街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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釧路市動物園のツヨシが、よこはま動物園ズーラシアへ ~ ツヨシの新しい出発

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ツヨシ (2014年6月14日撮影 於 釧路市動物園)

釧路市動物園が本日11月24日付けで発表したところによりますと、同園で飼育されている間もなく12歳となる雌のホッキョクグマであるツヨシが繁殖目的で、よこはま動物園ズーラシア(以下、「ズーラシア」と略記します)に移動することが決まったとのことです。(*追記 - その後の25日付けの北海道新聞の報道によれば貸与期間は二年間、繁殖に成功した場合の第一子は釧路、第二子はズーラシアとなるそうです。典型的なBL契約ということになります。)

今回に移動についてはそれほど不思議な話ではありません。ツヨシのパートナーとしては旭川のイワンと横浜のジャンブイぐらいしか見当たらないということで本ブログでもツヨシとジャンブイの組み合わせについて過去にも複数回提案してきたというわけです。9月に東京で行われた「ホッキョクグマ計画推進会議」で、この「ツヨシ問題」が議題に上がったことは間違いないと思われ、これについては「『ホッキョクグマ計画推進会議(於 恩賜上野動物園)』」について ~ 『ツヨシ問題』の行方や如何」という投稿で述べた通りです。
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ジャンブイ (2014年8月24日撮影 於 よこはま動物園ズーラシア)

日本のホッキョクグマ界に革命をもたらせた2011年2月の「共同声明2011」の発表から現在に至るまでこのツヨシ/ジャンブイの新ペアの形成の決定に至るまで、これに関係した三つの大きな出来事があったわけです。一つ目は2011年5月のズーラシアでの雌のチロの急死、二つ目は2011年11月の愛媛のとべ動物園のバリーバのズーラシアへの移動、三つ目は2012年4月の上野動物園のユキオの釧路市動物園への移動、この三つです。実は私は2011年5月のズーラシアのチロの急死に先立つ2011年4月に「ツヨシをどうするか? ~ 繁殖の展望への不安」という投稿を行っているのですが、その中で当時のホッキョクグマ繁殖検討委員会が描いていた「壮年の雄個体再配置案」について触れています。該当したであろう個体はジャンブイ(横浜)、サスカッチ(名古屋)、故アイス(神戸)の三頭であっただろうことは間違いないわけですが、この「壮年雄個体再配置」計画が時間の関係で実現できないまま「共同声明2011」が発表されたという事情から、ツヨシとサスカッチ(名古屋)あるいはジャンブイ(横浜)という野生出身個体の二頭との組み合わせの可能性について考えたことがあったわけでした。実は2011年5月のズーラシアのチロ急死の後の段階でツヨシをズーラシアに移動させていたとすれば、バリーバの横浜移動やユキオの釧路移動はなかったわけです。ただしそうなると、2011年4月にクルミが男鹿水族館へ移動となっていますのでツヨシを横浜に移動させてしまえば釧路市動物園にはホッキョクグマが不在となってしまうわけで、さすがにこれはできなかったのだろうと思います。


砂場でのツヨシ

24日付けの釧路市動物園の発表ですが、これはズーラシアに先行発表の了解を得た上での発表だと考えてよいでしょう。現在ズーラシアではバリーバが繁殖に関連して非展示状態であり、現時点においてツヨシのズーラシア移動決定の発表は早すぎるのではないかという考え方は当然あり得るでしょう。しかし以下の二つを考慮してみる必要があります。まず、ズーラシアというのはホッキョクグマの繁殖とホルモン値の関係について以前より岐阜大学との共同研究でデータ収集を進めているわけで、現時点においてバリーバに妊娠の可能性を示唆させるホルモン値の変化が見られないためにすでにバリーバの出産の可能性に見切りをつけてしまっているというケースです。もう一つは、仮にバリーバが出産(そしてその後の育児)に成功したとしてもバリーバ親子の来春からの展示とジャンブイとツヨシのペアリングは同時進行か可能であると考えているといったケースです。私は後者が正しいだろうと考えます。何故なら「ツヨシ問題」が論議されたであろう「ホッキョクグマ計画推進会議」はすでに9月に開催されており、その段階でバリーバのホルモン値の変化云々がツヨシ移動の前提条件として提示されたことなど考えにくいからです。つまり本件はバリーバの出産の可能性の有無とは無関係に進行した話であることは、ほぼ間違いないと思われます。

しかしただ一つわからない点が残ります。それは「バリーバ愛媛帰還」という話が出ていたのはすでに今年の夏頃であり、私はそれを二つの異なるソースで耳にしてはいました。にもかかわらずズーラシアは10月からバリーバを繁殖に関係した目的で非展示になったということです。私は「何故バリーバに出産があるかどうかがわからない状態なのにツヨシのズーラシア移動の話が決定事項として表面化したか?」よりも「何故、帰還計画が語られていたバリーバが出産準備と思われる非展示状態に移行したか? (つまりバリーバとジャンブイの間に繁殖行為があったにもかかわらず何故バリーバの愛媛帰還の話が夏頃に出てきたか?)」のほうがよほど理解が難しいわけです。ましてやズーラシアはバリーバの血統問題について情報を得たことが確実だと思われる形跡があるからです。敢えてここに意味を見出すとすれば、将棋でいうところの最終盤での「形作り」とでもいったものではないでしょうか。繁殖に挑戦したという姿勢を見せたという意味においてです。

私は横浜市民として偉大なる母であるララの長女であるツヨシの地元横浜への移動を大いに歓迎します。彼女に関して性別取り違え事件やユキオとのことでいろいろと問題のあった過去を断ち切った形での新しい出発となれば、それを大いに歓迎します。

(資料)
釧路市動物園 (動物園ニュース/Nov.24 2015 - ホッキョクグマの「ツヨシ」がお嫁に行きます!
北海道新聞 (Nov.25 2015 - 「赤ちゃんを」市民ら期待 釧路市動物園のツヨシ、横浜に嫁入り
ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明
旭山動物園HP 
「ホッキョクグマの将来を創る!」 
「『「ホッキョクグマ繁殖プロジェクト2011」の完成まで」

(過去関連投稿)
ツヨシをどうするか? ~ 繁殖の展望への不安
憂愁のホッキョクグマ ・ ツヨシの憂鬱
釧路市動物園のユキオとツヨシ ~ 残された繁殖の時間の限られたペアの姿
憂愁のホッキョクグマ、ツヨシに忍び寄る(?)不安の影 ~ 過去の意識を払拭して雌の名前に改名すべき
ピース、その生と死の地平線の彼方に ~ 彼女の癲癇(てんかん)は母親の血統の「負の遺産」が原因?
バリーバ、そのすでに完結した神話 ~ "The Myth recorded and remembered"
ジャンブイの素顔 ~ 彼の出自の謎を追う
夏の日曜日の昼下がりのジャンブイ、再び彼の出自の謎を考える ~ 彼は果たして豪太の伯父なのか?
「ロシア血統の謎」に迫る(4) ~ 横浜・ズーラシアのジャンブイの誕生・血統の真相を探る
バリーバ、クルミ、ポーラの「戦い」の休戦 ~ Female Bears of the Past, Present and Future
「ホッキョクグマ計画推進会議(於 恩賜上野動物園)」について ~ 「ツヨシ問題」の行方や如何
by polarbearmaniac | 2015-11-24 23:55 | Polarbearology

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