街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

ベルリン動物園のトスカ(故クヌートの母)逝く ~ 物語と伝説を身にまとったホッキョクグマの死

a0151913_21583570.jpg
トスカ (故クヌートの母)
(2013年12月31日撮影 於 ベルリン動物園)

昨日より投稿していましたが、ベルリン動物園に暮らしていた推定28歳の雌のホッキョクグマであるトスカが本日朝、同園にて安楽死という処置で亡くなったそうです。このトスカがあの有名なクヌートの母親であったことは今更言うまでもありません。このトスカの安楽死の決定は昨日同園内で召集されていた倫理委員会で出されていたものでした。実はこのベルリン動物園での倫理委員会で飼育動物の安楽死の決定を下したのは今回が初めてとのことで非常に意外な気がします。 ベルリン動物園は安楽死に関して他園とは異なる方針というものが以前にはあったのでしょうか? トスカの遺体はすでにベルリンのライプニッツ研究所に運ばれ、解剖が行われるそうです。

欧米の動物園でホッキョクグマの安楽死というのはよく行われるのですが、いずれも執行されてから死亡が発表になっていたわけです。私はそういった訃報を聞くたびに「何故突然?」という疑問を持つわけですが、今回は昨日ベルリン動物園がトスカへの安楽死の執行に先立って公式に倫理委員会の決定を発表していたわけで、ある意味では「覚悟」といった心の準備ができるはずでしたが私は今日の朝から一層気分が重くなり、そして日本時間の夕方(つまりベルリンの朝)になると「今頃トスカは...」という考えが頭にこびり付いて精神的な苦痛を味わったわけでした。 「これだったら事前の告知無しの方が気分的には楽だ」ということがよくわかりました。今回私は真綿で首を締めあげられるような苦痛を体験してしまったわけです。
a0151913_21594875.jpg
トスカ (2013年12月31日撮影 於 ベルリン動物園)

さて、このトスカについては私は思い入れもあり本当はいろいろ書きたいことが多く、それを彼女の訃報と同時に語るのは非常に気の重い話です。私はトスカには2009年9月、2012年12月、2013年12月と三度ベルリン動物園で会うことができました。非常に神経質そうな顔をし、そして飼育展示場を往復運動している姿をよく覚えています。以下は私が2012年の大晦日にベルリン動物園で撮影したトスカの姿ですが、来園者を見つめているトスカの姿です。



このトスカは実は同じ飼育展示場の雌のナンシーと非常に長が良く、一緒にいる姿は良く見られました。以下はやはり2012年の大晦日の映像ですが、向かって左側がナンシー、右側がトスカです。



実はトスカと仲が良かったナンシーは昨年の11月に亡くなり、そしてトスカの心身の状態が悪くなり始めた時期もその頃であったわけで、そこに何かの関係を考えるのはあながち無理とは言えないようにも思います。

カナダで野生孤児として保護されたものの東ドイツのサーカス団で演技をさせられ、そしてその後にベルリン動物園で暮らして出産したものの育児放棄をしたトスカですが、この育児放棄された赤ちゃんがクヌートだったことは今更申しあげる必要がありません。しかしトスカのサーカス団における前半生、特にそのホッキョクグマの調教師であったウルズラ・ベトヒャー(Ursula Böttcher)女史との関係、ひいてはサーカス団におけるホッキョクグマ、これらはいずれも大きなテーマであり、それは稿を改めたいと思います。トスカの一生、これはやはり語っておかなくてはいけないでしょう。トスカ、まさにいろいろな物語と伝説を身にまとっていたホッキョクグマでした。
a0151913_2159817.jpg
トスカ (2013年12月31日撮影 於 ベルリン動物園)

トスカさん、長い間本当にご苦労様でした。安らかに眠って下さい。謹んで哀悼の意を表します。

(資料)
Berliner Morgenpost (Jun 23 2015 - Die Mutter von Eisbär Knut ist tot)
Tagesspiegel (Jun 23 2015 - Knuts Mutter im Berliner Zoo eingeschläfert)
B.Z. Berlin (Jun.23 2015 - Eingeschläfert: Eisbärin Tosca ist tot)

(過去関連投稿)
トスカ(クヌートの母)とサーカス団の悲しきホッキョクグマたち
ベルリン動物園のクヌートに対して雌3頭が共同包囲網!
ベルリン動物園で雌達から孤立したクヌートを巡る報道の過熱
ベルリン動物園のクヌート、遂に雌のトリオに反撃開始!
ベルリン動物園で雌のホッキョクグマ2頭が激しく闘争し負傷
ベルリン動物園で病気治療中だった29歳のカチューシャが元気に飼育展示場に復帰
ベルリン動物園の24歳のナンシーが急死 ~ ベルリン動物園に君臨する三頭の女王たちの一角が崩れる
ベルリン動物園で急死したナンシーの死因が検死によって判明 ~ 「胃拡張捻転 (Magendrehung)」
ベルリン動物園のトスカ(故クヌートの母)、今週中に安楽死執行か? ~ 同園で倫理委員会が召集
ベルリン動物園のトスカ(故クヌートの母)、本日午前の同園での倫理委員会で安楽死執行が決定
(*2012年12月 ベルリン動物園訪問記)
大晦日はベルリン動物園へ ~ 伝説化したクヌート、その思い出
ベルリン動物園でのんびり暮らすホッキョクグマたち ~ 壮年の雌3頭の仲良しトリオ
(*2013年12月 ベルリン動物園訪問記)
ベルリン動物園で過ごす大晦日 ~ 3頭の女王たちの絶対にして不可侵の王国
by polarbearmaniac | 2015-06-23 20:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ロシア・ペンザ動物園のベルィ..
at 2017-10-22 00:30
アメリカ・シカゴ、リンカーン..
at 2017-10-21 13:30
ロシア・ペルミ動物園のミルカ..
at 2017-10-20 19:30
ロシア東北端・チュクチ半島の..
at 2017-10-19 20:00
いよいよ今年2017年のホッ..
at 2017-10-19 01:00
ドイツ・ロストック動物園が来..
at 2017-10-18 18:30
ロシア・シベリア中部、クラス..
at 2017-10-18 00:30
ベルリン動物公園がトーニャの..
at 2017-10-17 20:00
オーストラリア・ゴールドコー..
at 2017-10-17 00:30
モスクワ動物園 ヴォロコラム..
at 2017-10-16 18:00

以前の記事

2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Lenin's Tomb: The Last Days of the Soviet Empire


Resurrection: The Struggle for a New Russia


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag