のホッキョクグマが移動してくるそうですので今のうちにピセルとヴィクトルの同居を成功させてスペースを一つセーブしておきたいという理由なのかもしれません。 しかしこの雄二頭の同居には危険性も大きいわけで、かなり入念な準備が必要となるでしょう。
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ピセル Photo(C)PA

このヨークシャー野生動物公園にプールされて飼育されるのは今後は雄の若年個体ばかりとなるわけで、雌の若年個体の集中基地であるオランダのエメン動物園に飼育される個体とペアが形成され、5~7歳で欧州域内の他の動物に移動するというプロセスを経ることになるわけです。 札幌・円山動物園に数年後に完成するはずの新施設ですが、仮に交換個体として欧州から雄の個体が来るとすれば、このヨークシャー野生動物公園からということになります。 円山動物園の新施設はいわゆる欧州個体導入に適合した「基準」をクリアするものになるわけですが、しかし欧州ではこのような「基準」を遥かに超えた環境でホッキョクグマが飼育され始めているわけで、このヨークシャー野生動物公園から雄の若年個体が日本に来るなどという状況ではもうないといって良いようにも思います。 それほど欧州側の状況がさらに先を行っているということです。 欧州のホッキョクグマ界で何が起こっているのか、そしてその意味は何なのか...これを知っておかねばならないわけです。 

我々日本には産業の多く、特に技術が関連した産業については欧州を遥かに凌ぐものはいくつもあるわけですが、ホッキョクグマの繁殖計画という点においては、大きく遅れをとっているようです。 日本の先進性を担っている企業の多くは海外の動向に非常に注意を払い、そして多くの情報を把握してきたわけですが、そういった先進性とは無縁の企業においては日本という閉じた世界で海外の動向とは無縁で活動してきたというわけです。 日本における「動物園」というものが後者ではないのだとはとても言い切れないでしょう。

(*追記) この 「ピセル(Pixel)」 という名前の表記はオランダ語読みですが、彼がこうしてイギリスに移動しましたので今後はこの名前を英語読みにして「ピクセル」と表記することにしますが、ただし今までのオランダ語読みとの連続性を保つため 「ピクセル(ピセル)」 という二重表記を採用することとします。

(資料)
Yorkshire Wildlife Park ("Project Polar") ("Meet Pixel")
BBC (Mar.25 2015 - Yorkshire Wildlife Park gets second polar bear)
Yorkshire Post (Mar.25 2015 - Second polar bear homed in Doncaster)
Daily Mail (Mar.25 2015 - Welcome t'zoo young lad! New two-year-old polar bear arrives at wildlife park in Yorkshire)

(過去関連投稿)
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欧州がホッキョクグマの幼年・若年個体をプールする 「集中基地」 を計画 ~ 雌はオランダ、雄はイギリスへ
オランダ・ヌエネン、「動物帝国」のピセルがイギリスへ ~ 欧州の若年個体「集中基地システム」が発動
by polarbearmaniac | 2015-04-08 23:30 | Polarbearology

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