街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

愚劣なカメラマンの公開した無意味で無価値な写真に踊る人々 ~ 「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」



ケルスティン・ランゲンベルガーという一人のドイツ人の女性カメラマンがノルウェーのスヴァールバル諸島で撮影した一頭のホッキョクグマの写真がネット上に溢れています。そしてお決まりのように何社ものマスコミがこの写真を地球温暖化によるホッキョクグマの生態への壊滅的な影響の好例として報道しています。この女性カメラマンは自分の意思とは異なるところでこういった報道がなされていることを何とも思っていないようですが、それもそのはず、この女性カメラマンが分かっていて自分で火を付けたわけです。 まずこの女性カメラマンがラジオ番組に登場して肉声でこの写真の件について語っているのをお聞きください。冒頭にはCMが入ります。



司会者が、「他のこのようなホッキョクグマを見ましたか?」との問いに「過去4年間に2回ほど痩せ細ったホッキョクグマを見たことがあるが、今回のもののような状況ではなかった。」などと語っていますが、質問は今回の撮影旅行中のことだけであり、過去の例を聞いているわけではありません。 さらに、この写真のホッキョクグマがケガをしているらしいことを認め、そしてそれが原因で狩りができないことの可能性を認めているものの、地球温暖化との関連性については「わからない」と語っているわけです。このスヴァールバル諸島でのホッキョクグマの頭数はすでに調査によって「安定」しているという結果が出ています。この女性カメラマンは、たまたまこういった一頭の気の毒な姿をしたホッキョクグマの姿を大々的に自分のSNSのページにアップし、そして合理的な根拠も述べずにこのホッキョクグマを地球温暖化の影響と結びつけようという実に安易な発想を行っています。

この女性カメラマンの写真にはホッキョクグマの専門家はほとんど「相手にしていない」といった状況です。だたしその例外はこのスヴァールバル諸島が属しているノルウェーの極地研究所(Norsk Polarinstitutt) の専門家たちですが、やはりこの写真に対して極めて冷淡です。今年2015年夏の段階までの調査ではスヴァールバル諸島のホッキョクグマたちはとりわけ状態がよく、非常に太った個体が多いという調査結果が出ています。ある研究員の方は2003年から毎年調査に参加しているものの、このスヴァールバル諸島には「地球温暖化によりホッキョクグマに対する悪影響」は見られないと調査の結果を根拠にして語っています。また、別の研究員の方は「この写真はあまりに問題を単純化し過ぎておりメディアはいつもこういったものに単純な回答を与えたがる」と語り、「この一枚の写真が語るものは何もない」と突き放しています。 さらに別の研究員の方は、「この写真の個体は非常に老齢のホッキョクグマであり、老齢の個体は狩りが十分にできずにこうして痩せていき、そして亡くなっていくというのが自然の摂理である。」と語っています。

ともかく、全く語るに値しないホッキョクグマの写真であると言えましょう。 このような気の毒な姿のホッキョクグマは地球温暖化が始まったはるか以前から存在していたわけです。 しかもこのような姿のホッキョクグマが群れを成していたというならばともかく、たった一頭の例をこうして持ち出して「温暖化云々」にミスリードしようとするなど、実に悪質なカメラマンと言えましょう。この女性写真家の方は御自身のことを "I am a critically minded person, and I observe." と述べています。 "critically minded" というのは「前例や、すでに語られていることを当然のこととして踏襲することはしない精神」という意味ですが、この女性の今回行っていることはまさに御自身の信条とは正反対のことのようです。 一昨年の山口県で起きた連続殺人放火事件」の犯人が書いたという、「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という言葉を思い出します。

(資料)
Kerstin Langenberger : Arctic Dreams (News/Aug.20 2015 - A background story - No. 2)
Scientific American (Sep.15 2015 - The Polar Bear Photo Seen around the World)
Huffington Post (Sep.14 2015 - Polar Bear’s Shocking Appearance May Be Tied To Climate Change)
Nordlys (Sep.16 2015 - Dette bildet fra Svalbard har fått folk til å bli rasende)
HIGH NORTH NEWS (Sep.14 2015 - Isbjørnene var feite som griser)
Nordlys (Oct.12 2014 - Isbjørn holdt stø kurs mot sentrum)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマの cannibalism(同種食い) を考える
餓死したホッキョクグマの写真を掲載した報道記事の波紋 ~ イアン・スターリング氏のコメントをめぐって
by polarbearmaniac | 2015-09-21 06:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-09-21 01:00
アメリカ・オレゴン動物園のノ..
at 2017-09-21 00:30
ピョートル(ロッシー)とクラ..
at 2017-09-20 06:00
ロシアのサーカス団の4頭のホ..
at 2017-09-20 00:30
デンマーク・オールボー動物園..
at 2017-09-19 01:15
ポーランド・ワルシャワ動物園..
at 2017-09-18 02:00
ロシア極東・沿海州、ハバロフ..
at 2017-09-17 03:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2017-09-16 06:00
とくしま動物園のポロロの充実..
at 2017-09-15 03:00
ロシア・カザン市動物園がバル..
at 2017-09-14 03:00

以前の記事

2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Lenin's Tomb: The Last Days of the Soviet Empire


Resurrection: The Struggle for a New Russia


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag