街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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オランダ・エメン動物園でのノルチェとラーレの近況 ~ オクタヴィアン(仮称)の移動先となるか?

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ノルチェ(左)とラーレ(奥)
Photo(C)Paul Barelds/Zuidoosthoeker

欧州における希少動物繁殖計画(EEP - European Endangered Species Breeding Programs)の一環としての繁殖ペア形成の準備段階としての幼年・若年個体のプール制というシステム発動を契機に雌の個体の集中基地として機能するオランダのエメン動物園に欧州域内から二頭の雌のホッキョクグマがすでに移動しています。一頭はドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園で2013年12月に誕生したラーレ、もう一頭はオランダの「動物帝国(Dierenrijk)」で2012年11月に誕生したノルチェです。 この二頭はいよいよ週末からエメン動物園で公開になるそうです。
*このラーレについては今までララ(ラーレ)と表記を併用してきましたが、オランダに移動しましたので今後はラーレという単独表記とします。
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ノルチェとラーレ  Photo(C)Paul Barelds/Zuidoosthoeker

さてこの欧州における雌の幼年・若年個体をプールする集中基地としての機能を担うこととなるオランダのエメン動物園については札幌の円山動物園が画策しているララファミリーの(雌の)個体と欧州個体との交換に関連して我々は注目しておかねばならないことはここ数回の投稿にも述べた通りです。これに関して私はここのところいろいろと頭を巡らせているわけですが、いくつかの問題点が浮かんでいますのでここで述べておきたいと思います。

過去において円山動物園は少なくとも私の知る限り対欧州との関係で現実に二回の動きを見せています。これについては「札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)」という投稿をご参照下さい。そして現時点で同園は第三回目の交渉への動きと思われる「WAZAのネットワークを通じて海外の動物園からホッキョクグマの入手を計画」に着手しつつある状況であることについては「熊本のマルルと徳島のポロロの預託期間延長はあるか? ~ 霧の中の日本のホッキョクグマ界」という投稿で述べた通りです。以前に私は円山動物園の三回目の対欧州交渉について(A)EAZAのコーディネーターと行う、(B)欧州内のどこかの動物園を「一本釣り」にして行う、この二つの可能性について述べたわけですが、先の読売新聞の報道によれば(A)を選択しているようにも理解できるわけです。しかし一方で、「WAZAのネットワークを通じて」ということは欧州域内の個別の動物園との「縁組み」を狙っていると言う理解も可能であるわけです。つまりこれならば(B)を選択したことと実質上は同じになるわけです。いや、むしろ以下のように言ったほうが正確でしょう、それは「EAZAのコーディネーターであれWAZA(あるいはEAZA)経由であれ、円山動物園は結局のところ欧州の一つ、もしくは二つの動物園との個別交渉をすることになる」ということです。(この欧州域内の動物園をA動物園、B動物園と略記することにします。)

