街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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大阪・天王寺動物園でのバフィン、フローラ(仮称)、シルカの三頭同居は可能か?

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バフィンとフローラ(仮称) (2015年3月21日撮影)
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シルカ (2014年9月11日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)

大阪・天王寺動物園でのシルカの一般公開の日が迫ってきたと考えてよいでしょう。 このことはつまり、バフィン親子とシルカの交代展示が行われることを意味しているわけです。 同園としては非常に頭の痛いところだろうと思います。常識的に考えれば午後1時半頃まではバフィン親子、それ以降閉園まではシルカということになるのではないでしょうか。以前に同園の公式ブログで「バフィン親子の観察は午前中がお奨めであり昼からは授乳や昼寝が多い。」という内容が記載されていましたが、穿った見方をすればバフィン親子とシルカを交代展示とするための伏線のような気がしないでもありません。 しかし一方で同園の御担当者の頭の片隅にはバフィン親子とシルカの三頭同居の可能性を探っていることも間違いないように思います。 さて、このバフィン親子とシルカの三頭同居の実現をどう考えるべきでしょうか?
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バフィンとフローラ(仮称) (2015年3月28日撮影)
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シルカ (2014年9月11日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)

こういった場合には過去にその実例があるかを調べてみることが必要でしょう。 そして非常に最近、この例がありますのでそれをご紹介しておきます。 こういった思い切った試みを行うのはもちろんデンマークのあのスカンジナヴィア野生動物公園です。 その例について「デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーとネヌ、ヌノの同居 ~ ドキュメンタリー番組より」 という投稿を是非ご参照頂いただきたいのですが、2012年11月にイルカお母さんから誕生した双子である雄のネヌ (Nanu) と雌のヌノ (Nuno) が、2011年11月にやはりイルカお母さんから誕生し人工哺育で育てられた雄のシークー (Siku) と同居するという試みです。 もちろんイルカお母さんが一緒にいますから正確には四頭同居となるわけですが、イルカお母さんにとってシークーは自分の血統上の息子ではあるものの人工哺育で育てられたためにイルカお母さんにとってシークーは「赤の他人」というわけです。 ですからシークーもシルカも同じ立場に立っているということになります。 この様子をデンマークのTV局がドキュメンタリーにしています。 該当部分はその番組のPart 2 (約28分)の部分ですのでそれを再びご紹介しておきます。 

開始から4分30秒あたりまではバックヤードでのイルカ親子とシークーの顔合せ、そして4分50秒からこの四頭同居の開始となります。 開始後8分あたりのシーンではイルカお母さんがシークーを追いかけていきます。要するにイルカお母さんにとってはシークーは「邪魔者」なのです。 ところが双子であるネヌとヌノは自分たちより一歳年上のシークーに興味があって、一緒に遊びたいという行動も見せるわけです。 それに対して警戒していたイルカお母さんがシークーに接近して威嚇し、自分の子供たちと遊ばないようにさせるシーンが開始後約10分40秒以降あたりです。



さて、それやこれやでなんとかこの四頭同居は成功したようですが、しかしシークーはかなり孤立してしまっていることも事実です。 母親であるイルカはシークーを威嚇はするものの危害までは加えてはいません。

ではバフィン親子とシルカだったらどうでしょうか? まず間違いないのは、フローラ(仮称)はシルカに興味を持って一緒に遊ぼうと接近するでしょう。 シルカも自分と年齢の近いフローラに接近するでしょう。そしてフローラとシルカは周りが邪魔しなければ大の仲良しになる可能性は十分あると思います。 しかしバフィンお母さんが激しくシルカを威嚇するでしょう。 威嚇するだけで終わるかどうかは予断を許さないでしょう。 しかしシルカというホッキョクグマは極めて頭が良くて「場を読む」能力が抜群です。 ですからもうシルカはフローラには接近せず、バフィンお母さんからもうまく逃げ回るでしょう。 この状態が継続するだけならば三頭同居は一応は可能なようにも思います。

しかしバフィンお母さんというのはかなり神経質で、今回はフローラの育児に自分の全精力を傾けているわけです。 なにしろバフィンお母さんにとっては自分の人生(Bear’s life) を賭けているわけです。 そしてバフィンお母さんにはもう現在以上の余裕というのはないわけです。 キャパシティーがもう無いわけです。 こういった状態で「外部の邪魔者」であるシルカが登場すれば、それを受け入れる余裕がないどころか、自分の今までやってきた行為、つまり出産と育児に対して “Liquidation” という「清算行為」を行う可能性が十分あると私は考えます。 これはまさに「フロイト的」な解釈の世界ですが、要するに「初期化」という意味に近いことを意味します。 何に対して “liquidate” するかと言えば、それは自分の娘であるフローラ(仮称)に対してです。 つまり自暴自棄になってフローラに危害を加え、その存在を消すことによって自分の今までやってきた行為を「初期化」してしまうということです。 バフィンというホッキョクグマは一歩間違えれば何かが「爆発」してしまうような危うさを秘めているように私は思います。 これはあくまでも可能性の問題ではありますが。
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バフィンとフローラ(仮称) (2015年3月28日撮影)
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シルカ (2014年9月11日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)

