街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ホッキョクグマの「ロシア臭」と「非ロシア臭」 ~ その泥臭さから見た「国籍」の分類

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バフィンお母さんとモモ(2015年7月15日撮影)
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シルカ(2015年7月15日撮影)

私は各地でホッキョクグマに会うことは「戦い」であると思っています。彼らと向き合って彼らの姿からいったいどういうメッセージを読み取るかということは私自身の「己との戦い」であると思っているからです。そういった意味で、現在の天王寺動物園でバフィン親子とシルカに会うことは一日二回戦を強いられる過酷な「戦い」であると言えましょう。午後のシルカについては非常にゆっくりとした生活のリズムを持つホッキョクグマですから、観察それ自体は非常に楽ですがしかし彼女のロシア時代との生活の連続性に思いを巡らせると彼女の行動からそういった「何か」を抽出する作業が生じ、それ自体は楽ではないということです。バフィン親子もシルカも、表面的に見れば行動は単純ですが実はそう見えて本当は複雑な要素が多く存在しているということです。釧路市動物園のミルクは行動は多彩で変化に富み複雑であるように見えて実は単純な行動原理によって支配されていることに気が付くと、観察それ自体は非常に楽であるということが言えましょう。札幌のオクタヴィアン(仮称)の観察は実に難物です。要するによくわからない幼年個体であるということです。最近私はこのオクタヴィアン(仮称)については何か「不気味」な感じすら受けています。あまり深い思慮もないのに体だけがやたらと多彩に動くという感じです。
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実は今日の木曜日も天王寺動物園に一日いて夜の便で東京に戻るはずでしたが台風の接近が気になって空の便が欠航にならないうちに昼過ぎの便に変更して東京に戻ってきましたので今日(木曜日)は動物園に行っていません。

それにしてもあのシルカというホッキョクグマですが、まさに典型的なロシアのホッキョクグマですね。ララファミリーには絶対に存在しない個体です。ララの子供たちは程度の差こそあれ刺激に対して敏感に、そして鋭敏に反応します。つまり、反応に優れた個体がほとんどです。上野動物園のデアなどもそうですね。それからさらに言えば、ララファミリーの個体は考えていること感じていることが比較的ストレートに外部から見ていても感じ取ることができます。しかしシルカはそういったタイプとはまるで異なる個体です。私はララの子供たちは全て共感できますが、どういうわけかそういったタイプの対極にあるシルカも非常に好意的に感じています。このシルカの持つ「ロシア臭」ですが、これが一体何を意味するのか理解不可能という方がいらっしゃいましたら、逆の方向からこう考えてみて下さい。日本で暮らすホッキョクグマたちの中で全く「ロシア臭」を感じさせない個体はいったい誰でしょうか? 私の感じたところで有名な個体を二頭挙げておきます。雄では札幌のデナリ、雌では上野のデアです。両者とも「土の臭い」を感じさせません。
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デナリ(2015年7月5日撮影)
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デア(2015年6月30日撮影)

このデナリというのは「ロシア臭」どころか「欧州臭」や「カナダ臭」すらも全く感じさせません。彼は徹頭徹尾アメリカのホッキョクグマという雰囲気です。デアについては「欧州臭」というよりは、これも徹頭徹尾「イタリア臭」という感じです。不思議なものですね。デナリやデアについて以上のように私の述べることに少しでも理解してたける方には「ロシア臭」といったものが何を意味するかがおぼろげながらも御理解いただけるのではないかと思います。では「ロシア臭」の強い個体はいったい誰でしょうか? また名前を挙げておきます。男鹿の豪太、旭川のイワン、横浜のジャンブイ、この三頭が最も泥臭い「ロシア臭」を感じさせますし、事実彼らはロシア出身です。ロシア出身であっても比較的「ロシア臭」の少ないのは仙台のカイ(ラダゴル)でしょう。「カナダ臭」となると微妙ですが、名古屋のサスカッチ、徳山のユキなどでしょうか。
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豪太 (2014年1月25日撮影)
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イワン(2014年3月23日撮影)
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ジャンブイ(2014年8月24日撮影)

以前にも触れたことがありましたが、ノヴォシビルスクのシルカファンの方々の中で、「バフィンの映像を見ていると日本人の母親の精神性を感じる」といったような内容の感想を述べられていたわけですが、私にはなんとなくそれがわかってきたような気がします。つまり、子供(たち)に対して細かい点に対しても気を遣うということではないでしょうか。そうなると典型的な「日本臭」のホッキョクグマは札幌のララということになるでしょう。バフィンももちろんそういったタイプです。しかし日本のホッキョクグマのなかでも例外なのは男鹿のクルミのような気がします。彼女は「無国籍ホッキョクグマ(déraciné)」、「コスモポリタン」という感じになりそうです。
by polarbearmaniac | 2015-07-16 23:55 | Polarbearology

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