街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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今年2015年の日本のホッキョクグマ界を振り返って ~ ホッキョクグマたちが描いた絵巻物

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モモ (Белый медвежонок Момо)(2015年3月14日撮影)
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リラ (Белый медвежонок Лила)(2015年4月12日撮影)

今年も残すところあと数日といったところになりました。ここで今年2015年の日本のホッキョクグマ界を振り返ってみたいと思います。大きな話題としては三つで、まず大阪・天王寺動物園でのバフィンとモモ、札幌・円山動物園でのララとリラという二組の親子の姿が大きな印象を残しました。あと一つはやはりロシア・ノヴォシビルスク動物園のシルカの来日でしょう。この三つはとりわけ印象が深かったと思います。

バフィンとモモ (2015年3月10日 - 一般公開日初日撮影)

ララとリラ(2015年4月1日 - 一般公開日初日撮影)

23歳になっていたバフィンの初めての育児姿は感動的でしたし、現在では世界屈指の育児技量を誇るララの夏頃から以降におけるその技量の惜しげもない発揮については世界でも稀有の光景であったと思います。前者については育児初体験の母親の年齢という点についてドイツのブロガーさんを驚嘆させ、後者についてはロシアのホッキョクグマファンの方々がゲルダを比較の対象として持ち出すことを不可能とさせるほどの、それはもう圧倒的なものであったということです。三つ目のシルカについては前稿の "Polar Bear of the Year (2015)" in Japan で述べた通りです。

シルカ (2015年6月27日撮影)

あとの話題としては、釧路市動物園のミルクの人間のような動作を行う遊びが話題になったこと、上野動物園にイコロが入園して遂にデアとのペア形成の前提が実現したこと、ゴーゴが白浜に移動してさらなる繁殖への挑戦を行うことになったことなどが話題でした。その一方で私たちはホクト(鹿児島)ミリー(名古屋)アイス(神戸)という三頭の貴重なホッキョクグマたちを失ってしまいました。ホクトについては彼は繁殖能力に非常に優れている血統に属していたという点と、ミリーについては孤立した貴重な血統であったという点においてなどを含め、高齢とは言えなかったこれらの三頭の死は残念でなりません。

今年2015年はまだ終わったわけではありませんが、繁殖に挑戦している数頭の雌たちに出産があったかどうかの情報は一部を除いては公に明らかにはされてはいない状況です。しかし残念ながら日本では今年2015年に誕生する(した)個体はないと考えておいてほぼ間違いはないのではないでしょうか。飼育下におけるホッキョクグマの繁殖がいかに難しいかを我々は改めて認識したという結果となるでしょう。世界を見渡してみれば、出産していることはかなり確実であるものの公式発表されていない雌が少なくとも二頭いると私は考えています。その一頭はアメリカ・トレド動物園のクリスタル、もう一頭はロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダというこの二頭です。ロシア・イジェフスク動物園のトゥムカも私は出産していることは間違いなしと考えていたわけですが、その発表は年明け以降だと考えていたものの今回は不思議なことに年内に発表されたというわけです。慎重なロシアにしては早い発表でした。

バフィンとモモ (2015年9月5日撮影)

ララとリラ(2015年7月27日撮影)

飼育下のホッキョクグマには国によって繁殖能力に差があるようには思いませんが、しかし欧州では何頭もの雌が繁殖に成功しています。ロシアでは飼育環境は厳しいものの、そういったことを気にも留めないらしいように大物の母親たちが何頭も存在しています。一方で世界で最も数多くのホッキョクグマを飼育しているアメリカでは本当に確実に頼りになるのはクリスタルだけだということです。その彼女ですら生まれは欧州なのです。アメリカのホッキョクグマ界は何か日本のホッキョクグマ界と似た様相を呈しているように思います。クリスタルやララだけを頼りにしてきた状態ではアメリカや日本のホッキョクグマ界の将来は非常に厳しいでしょう。日本の場合で言いますと、ララに続くホッキョクグマとしてはバフィンは年齢的にもう限界でしょう。クルミは「単発打ち上げ花火型」、つまり「パルス型」のホッキョクグマのようですから、毎回確実に頼りになるかと言えばそうではないでしょう。その後の世代としてはユキ(姫路)とがポーラ(仙台)などがいるわけですが前者については環境面での不安が尽きません。しかし姫路の環境を逆手に取れば、仮にユキが出産に成功すればユキの育児中にホクトは否応なしにあそこから二年ほどの期間、BLでの他園出張となるでしょう。そうなればチャンスです。彼をその期間にピリカのパートナーにさせるわけですが、問題は場所です。場所がありません。やはり札幌以外にはないように思います。それからポーラ(仙台)ですが、彼女のパートナーはラダゴル(カイ)というウスラーダの息子ですから、それこそ最強のパートナーのはずなのですが、これがなかなか容易ではありません。ラダゴル(カイ)は人格者(人格熊)ですのでポーラのわがままにじっと耐えるという能力に優れていることが逆に災いしているようにも思います。女帝ウスラーダの子供たちの中でウスラーダと一年を超して同居しているためにウスラーダの教育が最も行き届いているのは娘のシモーナ(モスクワ)と息子のラダゴル(カイ)であろうことは間違いないはずです。前者はすでに世界的にも偉大な母親ですから、ラダゴル(カイ)にも当然その期待がかかっているわけです。性格的に言えばポーラにはゴーゴ、ラダゴル(カイ)にはピリカが向いているような気がしますが、性格的にうまくいくということと繁殖成功との間には明確な関連があるとは限りません。

そういったことはさておき、今年2015年はモモとリラという二頭の幼年個体が無事に一歳の誕生日を迎えたということで、日本のホッキョクグマ界も何とか面目を保った年であったように思います。来年はどんなドラマがあるでしょうか。誰にも予想はつかないでしょう。

(過去関連投稿)
今年2012年の日本のホッキョクグマ界を振り返って ~ 真の 「開国」 となるか?
今年2013年の日本のホッキョクグマ界を振り返って ~ 漠然とした期待感の中で封印されてきたもの
今年2014年のホッキョクグマ界を振り返って ~ 世界のホッキョクグマ界における日本の現在の位置確認
by polarbearmaniac | 2015-12-28 12:00 | Polarbearology

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