街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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キャンディをどうするのか? ~ 四つの選択肢を考える

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キャンディ(2015年11月3日撮影 於 円山動物園)

去る11月23日に一頭の赤ちゃんを出産したものの死亡が確認された札幌・円山動物園の現在23歳のキャンディですが、その今後の去就が注目されるところです。私なりにいろいろ考察してみることにします。本投稿をお読みいただける方があれば一緒に考えていただきたいと思います。私は札幌市と豊橋市のBL契約の条項を実際に書面で見た経験はありませんので明確には申し上げられませんが、一応BL契約の期間は間もなく終了するものだと理解しています。もう一年有効期間が残存している可能性もあるでしょうが、一応今回で終了するのだという認識と仮定の下で本論を進めます。

まず以下の四つの道があります。

①札幌に残留して引き続きデナリとの間で繁殖を目指す。
②札幌に残留するが、もう繁殖には挑戦せず余生を過ごす。
③他園に移動して別の雄との間で繁殖を目指す。
④他園に移動して、もう繁殖には挑戦せず余生を過ごす。


上の四つの道のなかで最もあり得ないのは②でしょう。彼女を札幌に残したまま繁殖に挑戦させないということは今までの契約が繁殖目的の契約、つまりBL(Breeding Loan)であったものを、今度は契約の目的が異なるために別の新しい契約である単なるLoan契約を再締結する必要があるわけですが、この単なるLoanというのは動物園において展示動物がいないので他園から借りてきて展示するという目的に結ばれる契約です。円山動物園にはもうすでにララ、デナリ、リラと三頭のホッキョクグマがいますので、それに加えて繁殖には関係のない単なるLoan契約でキャンディを豊橋から借りる(借り続ける)という契約を締結しようとしても組織内部の稟議はまず通らないでしょう。仮に円山動物園が「世界の熊館」をホッキョクグマで埋め尽くしたいという目的ならば札幌市が権利を保持している(はず)のサツキやアイラやマルルやポロロなどを札幌に帰還させれば済む話だからです。こういったBL(Breeding Loan)や、単なるLoanの契約締結の可否の最終決裁権限者は多分札幌市の環境局長でしょう。現在の環境局長は以前円山動物園の園長だったSさんのはずです(間違っていたらゴメンナサイ!)。Sさんならばキャンディを札幌に残したいというファンの気持を個人的には理解してくれるでしょう。しかし行政の中で局長という立場からとなれば、やはり単なるLoan契約を認めるというわけにはいかないでしょう。となれば、残るは①③④の選択肢です。(*追記 - こういう考え方はあり得るでしょう、つまり②を選択して首尾よく単なるLoan契約が締結できたとして、春になって野生のホッキョクグマの雌が偶然に雄に遭遇することと同じなのだと考えてデナリとキャンディが隔てられている扉を一時期であれ開放し、仮に繁殖行為があればあったで年末に出産の準備を行えばよいのだという考え方です。つまり「繁殖」を目的の全面に押し出さず、偶然の要素に全てを委ねるというやり方です。しかしこの場合、仮に彼女が出産・育児に成功したとすると赤ちゃんの権利の帰属が問題になってしまいます。つまりBL契約ではなく単なるLoan契約ですから、生まれてくる子供の権利帰属問題など条項にはないわけです。これは大きな問題でしょう。さらに、展示を目的とする単なるLoan契約で借りている雌を雄と同居させることは契約の内容上問題があるということです。仮に扉の開放を試みるならば、それはBL契約でなければならないというわけです。つまりこういった「偶然」に全てを委ねる方法を行うのならば、①と実質上は全く同じことになってしまうわけです。これでは「繁殖からの引退」を意味することにはならないということです。)
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キャンディ(2015年11月3日撮影 於 円山動物園)

まず①ですが、これはBL契約のさらなる期間延長ですから稟議は簡単に通るでしょう。ただし二つ問題があって、一つは再三にわたって語られている新ホッキョクグマ飼育展示場の工事によって生じる騒音その他の問題がホッキョクグマの繁殖に大きな悪影響を与える可能性があることをどう考えるかということです。二番目は、もう年齢的にいってもキャンディに無理をさせる必要はないという考え方です。

