街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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熊本のマルルと徳島のポロロの預託期間延長はあるか? ~ 霧の中の日本のホッキョクグマ界

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ポロロ(左)とマルル(右)  
(2014年2月1日撮影 於 札幌・円山動物園)

北海道新聞の電子版(6月15日付)が「円山生まれ双子クマ、南国でスクスク ポロロとマルル」という記事を発表しています。内容は徳島に移動したポロロと熊本に移動したマルルが元気に成長をしており地元の人気者になっているという内容です。そしてさらにこう述べられています。

- 2頭の預託期間は来年3月までだが、すっかり市民の人気者になっただけに「可能なら延長してほしい」が両園共通の願いだ。

この内容も良く理解できるところです。実は昨年1月31日、まだマルルとポロロが札幌に暮らしていた時期に「札幌・円山動物園のマルルとポロロが移動先で2年間限定預託であることの意味は何か?~ その後を予想する」という投稿を行っています。その投稿の中でも触れたのですが、その時点から現在までの間でララファミリーに状況に変化があったのはイコロの上野動物園への移動が実現したという点、そしてララに昨年12月に一頭の赤ちゃんが誕生したというこの二点です。さて、それらを踏まえてまた考えてみましょう。
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マルル(左)とポロロ(右)
(2014年2月1日撮影 於 札幌・円山動物園)

札幌の円山動物柄に2017年に完成すると言われている「新ホッキョクグマ飼育展示場」ですが、マルルとポロロの二年間の預託期間終了時点でもまだ完成していないわけですが、昨年の投稿ではこの件について「2016年2月の段階では欧州の交渉の相手方に円山動物園の『新ホッキョクグマ飼育展示場』の設計図、及び完成予定図を提示することが可能となる」ことを理由にマルルかポロロが新施設完成前に欧州に移動するのではないかという予想を立ててみたわけです。実は先日のJAZAの総会での投票によってWAZAへの残留が決定した際の報道の中で円山動物園の園長さんのコメントが読売新聞(首都版及び電子版5月21日付)に掲載されていました。該当部分の記事の内容は以下です。

- WAZAのネットワークを通じて海外の動物園からホッキョクグマの入手を計画している「札幌市円山動物園」の田中俊成園長は、「WAZAから抜ければ計画が頓挫すると心配していた。残留は歓迎」と安心した様子で語った。

文字通りとれば円山動物園はホッキョクグマの個体交換の希望をWAZA経由で行っているようにも解釈できますが、しかし事実上はWAZAの構成団体であるEAZAに直接申し入れをしているというのが正確なところでしょう。そして先日私が札幌のホテルの部屋で視たTVの「命をつなぐララ ~ホッキョクグマが消える日~」という番組の中で、たしかこの件について「まだ決まっていない」ということが語られていたはずです。こういったことを踏まえて総合的に判断すると、マルルとポロロの預託期間が終了する来年3月までに円山動物園がララの雌の子供たちのうち少なくとも一頭を札幌の新施設完成に先行して欧州(おそらくオランダのエメン動物園)に送り出すことは、この状態では時間的にかなり難しいのではないかと考えます。ということは、マルルとポロロの熊本と徳島への預託契約は延長される可能性が非常に大きいのではないかと考えます。 ただし延長期間については極めて注目すべき微妙な問題となるでしょう。 これがどれほどの期間になるかによって円山動物園の個体交換計画が実際どの程度進展しているのかを推し量ることができるというわけです。私の予想では一年間となるような気がします。
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マルル(左)とポロロ(右)
(2014年2月1日撮影 於 札幌・円山動物園)

次にそれに付随する問題ですが、現在ララが育児を行っているオクタヴィアン(仮称)をどうするかという問題があります。円山動物園は今まで行ってきたようにララに二年サイクルの繁殖を求めるのならば来年2~3月頃にオクタヴィアンを他園に移動させる必要があるわけですが、果たしてこれがどうなるのかは何とも言えないような気がします。円山動物園が非公式的な形で語っている「新施設建設期間中の騒音等の問題で期間中のホッキョクグマの繁殖は難しい」という見解は、園としての見解なのか御担当者としての見解なのかが判然としないままです。 「ララの繁殖は難しい」ということならばオクタヴィアン(仮称)をさらにララの元に置くのか、それともイコロの移動した後の帯広に移すのかもよくわかりません。 いや、そもそもその前にララに一年間のお休みを与えてやるべきだという考えは当然あってしかるべきでしょう。 さらに、新施設建設による騒音等の問題を言うならば何故キャンディを今年も札幌に留め置いて今年の年末の繁殖に挑戦させるという考え方もいささかおかしかったように思うわけです。 私が直接聞いた話ではありませんが、週末の大阪でも担当飼育員さんはバフィン親子を今後どうするのかについては「未定である」という見解を述べられていたそうですが、おそらくまさに「未定である」ということなのだろうと思います。今年の日本のホッキョクグマ界は非常に話題が多いわけですが、いろいろと問題意識をかきたてられることが多いですね。
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ポロロ(左)とマルル(右)
(2014年2月1日撮影 於 札幌・円山動物園)

しかし一つだけハッキリと言っておかねばならないことがあります。それは、マルルとポロロの預託期間延長問題は、熊本や徳島で彼女たちが人気者になっていることとは全く無関係であるということです。人気者になろうがなるまいが、マルルとポロロの預託の目的は円山動物園の計画している欧州個体との交換構想の実現までの一時的な「留め置き場」ということなのです。欧州側の関係者がマルルとポロロ(そしてアイラ、またはひょっとしてオクタヴィアン)のどちらを欧州で受け入れるかの選別作業を札幌で行うために、マルルとポロロ(そしてアイラ)は揃って札幌に帰還するでしょう。それは最初の預託期間が終了する2016年の3月の時点は難しいだろうということです。

マルルとポロロの雪遊び (2014年2月1日撮影 於 円山動物園) - Marle and Porolo, the polar bear twin cubs, play together
in the snow with Lara their mother, at Sapporo Maruyama Zoo, Japan


今年2015年の日本のホッキョクグマ界は話題で賑やかですが、裏を返せば混沌とした状態だということです。来たるべき山場は来年2016年でしょう。バフィン親子はどうなるのか、ゴーゴは大阪に帰還できるのか、キロルはどうなるのか、キャンディはどうなっているのか、ツヨシはどうなっているのか、それらの全てに結果が出る年となるでしょう。

(資料)
北海道新聞 (Jun.15 2015 - 円山生まれ双子クマ、南国でスクスク ポロロとマルル
読売新聞 (May.21 2015 - イルカ確保不安…追い込み漁禁止

(過去関連投稿)
ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (上)
札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)
ドイツ・ハノーファー動物園に2012年夏に札幌・円山動物園が提示した交換候補個体はアイラだった!
札幌・円山動物園のマルルとポロロが移動先で2年間限定預託であることの意味は何か?~ その後を予想する
ララの子供たちの将来(下) ~ ドイツ・ハノーファー動物園のシュプリンターとナヌークのハロウィン
by polarbearmaniac | 2015-06-15 23:55 | Polarbearology

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