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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園のコーラ親子の映像を解釈する ~ 育児方法の転換が不十分なコーラお母さん

チェコ・ブルノ動物園のコーラ親子の映像を解釈する ~ 育児方法の転換が不十分なコーラお母さん_a0151913_23152326.jpg
Photo(C)Zoo Brno

チェコ・モラヴィア地方の都市であるブルノの動物園で昨年11月24日に誕生した赤ちゃんですが、昨年暮れに世界の動物園で誕生したホッキョクグマの赤ちゃんたちのなかで親子関係を観察するのには、このブルノ動物園の場合が私には最も興味深く思えます。今まで双子の育児経験しかないコーラお母さんなのですが今回の一頭の赤ちゃんに接する姿勢と態度には、今までと異なりやや不安定な様子が垣間見るような気がするわけです。まず同園が公開した最新の映像ですが、赤ちゃんはコーラお母さんと遊びたくてしょうがないのですが、コーラお母さんは居眠りをしたいようです。



この映像から読み取れることは、赤ちゃんの活動が活発な時にコーラお母さんがそれに合わせて活動量を増大させ、そして遊び疲れた赤ちゃんが昼寝を始める時に母親も一緒に休むといった親子の活動量の一致が見られないのではないかということです。こういう点については札幌のララというのは実に巧みなのです。あそこで見られるシーンというのは母親と赤ちゃんが一緒に何時間も昼寝をするというシーンです。つまり親子のエネルギーの発散の周期が一致しているということです。ところがこのブルノ動物園の親子はそこのところが一致していないように見えるわけです。私に言わせれば、コーラお母さんは今までの双子の育児方法からの転換がうまくいっていないように思うわけです。双子の場合ならば二頭で遊んでくれますので母親にとっては負担が減るわけですが、赤ちゃんが一頭の場合はやはり一緒に遊んでやらねばいけない場面もあるわけですが、コーラお母さんはそのタイミングがうまく掴めていないようです。

こうして考えてみますと、あの札幌のララの育児能力の高さというものがよく理解できます。子供たちと活動のエネルギーの周期を見事に一致させることができるのがララの高い育児能力を示しているわけです。ララは最初は一頭への育児(ツヨシ、ピリカ)から母親の道を歩み始めたわけですが、世界のホッキョクグマの母親は大部分がこのパターンです。一頭の育児はかなり手がかかるわけで、そこから学んだ経験はその後の母親としての子育てに非常に重要な経験として生きてくるわけで、この経験のもとでその後の双子の育児(ララの場合ならばイコロ/キロル、マルル/ポロロ)は、どこの部分は手を抜くことができるのかを把握すれば済む話なのです。ところが母親としてのキャリアのスタートを双子の育児から始めたコーラお母さんのような場合には、母親は二頭で遊んでいる双子の赤ちゃんに対しての注意力は必ずしも多くする必要はなく、比較的楽に育児が可能なのです(ただし授乳の面では双子に対するほうが体力が必要です)。その双子に対する育児の感覚で一頭の赤ちゃんの育児を行おうとすると今までより注意力が必要になるのですが、コーラお母さんはどうもその自覚がまだ十分ではないように思います。コーラお母さんは最初の育児も二度目の育児も、いずれも双子に対してであって、一頭への育児というのは今回が初体験なのです。だからなかなか育児姿勢の転換が難しいのかもしれません。このあたりがライブカメラの映像を見る上で興味のあるところなのです。

さて、次のシーンです。赤ちゃんは水に興味があって好奇心の塊といった状態になっています。コーラお母さんの姿に注目して下さい。



コーラお母さんは赤ちゃんが水に興味を持っていることにあまり関心がないようです。しかし私の見たところ、この赤ちゃんは少々危険な冒険を始めようという気配を感じます。母親はもっと赤ちゃんを注意して見守る姿勢が必要だと思います。コーラお母さんは双子が勝手に遊んでいるのだという感覚でたいして気に留めていないように見えますが、この赤ちゃんは遊び相手がいないので自分で勝手に冒険をしようとしているわけです。だからこそ注意が必要なのです。やはりコーラお母さんは子供が双子である感覚から転換し切っていないように思います。

さて次のシーンです。さすがに最初の部分でコーラお母さんは赤ちゃんの危険を察して注意しています。



でもその後はやはり赤ちゃんとは活動の周期が一致していないらしくコーラお母さんは居眠りがしたいようです。

ライブカメラの映像を見ているとこの他にもいろいろと興味深いシーンを見ることができます。コーラは母親としての素質は非常にあると思うのですが、やはりララと比較すると、まだまだだなという感じもします。「チェコのコーラ」と「世界のララ」「世界のシモーナ」との間にはまだ幾分差があるようです。

(*追記1 - 三つ子になりますとまた育児方法が違ってくるようです。私は2012年の春と秋にモスクワ動物園でシモーナの三つ子に対する育児を長い時間観察できたのですが、なんとシモーナは三つ子に対して双子への育児ではなく一頭への育児の姿勢で臨んだのです。つまり、三つ子のそれぞれに対して別個に細かく対応したのです。これには驚きました。こういうやり方を行うと母親には大変な負担がかかるわけですが、シモーナは見事に三頭それぞれに対して個別の対応を行ったわけでした。全くすごい育児能力だと私は驚嘆したわけです。世界の超トップクラスの母親になると、こういう神業のようなことが可能になるようです。)

(*追記2 - 世界のホッキョクグマ界の頂点に存在しているレニングラード動物園のウスラーダは、ララとは正反対のスタイルで育児を行います。ウスラーダは場面場面で常にエネルギーの発散量が一定しています。ララのように子供たちとエネルギーの発散に増減があって、その増減のサイクルを親子で一致させるということはしないわけです。ウスラーダは子供たちと一緒に昼寝するということがほとんどありません。ウスラーダは飼育展示場の空間を完全に支配し、そして子供たちを自分の外側にある客観的な存在ととらえて冷静に見守り子供たちを守るわけです。ララは自分の子供たちを自らの内側にある存在ととらえていますので、子供たちと一緒に遊んだり眠ったりと子供たちと一体感があるわけです。見ていておもしろいのはウスラーダ親子よりもララ親子です。しかしウスラーダ親子というのはある種の乾いた関係があり、そして母親は子供に対して絶対的な優位性を持つという厳しい関係も見えてくるわけで、こういった関係の親子の魅力に気が付くと実におもしろく観察できるわけです。ウスラーダ親子の魅力に気が付くには多くの時間と、そして観察する側の経験が必要になってくるわけです。その点で誰が見てもすぐに楽しめるララ親子とは違っているということです。)

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by polarbearmaniac | 2016-03-30 00:15 | Polarbearology

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