街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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シルカにとっての「おもちゃ」の意味するもの ~ その想像力を引き出す源泉

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一つ前の投稿で「水遊びのモモ」と「おもちゃ遊びのシルカ」という対比をタイトルにしている。しかしモモもシルカも水の中でおもちゃで遊ぶことは共通しているものの今日こうしてシルカを見ていると実に興味深いことに気が付いたのである。シルカと対比すべきなのはモモではなく、むしろ釧路市動物園のミルクのほうかもしれない。しかし今回はシルカのことのみ思ったことを書いておきたい。
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まず、このシルカにとってブイのようなおもちゃの機能を果たすものについてであるが実は彼女はこのおもちゃについて、それを完全に自分の支配下において「遊びの道具」として用いるのではなく、それ自体を自分の外側に存在している「未知のもの」として基本的に認識している傾向が強いということである。
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だからまず彼女はおもちゃに対する多層的なアプローチはあまり行わないのである。
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彼女にあるのは常に「未知のもの」への好奇心である。それは過去に何度も投げ入れてもらった同じおもちゃに対してもそれに「慣れる」ということをしない。つまり、おもちゃというものに対して一種の緊張関係を持続しているということである。そして彼女は常に「未知のもの」であり続けているこのおもちゃの存在から彼女自身がイマジネーションを引き出そうとするわけである。シルカはおもちゃからあれこれとそうしたイマジネーションを引出し、そして彼女の心の中でその世界を拡大することにその特徴があると思われる。


自らの想像力を引き出すシルカのおもちゃ遊び - Shilka(Шилка) the polar bear shows her skill of drawing her own imagination while playing with a toy, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan

たとえば上の映像は14分間もあるのだが、シルカがオレンジ色のブイと向き合い、そして彼女はそこから自分の想像力を働かせ、そして自分の心に中に一つの世界を創造しているシーンであると私は強く感じるのである。これはミルクやマルルやポロロやリラには全くない世界である。これはシルカ特有の "her skill of drawing her own imagination out of toy objects" とでも言うしかない素晴らしい能力であると思う。シルカは実に非凡なホッキョクグマである。
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私は昨年の投稿で「シルカの魅力は我々が彼女に視線を集中させ、そして彼女の感じていること、考えていることに対して我々が思いをはせる時に、シルカの内側からゆっくりと発せられるメッセージを我々が受け取ったときに初めて彼女の魅力を感じ取る」と述べたのだが、つまり彼女が想像力を膨らませているその彼女の心の中を我々が感じ取ることがシルカと会うことの大きな楽しみなのである。それが今回の彼女と、そして彼女が与えられたおもちゃとの間の関係を我々が一緒になって追体験していくおもしろさである。我々はシルカと一緒になって想像力を膨らませるのである。
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シルカの魅力は写真や映像ではなかなか捉えきれないと思われる。何故ならそれは内面で育まれた想像力と、そしてそこから生まれた奥の深い内面的な深みだからである。こういったものは写真や映像ではなかなか説明が難しい。
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このシルカというホッキョクグマの真の姿はルネサンス期に描かれたカトリック教会における聖母像のマリアの像ではなくロシア正教会における生神女マリア(Богородица)のイコンのようなものである。シルカは実に奥行きの深い素晴らしいホッキョクグマである。毎回会うたびにその姿と行動の中に常に新しいものを発見するのである。

Nikon D5500
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-6.3G ED VR
Panasonic HC-W870M
(Jan.23 2016 @大阪・天王寺動物園)

(*注 - このシルカには日本で新しい名前が付いていますが、彼女のロシアでの誕生から成長、来日、そして日本でのこれからの生活を一貫して捉え、本ブログでは引き続き彼女の名前をシルカ - Шилка - で統一して記載するのを方針としています。)
by polarbearmaniac | 2016-01-23 23:55 | しろくま紀行

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