街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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浜松市動物園のキロルの今後を展望する ~ 「さすらいのホッキョクグマ」 となるのか?

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キロル (2012年5月20日撮影 於 浜松市動物園)

2008年12月に札幌の円山動物園で双子の一頭として誕生したキロルももう6歳です。 双子のもう一方であるイコロは無事に上野動物園にパートナーを見出したのですが、問題はこの残るキロルです。 来年は彼の身辺に大きな変化が起きることは間違いなく、そのあたりのことを考えておきましょう。

まずそもそもキロルがおびひろ動物園から浜松市動物園への移動の理由は「共同声明2011」にこう述べられています。

「浜松市動物園で飼育しているバフィン(19 歳)メスが大阪市天王寺動植物公園事務所のゴーゴ(6 歳)とのペア形成を目指し移動。浜松市動物園からホッキョクグマがいなくなることから、教育的展示並びに、おびひろ動物園で兄弟で飼育しているイコロ・キロルのオス同士の闘争回避のため、キロルを預託。」

二頭の闘争回避も理由としては挙げられてはいますが実質上の理由はホッキョクグマが不在となる浜松市動物園がホッキョクグマを展示させ続けるための補充としてということなのです。 そして契約内容はアイラ、マルル、ポロロのケースと同じ 「預託」 ということです。それ以上でも以下でもないわけです。 さて、キロルのおびひろ動物園出発を報じるニュース映像を再度見ておきましょう。


ホッキョクグマのキロル静岡へ 投稿者 samthavasa

さて、バフィンは早ければ今年の年末、すでに広く語られている話からすれば遅くとも来年春頃までには浜松市動物園に帰還します。 これは事実上の決定事項と考えてよいでしょう。 そしてその時にフローラ(仮称)が同行するのかしないのかは明確ではありませんが、「同行しない」という確率の方が高いかもしれません。

しかしフローラが「同行」しようがしまいが浜松市動物園にバフィンが帰還するということは、キロルが浜松に送られた目的は達成されたわけですからキロルは浜松から移動となるでしょう。 どこに移動するかは難しいですが、通常で考えれば帯広か札幌帰還でしょう。 しかし帯広は現在札幌にいるオクタヴィアン(仮称)が移動する可能性がありキロルの帯広帰還は難しいでしょう。 一方札幌ですが、これは有り得ます。 キャンディが今年の繁殖に成功しなければキャンディは来年早々に豊橋帰還でしょう。 その空いたスペースにキロルが入るということは有り得るでしょう。 (*注 - ここのところは注意が必要です。円山動物園が今まで幼年個体を生後一年強ほどで他園に移動させた理由は、ララの繁殖を二年サイクルで狙うという目的からだったわけですが、果たして今回また来年の2016年にララの繁殖を狙うのかという問題については同園の態度は現時点では明確ではないように思います。ですからオクタヴィアンが生後一年強でララから本当に引き離されるかどうかは予想が難しいわけです。 これはバフィンについても同じで、バフィンが2016年にさらなる繁殖に挑戦するのであればフローラを生後一年ほどでバフィンから切り離すことになりますが、バフィンの年齢から考えて繁殖への再挑戦の可能性には疑問符が付くわけです。 それならばバフィンとフローラの同居二年目を想定せねばならないわけですが、そういう問題意識がないままバフィンの来年早々の浜松帰還が広く語られる背景にはシルカの存在を抜きにしては考えられないわけです。 フローラをバフィンから切り離すことが当然のように語られるのならばバフィンの2016年の繁殖再挑戦が背景になくてはならないのにそれがないということは、浜松に帰還したバフィンと浜松に残留したキロルとの間での繁殖を試みるという発想がどこかにあるのかもしれません。 バフィンと、そしてキロルの父であるデナリとの間のペアリングは「血統登録情報」に関する限りは四親等だったために回避されたという事情があったわけですが、キロルは「血統登録情報」に関する限りでは五親等のはずで条件はクリアすると考えられます。 種別調整者の方の考え方次第でしょう。) ただし2017年に完成すると言われている円山動物園の「新ホッキョクグマ飼育展示場」にキロルが入るということはないでしょう。 この「新ホッキョクグマ飼育展示場」に入るのは「ララファミリー」の雌の若年個体、つまりアイラ、マルル、ポロロのうちの一頭(あるいはひょっとして二頭)であることは間違いありません。 そしてこのアイラ and/or マルル and/or ポロロのパートナー個体の雄を海外(欧州)から個体交換で導入しようというのが円山動物園の考えていることでしょう。  
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キロル (2012年5月20日撮影 於 浜松市動物園)

さて、キロルですが、こうなると仮にマルルやポロロが札幌に戻れば、その「穴埋め」に熊本か徳島に移動する確率が高いでしょう。アイラが札幌に戻るということならば、キロルは帯広に移動するのではなく今度は別の場所に移動する可能性が高いでしょう。 どこかはわかりません。 しかしこうして考えてみれば、このままではキロルは「さすらいのホッキョクグマ」として一生を終える可能性が大きいでしょう。 キロルのパートナーと成り得るのはミルクとかシルカとかフローラ、あるいは浜松に帰還するバフィンとか、キャンディなども考えられるわけですが、この可能性を考えてみるためには別の重要な要因を考慮せねばなりません。 また移動先としては新飼育展示場を計画しているハバロフスク動物園という手はあるかもしれません。 実は考え方によってはこれは非常に有力だと言えるでしょう(つまりキロルを野生出身個体と組ませる可能性が出てくるわけです)。 これについては稿を改めたいと思います。

おびひろ動物園でイコロとキロルの二頭を見た浜松市動物園の担当者の方が指名したのはキロルでした。 キロルは「ディオニソス的ホッキョクグマ」ですから、二頭を並べてみて浜松市動物園の方が「アポロ的ホッキョクグマ」であるイコロよりも「ディオニソス的ホッキョクグマ」であるキロルを選択した気持ちは、ある意味ではよくわかるのです。 キロルを見送るイコロの姿です。



この瞬間、この双子の運命は大きく別れたのでした。

(資料)
ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明 (Feb.18 2011)

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by polarbearmaniac | 2015-04-24 23:30 | Polarbearology

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