街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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旭山動物園のサツキが飼育展示場に復帰しイワンと今年も繁殖挑戦へ ~ 推察される同園の複雑な事情

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サツキ(2012年10月28日撮影 於 旭山動物園)

旭山動物園から昨日1月2日に発表があり、同園で飼育されている現在24歳のサツキが産室から解放され飼育展示場に復帰したそうです。同園の説明ではホルモン値はこれまでのシーズンと同様に上昇しておらず、行動観察をしていてもいつもと変わらないことから出産はないと判断されたことです。こういったことを毎年きちんと発表している同園の姿勢は大いに評価でき、そして非常に好感を持ちます。
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サツキ(2012年10月28日撮影 於 旭山動物園)

さて、このサツキですが「交尾期までにしっかりと体調管理をしていきたい」と同園は述べていますので、先日のルル同様に今年もイワンをパートナーとして繁殖に挑戦するということが事実上示されたと理解してよいでしょう。「ホルモン値はこれまでのシーズンと同様に上昇しておらず」と述べていますのでサツキはこれまで毎年、繁殖成功とは最も遠い位置に居続けているホッキョクグマであることをも示していると思います。見方はいろいろとあるとは思いますが、このサツキのイワンとの間での繁殖へのさらなる挑戦を同園のホッキョクグマ繁殖への粘り強い意欲と執念ということで理解しておきたいと思います。 同園はあるいは雌は25歳までは繁殖に挑戦させたいと考えているのかもしれません。日本のホッキョクグマ飼育の血統管理を担当している同園ですから、私などの外野の観客がどうこういう問題ではないと思います。しかし私にはもう「残念」という一言すらも、もう出てこなくなってしまっているのが今回のサツキです。飼育下のホッキョクグマの出産年齢の傾向については先日の「北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること ~ 再び考えるキャンディの今後」という投稿をご参照下さい。こういったデータの示す傾向を、今まで出産経験すらないサツキが打ち破るということはもう至難の技なのです。
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サツキ(2012年10月28日撮影 於 旭山動物園)

サツキに氷のプレゼント(2012年8月11日撮影)

「サツキはもう24歳だしホルモン値の変化はこれまでも毎回なかったわけだし、年齢と繁殖成功との間のデータから考えてもサツキはもう繁殖成功の可能性は極めて低いから、もう繁殖の舞台から引退させてやってよいのに何故また今年も、しかもあの繁殖能力が本当にあるのかがよくわからないイワンとの間で繁殖に挑戦させるのか?」といった旭山動物園への批判を行う前に我々は一つだけ考えておかねばならないことがあるわけです。それは、このサツキの所有権は札幌市(円山動物園)にあり、そしてサツキが札幌から旭川に移動したのは2010年1月28日の「道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明」に基づいて札幌市と旭川市との間の「繁殖を目的とした貸借契約」、つまりBL契約によってであるということです。仮にサツキが今年は繁殖の舞台から引退させるとすれば札幌市と旭川市との間でのBL契約は終了することになり、今度は単なるローン契約を締結しない限りは理論的にはサツキは札幌に戻ることになるわけですが、円山動物園は新ホッキョクグマ飼育展示場の建設工事開始に伴うホッキョクグマ展示スペースへの影響、及びキャンディのこれからの処遇が未定であることなどによって円山動物園は現時点でサツキを受け入れることに極めて強い難色を示したために旭山動物園は形式的にBL契約を維持せねばならない状況に陥り、そのためにはサツキを今年もさらに繁殖に挑戦させなければならなくなってしまったのだという理解は可能です。さらに、サツキを繁殖に挑戦させずに繁殖の舞台から引退させ旭川に留め置くことは札幌市との新しいローン契約の締結なしには難しいにもかかわらず、いざその新契約を締結しようにも旭山市の組織内部での稟議が通らないために、ともかく旭山動物園は札幌市との間の現行のBL契約の内容を履行させ続けるために今年もサツキを繁殖に挑戦させねばならなくなってしまったのだという理解も可能なのです。そういった事情があるためにサツキの24歳という年齢とは無関係に旭山動物園はサツキを繁殖の舞台に置き続けねばならない状況に陥ってしまったのだ...こういう理解は十分可能なのです。おそらくこういった事情があって旭山動物園は無理を百も承知でサツキを今年も繁殖に挑戦させざるを得ない苦境に陥ってしまっているのだという理解をすれば、一見非常に不可解に見える旭山動物園の示しているサツキに対する方針は、ことごとく全て事情の説明が一応はつくと私は考えています。そういったことから、私は旭山動物園に対する批判は今回は一切行わないこととします。

サツキとピリカの水遊び(2012年4月8日撮影)

それからもう一つ、このサツキの今年の繁殖挑戦継続によってピリカの繁殖への舞台作りといったものも今年は行われないという理解でよいと思います。

(資料)
旭山動物園 (しいくにゅーす/Jan.2 2016 - ホッキョクグマの「サツキ」の展示を再開しました)
道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明 (2010年1月28日)
ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明  (2011 年)2 月18 日)

(過去関連投稿)
サツキ、産室から出る...~ ホッキョクグマの歴代最高齢出産成功記録は35歳11ヶ月?
イワン(旭山動物園)の責任論は時期尚早か? ~ 正念場を向かえた日本の繁殖計画
2012年の出産シーズンの最終局面をむかえて ~ 必要なのは「幸運」
旭山動物園、ホッキョクグマの人工授精を狙いイワンの精子採取に成功 ~ 「イワン繁殖能力懐疑説」後退
旭山動物園のルルとサツキの展示が再開 ~ 同園にお願いしたいこと
旭山動物園のサツキとルルの出産に関して過去のデータで予想する ~ 二頭が挑戦する 「世界~」 の壁
旭山動物園のサツキとルルが産室を出て飼育展示場に復帰 ~ イワンに新しいパートナーが必要な段階
旭山動物園でイワンとルルの同居開始 ~ 今年の国内ホッキョクグマ再配置は最少レベルとなる模様
旭山動物園のサツキとルルが産室へ ~ 挑戦は続く
旭山動物園のルルが飼育展示場に復帰 ~ 早々と事実上決定した(?)来年のイワンとルルのペアの継続
北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること ~ 再び考えるキャンディの今後
by polarbearmaniac | 2016-01-03 01:00 | Polarbearology

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