街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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オランダの「動物帝国」、及び日本の旭山動物園でホッキョクグマのペアの異例の7月交尾が確認

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フリーマスとヘンク Photo(C)Hans Muskens/Omroep Brabant
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ルルとイワン Photo(C)旭山動物園

世界の二つの施設より異例とも言えるホッキョクグマのペアの7月の繁殖行為が報告されています。一つはオランダ・ヌエネンの「動物帝国 (Dierenrijk)」でのフリーマスとヘンクのペア、もう一組は旭山動物園でのルルとイワンのペアです。後者について旭山動物園は公式のSNSのページを通じて特別給餌のイベントである「もぐもぐタイム」を中止する告知を行っています。

実はこのホッキョクグマの7月の繁殖行為というのは極めで珍しく、ロシアの生物学者であるイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告である ”Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)” において1932年から1988年の間でのレニングラード(現在は「サンクトペテルブルク」)のレニングラード動物園での50回のホッキョクグマの出産によって生まれた88頭の個体についての統計記録でも実は7月交尾というのは、ただの一度も報告されていません。またAZA(Association of Zoos and Aquariums - アメリカ動物園・水族館協会) が作成した 「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Polar Bear Care Manual)」においてもホッキョクグマの繁殖行為は3月から6月までと記述されています。

この二組のペアが何故7月にもなって繁殖行為を行ったかですが、オランダの「動物帝国」のフリーマスとヘンクのペアについては彼らの間に2012年11月に誕生した雄のピセル (Pixel) と雌のノルチェ (Noordje) の双子のうち前者は今年の3月にイギリスのヨークシャー野生動物公園へ後者は今年の6月にオランダのエメン動物園に移動したことによってフリーマスとヘンクのペアの同居が先月から再開されたという状況が背景にあります。旭山動物園のルルとイワンのペアについてはよくわかりませんが昨年の交尾は4月11日~14日に行われています。牽強付会すれば今年の北海道の春~初夏の天候不順と気温の低さというものがホッキョクグマの繁殖行動に何らかの影響を与えた可能性がなくはないかもしれません。

さて、こうなりますと前掲のトゥマノフ氏の研究報告によれば、「妊娠日数/期間 (Pregnancy Duration)」つまりAZAのマニュアルで言うところの "Total Gestation times"(懐胎日数/期間)は非常に短くなり、6月に繁殖行為の行われた場合ですと平均日数が166日間ですので7月の繁殖行為ですとこれがさらに短くなるはずです。そして平均出産頭数は一頭に近くなり、かつ性別は雌(メス)の確率が極めて大きくなるということになります。

火山の不気味な活動など、来たるべき恐るべき大きな天変地異の可能性を否定できない日本です。こういう時だからこそ旭山動物園のイワンとルルのペアに良い意味での「予想外」の朗報が今年末、または来年年初にあるかもしれません。「一頭の雌(メス)の赤ちゃん誕生」...そういうニュースを期待したいところです。

(*追記 - 以下は5月に撮影されたものだそうで "Live Zoo in Asahiyama" で公開されたものですが、イワンとサツキの繁殖行為です。)



(資料)
Omroep Brabant (Jul. 7 2015 - Seks met een bontjas aan, ijsberen Dierenrijk werken aan nageslacht)
旭山動物園(公式) (Jul. 9 2015 - 『もぐもぐタイム』は、ホッキョクグマが交尾中のため中止

(過去関連投稿)
(*「動物帝国」関連)
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(*出産予想関連)
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ララの赤ちゃんたちの性別を過去のデータを用いて予想する!
円山動物園のララの出産日、出産頭数、性別を過去のデータで予想する(前) ~ 「12月15日前後に雌の双子」
円山動物園のララの出産日、出産頭数、性別を過去のデータで予想する(後) ~ データが示すララの"女腹"
旭山動物園のサツキとルルの出産に関して過去のデータで予想する ~ 二頭が挑戦する 「世界~」 の壁
by polarbearmaniac | 2015-07-12 01:00 | Polarbearology

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