街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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札幌・円山動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生するも死亡が確認 ~ 残念な“déjà vu”の結果

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キャンディ (2015年11月3日撮影)

札幌市の円山動物園から本日25日付けで発表がありました。同園で飼育されている23歳のホッキョクグマであるキャンディが一昨日の11月23日に一頭の赤ちゃんを出産しましたが、その後に死亡が確認されたとのことです。同園の発表の一部をそのままコピーします。

>...しかし残念ながら出産後数時間にわたり、キャンディが仔を抱きかかえる等の行動が見られず、また鳴き声や動きなどが認められないことから死亡しているものと判断いたしました。その後、仔を咥えて運んだり、仔の体を覆っている胎膜を舐め取るといった行動も見られましたが、仔の反応はなく、キャンディが落ち着くのを待って、翌24日(火)に仔を回収し、改めて死亡を確認したところです。

残念至極ではありますが情緒的な気持ちを排除して冷徹に考えてみれば、これがキャンディの出産、そしてその後の彼女の行動の典型的なパターンだということです。彼女は出産から直後の時点における育児への転換を促す本能の働きに疑問があるということは今までも述べてきたわけですが、今回の円山動物園の発表は純粋な「死産」なのか「育児中止」なのかについて細部にやや不明な点が残るものの、結果的に辿った道筋は今までとそう大きな違いはないということです。

多くのファンが彼女が母性を発揮する本能があると考え彼女の出産に極めて大きく期待する理由の根拠は多分、以前の出産で彼女が赤ちゃんの体を舐めていたために赤ちゃんの遺体はきれいな状態だったという事実が明らかにされ、そのことによって彼女は赤ちゃんを育てようとした意思があったという解釈を導いているからだと思われます。しかし私は過去何年間も欧米の動物園におけるホッキョクグマの繁殖に関する情報を見てきた限りでは、実はこれは逆が真実だろうと思うわけです。

今回育児に成功しなかった母親でも次回以降に成功する母親というのは、赤ちゃんが生きていようが亡くなっていようが、赤ちゃんの体を自らの体内に入れてしまい出産の痕跡を消してしまうわけです。要するに「食害」という行為です。「食害」を行う母親は将来の見込みのある母親なのです。「育てられない」、あるいは「失敗した」という場合に出産という自らが行った行為をliquidate してしまうということは、すなわち「育てなければならない」という無意識の本能があったが故に失敗の結果を「消去」せずにはいられない、これまた無意識の本能に宿る母親としてのプライドなのです。ですから「食害」を行う雌は優秀な母親となる可能性が大きいのです。「食害」を行う母親は、自分が育てようとしなかった赤ちゃんや、亡くなってしまった赤ちゃんの体を愛おしんで舐めたりなどしないものなのです。キャンディは過去の出産において多分一度も「食害」を行っていないはずです。一方で例えばララの例を見て下さい。彼女は最初から三回の出産、つまり2000年、2001年、2002年において出産した合計5頭の赤ちゃんを全て自ら「食害」で処理してしまったわけです。この事実は、いかにララには母親としての将来性があったかを如実に示しているというわけです。

最後になりましたが、今回のキャンディの繁殖挑戦に関わられた円山動物園のホッキョクグマ担当のスタッフの方々の健闘を称えたいと思います。

(資料)
札幌市・円山動物園 (Nov.25 2015 - ホッキョクグマの「キャンディ」が出産をしましたが、残念がら赤ちゃんは死亡しました
ホッキョクグマの繁殖に関する一考察

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2015-11-25 16:00 | Polarbearology

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