次に③ですが、この場合デナリ以外のパートナーを誰にするかということが問題です。候補としてはイワン(旭川)、ホクト(姫路)、ゴーゴ(白浜)、キロル(浜松)といったところでしょう。イワンにするならば旭山動物園はサツキ、ルル、ピリカのうちの最低一頭を他園に移動させねばなりません。現実的には難しいでしょう。ホクトは繁殖能力が証明されていますので有力候補ですがユキが出産・育児に成功すればホクトは出張という形でキャンディと組ませることは可能ですがユキの今後の状況は不透明です。ゴーゴも繁殖能力が証明されていますが、白浜や大阪帰還の問題があって難しいでしょう。キロルとキャンディを組ませるのは実は秘策なのですが、バフィン親子の帰還との問題があります。

次に④ですが、これはおおむね豊橋帰還を意味することになるでしょう。それ以外の場所となれば、近年までホッキョクグマを飼育していたものの死亡してしまったのでスペースが空いているといった動物園ですが、昨年春まででしたら熊本と徳島の二園が該当していたのですが現在はマルルとポロロが移動しているわけです。となれば、やはり豊橋帰還を意味することになります。
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キャンディ(2015年10月24日撮影 於 円山動物園)

さて、①③④のうちどれが最も可能性があり、そしてかつ現実的かということです。やはり④、つまり豊橋帰還ではないでしょうか。①については「騒音問題」という難点があるものの依然として残る選択肢であることは間違いありません。しかし私は思い切って③の道を模索してはどうかと思います。問題は場所がどこになるかと、パートナーを誰にするかということです。考えうる候補場所としては愛媛のとべ動物園もあるでしょう。ただしバリーバの帰還問題があります。パートナーとしては、仮に姫路でユキが出産・育児に成功すればホクトを動かしてキャンディのパートナーとするのがよいでしょう。しかし姫路の状況は深い霧の中に沈んでいます。となれば、ホッキョクグマの繁殖に対して攻めの姿勢を貫くにはやはりキロルでしょう。キロルを札幌に戻してキャンディのパートナーとするのは妙案ですが、「騒音問題」は依然として残ります。ただし、キロルの権利は札幌市にありますので、契約の観点から言えばキャンディのBL契約の延長で済む話であり、これなら稟議は簡単に通るでしょう。ただしこの問題を考察するスタート地点に立ち戻ってみれば、わざわざキロルを札幌に戻してキャンディのパートナーとするくらいならデナリをパートナーにし続ければ済む話であるということです。そして仮にキロルとキャンディとの間で繁殖に成功した場合、赤ちゃんにはララの血が入ってきます。ところがデナリとキャンディとの間で繁殖に成功した場合は赤ちゃんにはララの血は入ってこないという利点もあるわけです。こういったことを考えると、やはり①が再浮上してくるということになります。

札幌のファンの方々がキャンディの札幌残留を望むならば①しか選択肢はありません。キャンディはもう繁殖の舞台から引退させてやるべきだと考えるならば選択肢は④しかありません。つまり彼女の豊橋帰還です。この二つのうちのどちらかでしょう。キャンディが札幌にやってきたのはあくまでも繁殖が目的であり、それがアルファでありオメガなのです。「中間領域」としての②はありえないわけです。①か④かを決めるにあたっては種別調整者がこの問題をどう考えるかは非常に大きな要素ではありますが、基本的には円山動物園(そして豊橋)の意向に添った考え方をするでしょう。最終的にどのような結論になるかはわかりませんが、それが良い事かそうでないかは全く別にして円山動物園は結局は最終的に①の道を突き進むのではないかと思われます。

さて...数年先のことをあれこれ予想するのは無責任ではありますが、私は日本のホッキョクグマ界の隠れた「資産」は姫路のホクト(ルトヴィク)の存在であると考えています。ホクトをあの場所から引っ張り出すにはユキの出産・育児の成功が不可欠となります。しかしこれから2~3年以内にそれができないのであれば、ユキのパートナーを別の個体にしてなんとかホクトをあそこから引っ張り出したいと考えます。これは私の予感ですが、ツヨシ(あるいはピリカ)の数年先のパートナーはホクトになっているだろうと思っています。

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by polarbearmaniac | 2015-12-07 23:30 | Polarbearology

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