街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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浜松市動物園のキロルが釧路市動物園へ ~ 注目すべきバフィン親子の浜松帰還時期

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キロル (Белый медведь Кирору)
(2013年3月16日撮影 於 浜松市動物園)

本日4月4日、浜松市動物園釧路市動物園、札幌・円山動物園の三園からほぼ同時に発表がありました。浜松市動物園で飼育されている札幌市(円山動物園)が権利を持つ7歳の雄のキロルが繁殖の目的のために釧路市動物園に移動することとなりました。つまりミルクとの間で繁殖を狙うということになったわけです。キロルのお別れ会は4月10日に浜松市動物園で開催されるそうです。移動日は4月13日だそうです。釧路市動物園の側の発表ではこの移動はBL契約に基づくものであることを強く示していますが、円山動物園の発表では曖昧です(*後記 - 円山動物園の発表は夜に読んでみますと追記されたようです。現在ではBL契約であることをかなり暗示させる内容に訂正されています)。常識的に考えればBL契約であり、これはキロルの所有権は札幌市に残したままであるということです。通常のBL契約ならば現在3歳のミルクと現在7歳のキロルの将来の第一子(or first litter)の権利は札幌市に帰属することとなるでしょう。



これで私が若干憂慮していた状況、つまり横浜でのツヨシとジャンブイの繁殖成功の個体が雄ならば、その個体(「個体A」と略記します)を釧路市動物園に移動させてミルクのパートナーにする(つまり釧路市が共に所有権を持つペアということになりますが)、そういうことが回避されたということになるわけです。何故これが回避すべき組み合わせかといいますと、ミルクの祖父であるモスクワ動物園の故ウムカと、「個体A」の父親である横浜のジャンブイは野生出身の双子兄弟である可能性は状況証拠では濃厚であるということだからです。これについては「ロシア血統の謎」に迫る(5) ~ ジャンブイ(横浜・ズーラシア)の幼年時代の映像が示す深い謎という投稿をご参照下さい。
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キロル(2013年3月16日撮影 於 浜松市動物園)

そもそもキロルが2011年3月に帯広から浜松へ移動した理由は「共同声明2011」によってバフィンの大阪出張によってホッキョクグマが不在となる浜松市動物園でのホッキョクグマの飼育展示を継続させるためだったわけです。

キロルの帯広出発(2011年3月6日放送)

バフィンの浜松から大阪への出張決定(2011年2月19日放送)

バフィンの天王寺動物園お披露目(2011年3月6日放送)

バフィンは大阪でゴーゴとの間で繁殖に成功して2014年11月にモモが誕生したわけですが、バフィンの権利もモモの権利も浜松市に帰属しており、バフィンは浜松市と大阪市との間で締結されたBL契約の目的を達成したわけですから、浜松に戻ることは当然ですし、浜松市動物園もバフィンの余生は浜松で見てやりたいという希望を持っているわけですから、バフィンの浜松帰還は尚更時間の問題だったわけです。そしてモモもバフィンに同行して浜松に移動することも動物福祉(Animal waefare)上は好ましいことなのです。そうなると札幌市がキロルを浜松市に貸し出した理由である「バフィン不在によるホッキョクグマ展示の埋め合わせ」という目的は完全に達成できたことになり、キロルは浜松から移動することになるのも当然のことなのです。

第一の重大な問題はキロルをどこに移動させるかということだったわけです。原状復帰ならば帯広ということが考えられたわけです。この件について昨年4月の時点で私がどう考えていたかですが、それは「浜松市動物園のキロルの今後を展望する ~ 「さすらいのホッキョクグマ」 となるのか? 」という投稿をご参照下さい。その投稿の中で私はキロルとミルクとの繁殖上の組み合わせについて「この可能性を考えてみるためには別の重要な要因を考慮せねばなりません。」としか述べていないわけです。実は私はミルクのパートナーである雄(オス)のホッキョクグマについては釧路市が秋田県知事に泣きついて調達すればよいと今でも考えています。(最近秋田県知事がロシアのプーチン大統領に接近しようとしているらしいというのは私の思い過ごしでしょうか?) ここのところ何回か、旧ソ連圏のEARAZAの盟主であるモスクワ動物園がロシアが国外にホッキョクグマの幼年・若年個体を売却する際に相手方の動物園にどういう条件を要求してくるかについて長々と述べてきたつもりです。雌(メス)のミルクの存在はそういった際に大変に効果的なカードなのです。そういうカードを持ちながらそれを海外個体の導入に利用せずにララファミリーのキロルをパートナーとすることはいささか安易であると思うわけです。そもそも私はミルクのパートナーがどの個体になるか、どの個体にすべきかなどということは真面目に考えたことがありません。要するに釧路市と秋田県で解決すればよいし、それが十分可能であるという立場だからです。そのほうが国内飼育個体頭数の確保に寄与できるからです。しかし一方でキロルについてはパートナー獲得の見込みが立っていないというのも事実です。ともかくこれでキロルは北海道帰還です。本当にご苦労様でした。「キロル!ありがとう!!」という浜松市動物園の飼育員さんの感謝の言葉、本当に心に沁みます。
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バフィンとモモ(2015年7月15日撮影 於 天王寺動物園)

次なる第二の重大な問題はバフィン親子の浜松帰還がいつになるかだったわけです。私は昨年2015年の3月の段階でこの問題をどう考えていたかについては「大阪・天王寺動物園のバフィン親子の今後を展望する」という投稿をご参照下さい。