さて、そうは言うものの、では交代展示ならば安心だろうと思う一方で、世界の動物園でホッキョクグマの赤ちゃんが誕生して母親と一緒に展示場に登場しているという状態は、それこそまさにホッキョクグマ飼育における「最高の状態」なのです。 世界の多くの動物園の中でこの光景を見せることのできる動物園がいったいいくつあると思いますか? このブログを開設してから5年半になりますが、世界で最も多くの頭数の飼育下のホッキョクグマが存在しているアメリカ合衆国の動物園で、この期間中に「最高の状態」を見せることができたのはトレド動物園ただひとつです(野生孤児の保護や人工哺育の場合は親子の展示にはなりません)。 将来、ゴーゴとシルカのペアで繁殖を狙うとはいってもシルカが本当に出産・育児に成功するかどうかはやはり不確実な話なのです。 ところが現在こうして現実にバフィン親子という素晴らしい存在があるわけです。 そういった素晴らしい存在が展示されている時間を現在の半分にしようという考えは不合理な話ですし、そういったことをやろうという動物園は世界でも極めて稀でしょう。 現在のバフィン親子の姿を大事にしなくて、いったい何を大事にしようというのでしょうか? そしてシルカもまだわずか一歳です。 動き回らせてやる必要が不可欠であるわけです。 バフィン親子の終日展示、シルカの終日展示、この両方を実現していただかなくてはなりません。 その一つの可能性としてのバフィン親子とシルカの三頭同居は理屈の上では有り得ますがリスクの大きさは無視できるものではありません。 それ以外の方法が必要だということです。

いったいそもそも、何故このような状況になってしまっているのでしょうか?

(*追記) これは私見ですが具体的方法としては、シルカをホッキョクグマ飼育に経験があり、そして終日展示が可能な空きスペースが現時点で存在している動物園に預けるということです。常識的に考えれば円山動物園かとべ動物園のどちらかでしょう。 この二園のどちらかで、大阪でのバフィンの子育てに一定の目途がつくまでシルカの終日展示の飼育を依頼するということです。特に円山動物園はホッキョクグマについての「大キャンペーン」を行っていますので心よくシルカの受け入れを承諾してくれそうな気がしますが。 そして後は天王寺動物園が支援企業に対してシルカには終日展示が必要だという「動物福祉(Animal welfare)」を前面に打ち出してどう説明するか、それだけの話だと思います。

(資料)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Siku og tvillingerne)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Jun.9 2014 - Siku og tvillingerne 1:2)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Jun.16 2014 - Siku og tvillingerne 2:2)

(過去関連投稿)
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーとネヌ、ヌノの同居 ~ ドキュメンタリー番組より
*大阪・天王寺動物園訪問
・3月10日訪問(一般公開初日)
・大阪・天王寺動物園のフローラ(仮称)ちゃん、初めまして! ~ 小雪の舞った日に点火されたローソク
・フローラ (Flora - 仮称)の素顔とその性格
・バフィンお母さんの母親像を考える ~ 覆いかぶさる緊張感を突き抜けて見えてくる本質的部分
・3月14日訪問
・バフィン、その「理性型」母親像が見せる「非理性型」としての側面 ~ 未完のドラマの始まり
・フローラ(Flora - 仮称)、その「花と春の女神」 の気儘な土曜日
・3月21日訪問
・バフィンお母さんとフローラ(仮称)ちゃんの春分の日 ~ 昼寝に見る「理性型」と「情愛型」の母親像
・フローラ(Flora - 仮称)、その「花と春の女神」の喪失すること無き純粋な幼少美の世界を近写する
・3月28日訪問
・「花と春の女神」 フローラ(Flora - 仮称)とバフィンお母さんの華やかなる土曜日 ~ 美しきその成長
*ロシア・ノヴォシビルスク動物園訪問記
◎2014年9月11日(木曜日)訪問
・リバーパークホテルからノヴォシビルスク動物園へ ~ ホッキョクグマたちに御挨拶
・容姿端麗なゲルダお母さん、その娘への態度に見る子育て初体験の初々しさ ~ 育児スタイルを模索中
・シルカ、順調に成長を遂げるその素顔
◎2014年9月12日(金曜日)訪問
・ノヴォシビルスク動物園訪問二日目 ~ ゲルダお母さんとシルカの不安定な関係
・ゲルダの将来への道のりと課題 ~ 一頭の母親と一頭の雌の二役の演技の動機となっているもの
・シルカ、その聡明かつ醒めた知性が発散する魅力 ~ ミルク、マルル、ポロロを超える逸材か?
・クラーシン(カイ)の性格とその素顔 ~ 双子兄弟のピョートル(ロッシー)との違い
◎2014年9月13日(土曜日)訪問
ノヴォシビルスク動物園訪問三日目 ~ シルカちゃん、ゲルダさん、クラーシン君、お元気で! (現在正式投稿準備中)

(*注 - フローラというのは勿論、この赤ちゃんの正式な名前が決まるまで私が便宜上、勝手につけた仮称である。)
by polarbearmaniac | 2015-04-18 23:55 | Polarbearology

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