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旭山動物園のサツキとルルが産室へ ~ 挑戦は続く

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サツキ (2012年10月28日撮影)
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ルル (2012年10月28日撮影)

昨日9日付けで旭山動物園から発表があり、11月6日からサツキとルルの二頭が出産準備のために産室に入ったとのことです。昨年同様、交尾日まで明らかにしての産室入りということになります。同園ではこの二頭と雄のイワンとの交尾日を、サツキは7月6日~13日(昨年は4月8日~10日)、ルルは4月11日~19日(昨年は4月11日~14日)と明らかにしているわけですがサツキについては昨年よりも三か月も経過しての交尾ということになり、これは非常に特異なケースであると言えましょう。ここで昨年同様、サツキとルルの出産に関する予想を行ってみることとします。用いるデータは勿論、ロシアの生物学者であるイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告である ”Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)” のデータです。このデータの意味するものに関しては昨年の投稿である「旭山動物園のサツキとルルの出産に関して過去のデータで予想する~ 二頭が挑戦する『世界~』の壁」をご参照下さい。 以下に改めてトゥマノフ氏の研究報告のデータをまとめておきます。

(1)交尾日、出産日、妊娠期間、出産頭数、性別との関係
交尾日    平均妊娠日数 出産平均頭数 性別(オスの確率)
2月11-28日   281日      1.55    50.0%
3月 2-31日    254日     1.80     51.9%
4月 1-30日    237日     1.75     54.3%
5月 8-16日   207日     2.25     55.6%
6月 5-13日   166日     1.50     33.3%

(2)妊娠期間と平均出産頭数との関係
妊娠期間        平均出産頭数
164 - 233日間     1.88
239 - 256日間     1.76
260 – 294日間     1.64

(3)1回の出産あたりの出産頭数の確率
1頭出産の確率  -  28%
双子出産の確率  -  68%
三つ子出産の確率 -   4%
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サツキ (2012年10月28日撮影)

①サツキの場合
まずサツキですが、交尾日今年は7月6日~13日ということで、このトゥマノフ氏の研究報告が採取したデータであるロシアのレニングラード動物園で1932年から1988年の間でのレニングラード(現在は「サンクトペテルブルク」)のレニングラード動物園での50回のホッキョクグマの出産によって生まれた88頭の個体についての統計記録では7月の交尾というのは全く例がないわけです。となりますと、このトゥマノフ氏の研究報告の結果からサツキの出産に関する予想を導き出すことは難しいと言わざるを得ません。しかし敢えて予想するならば、交尾日を6月 5-13日の間だったと見做し、この場合の平均の妊娠日数・妊娠期間 (Pregnancy Duration)である166日間を採用して実際の交尾日である7月6~13日から計算してみることとします。トゥマノフ氏の研究報告のデータは複数の交尾日がある場合は最初の日のみを「交尾日」として採用するというルールがありますのでサツキの場合は「交尾日」を7月6日とします。そうしますと交尾日から166日目がいつかと言いますと、それは12月19日にあたります。この場合の平均出産頭数は1.5頭であり性別が雄(オス)である確率は33%です。トゥマノフ氏の研究報告のデータでは妊娠日数・妊娠期間 (Pregnancy Duration)が短くなれば出産頭数は幾分増えることになります。そうするとこれらをまとめて言えば、

サツキの出産日は12月19日前後であり出産頭数は一頭より二頭の可能性がやや高く、双子なら性別は双方とも雌(メス)である。

ということになります。しかしあくまでもこれは通常のホッキョクグマの繁殖行為は6月中旬が最終であると考えて、そのデータを7月交尾のサツキに転用したため、極めて仮想の日付となっているわけです。感覚的に言えば、仮にサツキに出産があったのならばそれはそれは12月末か1月初頭といった感じではないでしょうか。
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ルル (2012年10月27日撮影)

②ルルの場合
次にルルですが、交尾日は今年は4月11日~19日ということで、この場合は4月11日を採用するのがトゥマノフ氏の研究報告におけるルールとなります。そうなるとルルの妊娠日数・妊娠期間 (Pregnancy Duration)の平均は237日間となりますので、この日がいつになるかを計算しますと、それは12月4日にあたります。この場合、出産平均頭数は1.75頭となり雄の確率は54.3%となります。これらをまとめて言えば、

ルルの出産日は12月4日前後であり、出産頭数は双子の確率が高く性別はどちらも雄(オス)と雌(メス)である。

さて、このサツキとルルの出産の可能性ですが、サツキは現在23歳ですがあと数日で24歳となります。ルルは現在20歳で、あと10日ほどで21歳となります。この二頭は昨年も述べましたように出産・育児の成功への挑戦はいずれも「世界記録」への挑戦を意味しているものと考えられます。ということは、なかなか厳しい挑戦となっているわけですが、旭山動物園のホッキョクグマたちにも何か breakthrough が必要であり毎年のように失望の結果を聞くことを今年はなんとしても止めてほしいように思うわけですが、こればかりは如何ともし難いことです。正直言ってファンの側としても、もう待ちくたびれたという感じです。サツキとルルの産室入りもなんだかこの季節の風物詩のようになってしまっている現実の打破を期待したいところです。

同園はこの時期の飼育について「産室に閉じ込めて」という表現を行っているわけですが、ホッキョクグマたちが「来たるべき時」を自覚してなんとなく自分の意思で自然に産室のある場所に向かうような方法をとっていただくことは無理なのでしょうか?

(資料)
旭山動物園 しいくにゅーす (Nov.9 2015 - ホッキョクグマの「ルル」と「サツキ」が出産準備のため展示を中止します。
Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマ出産統計から見た傾向を再確認する ~ 出産シーズンに向けての知識整理
ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(5) ~ 赤ちゃんの頭数・性別は事前予測可能か
男鹿水族館のクルミの出産日、出産頭数、性別を過去のデータで予想する ~ 「11月30日前後に雄か雌の一頭」
円山動物園のララの出産日、出産頭数、性別を過去のデータで予想する(前) ~ 「12月15日前後に雌の双子」
円山動物園のララの出産日、出産頭数、性別を過去のデータで予想する(後) ~ データが示すララの"女腹"
アメリカ、デトロイト動物園のベアレ逝く ~ 20歳で初出産に成功したサーカス出身のホッキョクグマの生涯
旭山動物園のサツキとルルの出産に関して過去のデータで予想する ~ 二頭が挑戦する 「世界~」 の壁
by polarbearmaniac | 2015-11-10 20:30 | Polarbearology

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