街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ツヨシの「苦節7年」に想う



昨日2月21日の日曜日に釧路市動物園でツヨシのよこはま動物園ズーラシア(以下「ズーラシア」と略記)での繁殖目的による移動の「壮行会」が開催された様子について釧路市動物園はHPで紹介しています。またズーラシアはそのSNSのページでバリーバが無事にとべ動物園に到着したことも明らかにしています。



さて、2008年11月に発覚したツヨシとピリカの性別取り違えから「苦節7年」、ツヨシはとうどう北海道を出て繁殖の舞台への本格的な挑戦に打って出るということになるわけです。12歳にして遅きに失したと言うべきでしょう。それは彼女が本来北海道外に出るべきだったとかといったような話ではありません。2008~2009年当時ならば彼女が国内の個体の再配置によってツヨシ、いや彼女だけでなく当時はまだ十分に繁殖能力が充実しているはずの年齢のホッキョクグマが何頭もいたわけです。そういった個体の再配置によって日本のホッキョクグマ界は繁殖にもっと貢献できたはずなのです。それができなかったのには具体的な原因があったということです。そういった事実をここでいちいち挙げることは今回はしないつもりです。しかし、そういった事実の背景にあったのは、「ホッキョクグマという種」を愛するよりも以上に「(特定の)個体」を愛してしまったという我々ファンの側の問題なのです。どれほど我々が「(特定の)個体」を愛そうが、その「個体」の血統を変えることはできないという冷徹な事実があるわけです。そして一方で、ホッキョクグマの繁殖には「移動」「再配置」というものが不可欠であるという事実です。

評論家の加藤周一氏(故人)の著作は私は若い時に随分と読んだものです。しかし現在では加藤氏の主張の大部分には賛成できなくなっています。しかし現在でも加藤氏に賛成でき、そして加藤氏の言うことが正しいと私が考えている一つのことがあります。それは、「(人を)愛するということは究極的には戦争につながる。戦争を防ぐには理性しかない。」という考え方です。ホッキョクグマの「個体」を愛すると、いつのまにか(飼育下の)ホッキョクグマという種の破滅をもたらすでしょう。どれほどバリーバを愛そうが、彼女を4シーズンもズーラシアで飼育したことは間違いなのです。どれほどツヨシを愛そうが、彼女を性別取り違え発覚後の2009年以来今まで釧路市動物園で飼育し続けたことは間違いなのです。バリーバやツヨシに「お別れ会」や「壮行会」は不要なのです。

(資料)
釧路市動物園(ニュース/Feb.2016 - 2月21日(日曜日)ホッキョクグマ「ツヨシ」の壮行会を開催しました)

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by polarbearmaniac | 2016-02-22 19:30 | Polarbearology

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