さて、そうなると円山動物園が個体交換を狙うA動物園、B動物園の幼年・若年個体が交渉時点でまだA動物園、B動物園で母親共に暮らしているのか、それとも欧州内の集中基地(雄ならばイギリスのヨークシャー野生動物公園、雌ならばオランダのエメン動物園)にすでに移動した個体となるのかが大きな問題です。ここで問題となるのは、そのA動物園で生まれた個体、B動物園で生まれた個体について実はその権利(「所有権」- ownership)は多くの場合A動物園やB動物園にあるのではなく別の動物園(これをX動物園、Y動物園としておきましょう)にあるということです。たとえば今回エメン動物園に移動してきたブレーマーハーフェン臨海動物園で2013年12月に誕生したラーレの権利はロストック動物園にあるということです。つまりA動物園やB動物園で赤ちゃんが誕生しても、その両親のうちのどちらかの権利はX動物園、Y動物園が保持している例があるというわけなのです。こうなると実に複雑な話です。円山動物園がこれを回避しようとすれば、その幼年・若年個体がどの動物園で誕生したかではなくどの動物園が権利を保持しているかに焦点を合わせ、その動物園だけを交渉の相手とすることが近道でしょう。問題は、そういうアレンジをEAZAのコーディネーターやWAZA(EAZA)がやってくれるかどうかということが大きな焦点だと思われます。 ロッテルダムのオリンカの息子を狙うなら交渉相手はロッテルダム動物園ではなくウィーンのシェーンブルン動物園(オリンカの権利はまだウィーンにあってまだロッテルダムはその権利を取得していなかったはずです。あるいはもう取得済でしょうか?)が交渉相手になるということです。一方、レネン・アウヴェハンス動物園のフリーダムの息子を狙うのであればこれは同園そのものが交渉相手になるということですしロストック動物園のヴィルマの息子を狙うならば(*あまり感心できませんが)これも交渉相手はロストック動物園ということですし、ミュンヘンのヘラブルン動物園のジョヴァンナの息子を狙うならば(*全く感心できません。ジョヴァンナは上野のデアの姉であり、デアはイコロと組むわけですからジョヴァンナの息子を札幌に連れてきてアイラやマルルやポロロのパートナーにするのならば上野と血統上の組み合わせが重複してしまいます)、交渉相手はヘラブルン動物園でよいということになります。
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オクタヴィアン(仮称) (2015年6月20日撮影 於 円山動物園)

いや、そもそも円山動物園はいったいどの個体を欧州に出そうとしているのでしょうか? 以前にも述べていますが順当に考えればアイラ、マルル、ポロロが候補でしょう。アイラの場合でしたら前回のハノーファー動物園との仕切り直しの交渉となるでしょうが、マルルやポロロならば欧州側の交換候補はすでにパートナーが決められているケースもあり、かなり厄介でしょう。オクタヴィアン(仮称)、これが雌(メス)だったら欧州側の札幌との交換個体有力候補は何頭か存在しています。最有力候補は多分この子、そしてこの子でしょう。実は最近ノヴォシビルスクのシルカファンの方々は札幌のオクタヴィアン(仮称)にぞっこん惚れ込んでいるようでシルカのパートナーにはオクタヴィアン(仮称)がよいと言って先日は盛り上がっていたようですが、オクタヴィアン(仮称)が仮に雄(オス)だったらそれも十分に有力でしょう。 血統的に言えばシルカはゴーゴとよりもララファミリーとペアになるほうが圧倒的に好ましいわけです。しかもシルカとオクタヴィアン(仮称)は一歳しか年齢が違いません。

ともかく事態の推移を見守らねばなりませんが、私の予想ではオクタヴィアン(仮称)が雌(メス)ならばエメン動物園への移動は必至と考えます。オクタヴィアン(仮称)は性別判定で仮に雌(メス)となれば「異動辞令」発令は時間の問題でしょう。半ば冗談の話しですが、その時に私は「札幌・円山動物園の〇〇、オランダのエメン動物園へ! ~ ララの娘が遂に欧州へ」というタイトルの投稿を行うでしょう。 この場合、成田発のKLM便でアムステルダムのスキポール空港に輸送されるのではなく羽田発のANAかLH(ルフトハンザ)でドイツのフランクフルトまで空輸され、そこから陸路でオランダのエメン動物園に輸送されるでしょう。  いや、しかし、そもそもこの円山動物園のララの子供たちと欧州個体との交換構想は、私は結局のところ実現しないだろうと考えています。 実に容易ではありません。欧州側のEEPの展開のスピードが速く、新たな難題が欧州側から出てくる可能性があります。

(資料)
Dierenpark Emmen (IJsberen in Dierenpark Emmen!)
ZuidOosthoeker (Jun.30 2015 - Alles over de ijsberen van Wildlands)

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ドイツ・ブレーマーハーフェン臨海動物園のララ(ラーレ)のお別れ会が開催 ~ エメン動物園へ
by polarbearmaniac | 2015-07-01 23:55 | Polarbearology

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