街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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大阪・天王寺動物園で順調に生後半年が経過したモモについて思うこと

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大阪の天王寺動物園で昨年の11月25日にバフィンお母さんから誕生した雌のモモ(私は便宜上、仮称でフローラと呼んでいましたが)が生後半年を迎えています。 早いものです。 モモはバフィンお母さんの渾身の育児に支えられて順調な成育を続けています。
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同園の飼育員さんは昨日付けの公式ブログ(「モモ 祝!6ヶ月」)のなかでこのモモについて触れ、いろいろと面白いことをおっしゃっていますが、バフィンが同園に来園したときにいろいろと批判的に言われたことをわざわざ箇条書きにしていらっしゃるのが印象的です。 簡単に要約しますと①バフィンの過去の失敗、②バフィンとゴーゴの年齢差、③両者の相性、この三つの懸念材料ですね。 同園の飼育員さは、こうしたことを世間からいろいろ言われたことがよほど口惜しく残念だったようで、そのうっぷんを晴らしたいというお気持ちのようですが、そのお気持ちには私も共感を覚えます。 そして③については以前にも述べましたが、「ゴーゴとバフィンの相性は悪くない」と自信を持って言い続けた同園の獣医さんのブレない姿勢は実に素晴らしかったと思います。
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私はこのブログで過去にこのゴーゴとバフィンのペアについて明確に否定的なことを述べた記憶はないのですが、しかし③の懸念ついてはそれを暗示的に肯定したことがあったように記憶しています。 そして何を隠そう①については表立ってはここでは述べなかったものの内心はまさにそう考えていたわけで、そういった意味ではやはり私も大いに反省せねばなりません。


 



しかし今更言うのもおかしいですが、私は②については全く問題はないと考えていたわけで、それは海外の事例を見ればあまりにも明らかでした。 しかし世間ではこの②を取り上げてこのペアを揶揄するような意見は実に多かったと思っています。 タブロイド判のマスコミが書くならばいざしらず、ホッキョクグマに多少なりとも知識のあるのだろうと思われる方までもがそう考えていたという例すらあったわけです。 要するに、人間に例えればこのペアは誰と誰がペアになったようなものだとかいう揶揄でした。 飼育下のホッキョクグマを考えますと雌のホッキョクグマで出産が可能なのは全体のLife span の三分の二の期間でしょう。 ところが人間の場合ですとこれは三分の一の期間にしかすぎません。 ホッキョクグマと人間の年齢を単にLife span の長さだけで考えますと、ホッキョクグマの年齢を三倍したものが人間としての年齢となります。 そうしますと現在23歳のバフィンは人間で言えば69歳ということになってしまいます。 ホッキョクグマの雌は5歳から出産は可能ですが、これを三倍するとちょうど人間の年齢の場合も同じことが言えますから、少なくともホッキョクグマは5歳まではその年齢を三倍することによって人間では何歳にあたるかを言うことはできますが、それ以降ではホッキョクグマの雌に関してはこの「想定三倍換算法」は当てはまらないということです。 日本のホッキョクグマ界はこれからもいろいろなペアの組み合わせと想定しなければいけないわけですが、その際にこの大きな年齢差というものについて否定的に考えることはやめたほうがよいということのよい教訓となったのがこのゴーゴとバフィンのペアでした。
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それから同園の飼育員さんの述べていられることで印象的なのは、「過去の繁殖実績とは異なるメスでの繁殖に成功したということで、繁殖技術が証明できた」という記述です。 繁殖実績があるという動物園であっても、実はこの複数の雌で成功して初めて「実績」と言いうるわけです。 そういう意味では円山動物園もシロお母さん、ララお母さんと二頭が繁殖に成功していますから「繁殖実績」と言えるわけですが、しかし円山動物園は失敗例も多いわけで、幾分同園の実績に影を落としていると言えなくもありません。

それから飼育員さんは「都心で裏に高速道路があり、電車が走り、賑やかな環境」と同園のホッキョクグマ繁殖についての環境的なハンディについて触れていますが、しかし実は近くに道路があって常に車が走行しているという点についてロシアのカザン市動物園のホッキョクグマ飼育展示場(と奥にある産室)の凄まじさは天王寺動物園どころではありません。
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上はカザン市動物園の地図と航空写真ですが、このハジ・タクタシャ通りと動物園とを仕切っている塀のすぐ横にホッキョクグマ飼育展示場があり、そして車の走行音は絶えることがありません。 以下の映像はカザン市動物園で私が2013年9月の訪問時に撮ったものですが、映像などは無視していただいても結構ですから音声を聞いてみて下さい。 小雨が降っていましたので走行音がやや誇張されているような感じもしますが、この音プラス振動が存在しているわけです。 この映像はホッキョクグマ舎とこの動物園の道路沿いの塀との間にある狭い通路から撮影したものですが、この場所そのものが道路から数メートルしか距離がないわけです。 ホッキョクグマの繁殖はおろか、環境的に言えば飼育そのものすら全く適さない場所に存在しているのです。

カザン市動物園でのマレイシュカお母さんと娘のユムカ(2013年9月29日撮影)

このカザン市動物園の貧弱な施設を考えれば産室が本当に音(と振動)から完全に遮断されているかは大いに疑問のあるところです。 ところがこのカザン市動物園はこの35年間ほどの間だけでも確か19頭が誕生し16頭の成育に成功していたはずです。 しかもそれは三頭の雌が母親となったわけで、まさに複数の雌の繁殖成功という素晴らしい実績というわけです。(実はこのカザン市動物園にも大きな血統疑惑があり、あの偉大なる母であったディクサが産んだと称する子供たちのうち何頭かは別の雌が産んでいたことは間違いないわけです。 ズーラシアの故チロというのはまさにそういう個体だったわけですが、これについては稿を改めます。 まさに興味の尽きない疑惑です。)
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話が大分外れてきましたが、ともかくモモのこれからの成長を見ていくのは大きな楽しみです。

(写真はいずれも2015年5月23日に天王寺動物園で撮影)

(資料)
天王寺動物園 スタッフブログ (May 25 2015 - モモ 祝!6ヶ月!!
by polarbearmaniac | 2015-05-26 23:30 | Polarbearology

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