今年に入ってから天王寺動物園の飼育員さんのブログの内容の行間からはある種の苦悩の御様子が感じられ、バフィン親子の浜松帰還は予想以上に早い可能性があると私は感じたものの、バフィンの体調問題などが表面化したために私は年内はバフィン親子は大阪にいるだろう(置くべきだ)と予想し(主張し)、「日本のホッキョクグマ界、しばし波風の立たぬ安定の「無風状態」へ ~ "Dona nobis pacem." 」という投稿を行ったわけでした。実はこの投稿の真意は今年は「移動はない」という予想の面からよりも、「移動させるな」という希望で投稿したというのが本当のところなのです。だからタイトルは "Dona nobis pacem." (平和を与えたまえ)なのです。バフィンの体調は回復してきているとはいえ彼女は年齢が年齢なのです。優秀な飼育員さんや獣医さんが万全のケアを行ってもバフィンはホッキョクグマとしては非常に高齢で出産し、慣れない育児を行い、そして一年以上もモモに丁寧に授乳を行ってはいるものの、現在は24歳になっているという客観的事実は動かし難いわけです。やはり当分は移動させずに時間をかけて体調管理をするべきだろうというのが私の考えだったというわけです。

しかし事態の急転直下をもたらせたものは多分、白浜のゴーゴの「仕事ぶり」だったような気もします。ゴーゴはもう白浜では「任務終了」となったと判断されたのかもしれません。そうなるとゴーゴは次の出張先があるかという問題が生じてはくるものの、ここはといった場所とパートナーはいないわけです。敢えて言えば札幌のキャンディですが、ゴーゴとキャンディをペアリングさせる場所(園)は見当たらないように思います。ですからゴーゴは「失業状態」となって早ければ今月4月中に彼も大阪に帰還するのではないでしょうか。あるいはもう一つの可能性として、実はキロルの釧路での移動は年度末の3月中に行われるはずだったのにキロルと交代で浜松入りするはずのバフィンの体調不良が発生したためにバフィン親子の3月中の浜松移動は不可能となったが、バフィンの体調の回復の様子を見てもう大丈夫だとの判断が下ったのでキロルは急遽4月13日に釧路に移動できることとなったのだという理解も可能でしょう。
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バフィンとモモ(2015年11月23日 於 天王寺動物園)

さて、次なる重大な発表は間違いなく天王寺動物園からでしょう。問題はそれがいつになるかです。5年前のバフィンの大阪への移動後に浜松市動物園にキロルが来園したのは四日後でした。つまり浜松市動物園にホッキョクグマが不在だったのはたった3日間だけでした。となれば、4月17日に大阪でバフィン親子のお別れ会、休園日明けの4月19日早朝に浜松へ移動というのが最も直近のスケジュールかもしれません。なんとも言えません。しかしこれでは心の準備が難しいですね。常識的に考えればGW直前ということでしょうか。しかし非常に不思議だと思われるのは、ミルクが繁殖可能な年齢となるまであと数年(2~3年)かかります。ですからキロルの浜松から釧路への移動は今年行われるにしても本来はそう急ぐ必要はなく、7月でも9月でも11月でもよいはずなのです。ところがいきなりキロルは4月13日に移動することが発表されたわけですから、バフィン親子の移動も非常に早いと考えざるを得ません。このあたりがいささか気になるところではあります。逆の見方をすれば、浜松市動物園が自園での一時的なホッキョクグマ不在をどれだけの期間受忍するかが問題なのだという言い方もできるでしょう。比較的長い期間を受忍するならばバフィン親子の大阪滞在はもっと伸びるでしょう。受忍しないならば最短で4月19日が移動日となるでしょう。 こういったことはあまり深く考えない方がよいでしょう。考えてもどうなるというものではないからです。ただ一つ明らかなのは、キロルは4月13日に浜松を去るということです。

(*追記 - キロルの抜けた浜松に行くのはバフィン親子以外という可能性は全く無いわけではありません。たとえば札幌のキャンディです。しかし常識的にはそう確率は高くないでしょう。マルル、ポロロの線はありません。もう札幌市と熊本市、徳島市との間での預託契約の延長が決まっているからです。アイラもありません。帯広がホッキョクグマ不在となるからです。リラの線もありません。リラはララともう一年一緒に暮らすことが決まっているからです。旭川のサツキ....これはあり得るかもしれません。キロル同様、サツキの権利も札幌市にあるからです。しかし繁殖に関係のないことでホッキョクグマが北海道から浜松まで移動するというのは想定しにくい話です。)

(*追記2 - 静岡新聞の5日付けの報道では浜松市動物園は「市動物園では(ホッキョクグマは)不在になるが、担当者は「できるだけ早くキロルの後任を導入できるよう頑張りたい」としている。」と述べています。そうであるならばキロルをこれほど急いで釧路に移動させる必要など毛頭ないわけです。ホッキョクグマが不在でよいなら、そもそもキロルが帯広から浜松に移動する必要もそれほど緊急ではなかったということになりますね。実に奇妙ですね。)

(資料)
浜松市動物園 (Apr.4 2016 - 「ホッキョクグマ「キロル」の転園について」 )
釧路市動物園 (Apr.4 2016 - ホッキョクグマの「キロル」が来園します!)
札幌市・円山動物園 (Apr.4 2016 - 浜松市動物園に貸出中のホッキョクグマの「キロル」が釧路市動物園に移動します)
道内ホッキョクグマ飼育4園共同声明 (2010年1月28日)
ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明  (2011 年)2 月18 日)

(過去関連投稿)
大阪・天王寺動物園のバフィン親子の今後を展望する
浜松市動物園のキロルの今後を展望する ~ 「さすらいのホッキョクグマ」 となるのか?
今年2016年のホッキョクグマの国内再配置を考える ~ 狭まる選択肢と限られたシナリオ
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by polarbearmaniac | 2016-04-04 14:00 | Polarbearology

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