街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・カザン市動物園がブラジル・サンパウロ水族館のピリグリムとオーロラの売却否定に追い込まれる

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ピリグリム Phoyo(C)Оренбургские новости

今回の件は実は以前の何回かの投稿を相当に注意深く読んでいただいた方には興味のある話だと思いますが、一般的にはあまり関心を持っていただけない話だと思います。 やはり超マニア向けの話だと思いますので無視していただいて結構です。 ロシア・タタールスタン共和国のカザン市動物園が権利を持つ5歳の雄のピリグリムは同園でマレイシュカお母さんから誕生したもののロシア国内でのホッキョクグマの権利関係の交換により所有権はモスクワ動物園が持っていたわけですが、モスクワ動物園はそれをカザン市動物園に寄贈したわけでした。 この経緯については「モスクワ動物園がカザン市動物園に1頭のホッキョクグマを贈与 ~ 帰属意識と権利関係の狭間で」をご参照下さい。 さて、このピリグリムについてカザン市動物園はその施設の貧弱さの問題と思われる理由によって彼をイジェフスク動物園(正式にはウドムルト動物園 - Зоопарк Удмуртии)に預けたわけです。 一方、2010年にロシア極北のタイミール半島で野生孤児として保護された雌の双子であるオーロラとヴィクトリアは当初はクラスノヤルスク動物園で保護・飼育されたものの連邦政府において野生のホッキョクグマを管轄とする自然管理局 (RPN - Федеральная служба по надзору в сфере природопользования) の指示によってオーロラについてはカザン市動物園で飼育させる決定が下されたもののカザン市動物園には十分な施設が用意できないために、カザン市動物園はオーロラをクラスノヤルスク動物園からイジェフスク動物園に直接移動させ、その飼育を委託するという処置を行ったわけです。 つまりカザン市動物園は自園が権利を持つ雄のピリグリムと、そして連邦政府の自然管理局(RPN)によって飼育の代行を命じられた野生孤児の雌のオーロラの二頭を共にイジェフスク動物園に預けたという形になったわけです。
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ピリグリムとオーロラ Photo(C)La Prensa

ところが昨年末にこのピリグリムとオーロラは忽然をイジェフスク動物園から姿を消し、今年になって南米ブラジルのサンパウロ水族館 (Aquário de São Paulo) にペアとして姿を現したわけでした。 この件については「ロシア・イジェフスク動物園のピリグリムとオーロラ、同園から忽然と姿を消す ~ ブラジル行きの真相と深層」、及び「ブラジル・サンパウロ水族館に忽然と姿を現したロシア・イジェフスク動物園のピリグリムとオーロラ」という投稿をご参照下さい。 このピリグリムとオーロラのサンパウロ水族館への搬入の様子を以下でご覧ください。



私は前回の投稿の中でカザン市動物園、イジェフスク動物園、そしてサンパウロ水族館の三つの施設の間で何か不透明なことが行われている可能性が非常に高いと指摘したわけです。 つまり、ロシア国内のホッキョクグマの野生個体の権利は全て終生ロシア政府に帰属しているわけで、その連邦政府の自然管理局(RPN)がそういった野生(孤児)個体を保護するために国内の動物園に飼育の代行を委託しているだけであり、そういった動物園は連邦政府が権利を有する野生(孤児)個体を売却することはできないということだからです。  ブラジルのサンパウロ水族館は現在大阪の天王寺動物園で飼育されているノヴォシビルスク動物園生まれのシルカの入手を狙ったものの成功せず、結果として新設した新ホッキョクグマ飼育展示場にホッキョクグマを展示するためにピリグリムとオーロラを導入したわけですが、それは同館がこの二頭の個体の権利を獲得しようという意図は明らかであり、それはロシアにおける野生のホッキョクグマの保護と権利帰属について構築されたシステムからの一種の「脱法行為」を窺わせるものであることは言うまでもありません。 本来は国外に出すことなど到底できないはずの野生個体の導入に成功したということは本来で言えば実は有り得ない話なのです。 ここでサンパウロ水族館での最近のピリグリムとオーロラの姿をご紹介しておきます。





さて、最近のロシア国内の報道でこのサンパウロ水族館のホッキョクグマのペアはロシア出身であるという報道がいくつもなされ始めたわけです。そういった報道を二つほどご覧にただきましょう。





さて、そしてそういう報道に疑問を持った方がいたのでしょう。 カザン市動物園は突然今日になってマスコミに対して「ピリグリムとオーロラは当園の新施設完成までの二年間限定でサンパウロ水族館に預けただけである。 野性出身個体はロシアの法律では売却ができず、せいぜい短期間 (*二年間が短期間と言えるかどうかは疑問ですが) の移動が認められるだけである。」と発表したわけです。 そして野生出身ではないピリグリムについてもブラジルに売却する意思はないと発表しました。 こういったカザン市動物園の突然の発表の背景には今回のこの二頭のブラジルへの移動に疑問の声をあげた方がいるとみて間違いないでしょう。 あるいは自然管理局(RPN) からの追及があった可能性も否定できないと思います。 そういった理由であわてて今日になってこのような発表をしたものと思われます。 サンパウロ水族館にしてみれば、このピリグリムとオーロラのペアの存在を既成事実化した後に購入を目論んでいたもののカザン市動物園が今日になってこのような発表に追い込まれたことは予想できなかったに違いありません。

ともかくこれでサンパウロ水族館はピリグリムとオーロラのペアの購入は不可能となり、この二頭はロシアに戻ることは必至の情勢となりました。 二年を待たずしてこの二頭はロシアに帰国すると思われますが、ひょっとしてカザン市動物園はピリグリムだけは売却するかもしれません。 何故なら彼は野生出身個体ではないからです。 サンパウロ水族館はあるいはシルカの入手に成功していればピリグリムとペアにしようとさえ考えていたのかもしれません。 ともかくこれで一連の不透明な状態はかなり解消したわけです。

(資料)
Оренбургские новости (May.20 2015 - Пара казанских медведей – Пилигрим и Аврора – отправились на 2 года в Сан-Паулу)
Татар-информ (May.20 2015 - Два белых медведя из Казани на два года отправились в Сан-Паулу)
Interfax Russia (May.20 2015 - Казанские белые медведи Пилигрим и Аврора на время ремонта в зооботсаду отправились в Бразилию)
ProKazan (May.20 2015 - Двух краснокнижных белых медведей из Казани отправили в Бразилию)
Телерадиокомпания «Казань» (May 20 2015 - КАЗАНСКИЕ МЕДВЕДИ ОТПРАВИЛИСЬ В БРАЗИЛИЮ)

(過去関連投稿)
(*以下、ピリグリム関連)
ロシア・カザン市動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!!
ロシア・カザン市動物園で生まれた赤ちゃん(続報)動画公開!
モスクワ動物園、ロシア国内の幼少ホッキョクグマの売却一元管理を開始か?
ロシア・ウドムルト共和国のイジェフスク動物園 ~ 「さすらいのホッキョクグマ」ピムの安住の地となるか
モスクワ動物園がカザン市動物園に1頭のホッキョクグマを贈与 ~ 帰属意識と権利関係の狭間で

(*以下、オーロラ関連)
ロシア極北・タイミール半島でホッキョクグマの2頭の赤ちゃんを保護!
ロシア・タイミール半島で保護された赤ちゃん孤児の続報
ロシア・クラスノヤルスク動物園の2頭の赤ちゃん孤児、同市に留まり同居の継続が決定!
ロシア・クラスノヤルスク動物園で暮らすタイミール半島で保護された双子の孤児の名前が決まる
ロシア・クラスノヤルスク動物園で保護の双子の孤児に別れの時来る ~ オーロラがイジェフスク動物園へ

(*以下、ピリグリムとオーロラ関連)
ロシア・ウドムルト共和国イジェフスク動物園でピリグリムとオーロラが「結婚式」 ~ 新しい繁殖基地へ
ロシア・イジェフスク動物園のピリグリムとオーロラ、同園から忽然と姿を消す ~ ブラジル行きの真相と深層
ブラジル・サンパウロ水族館に忽然と姿を現したロシア・イジェフスク動物園のピリグリムとオーロラ
by polarbearmaniac | 2015-05-20 23:55 | Polarbearology

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