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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア北東部・ヤクーツク動物園で最年少の繁殖成功に挑んだ昨年のコルィマーナとロモノーソフの若いペア

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コルィマーナ(左)とロモノーソフ(右) 
Photo(C)YKT.ru /Ledyanoy

2012年の4月にロシア極北の東シベリア海の孤島で孤児となっていたのを発見・保護された現在4歳の雌のコルィマーナ(Колымана) と2011年の11月にサンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダの15番目の子供として誕生した現在4歳の雄のロモノーソフ(Ломоносов) は現在ロシア北東部の冬期の極寒の地であるサハ共和国のヤクーツク動物園で飼育されている若いペアです。コルィマーナについてもロモノーソフについても今までその成長を可能な限り追ってきたつもりですし、ロモノーソフについては私もレニングラード動物園で2012年の9月に実際に会ってきた経験があるほどです。
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さて、この若いペアですがヤクーツクの地元ではこのペアの間での繁殖に大いに期待していうことはすでに昨年投稿していました。実は昨年2015年の繁殖シーズンに雌のコルィマーナが産室入りしていたという事実が現地の報道で最近明らかになり、少しばかり驚いています。報道内容によりますと婉曲な言い回しですが昨年の春にこのペアの間で初めての繁殖行動があったらしく、ヤクーツク動物園は大急ぎでその様子をモニターするカメラを設置したりコルィマーナへの給餌の内容を以前とは違ったものに変えたりと、年末のコルィマーナの出産の可能性に備えて準備を行ったそうです。それ以降、コルィマーナはそれまでの子供らしい遊び方はすっかり影を潜め、だんだんと体を動かすことをしなくなってきたそうです。
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コルィマーナ Photo(C)YKT.ru /Ledyanoy

同園は秋までにコルィマーナとロモノーソフを別居させていたそうですが、11月からコルィマーナの昼間の睡眠時間が急速に増加したため同園はこれを妊娠の兆候であると認識しコルィマーナの出産に備えた準備を行ったそうです。ところが彼女は12月下旬になってそれまでの長い睡眠時間が急速に減少して、かつての運動量を取り戻したそうで、当惑した同園はロシアでホッキョクグマの繁殖実績のある動物園の担当者や専門家に意見を求めたところ、結論は「雌のコルィマーナは母親となる準備はできているものの、雄のロモノーソフがまだ完全には繁殖可能である状態にはなっていない。」という結論だったそうです。2015年春の繁殖行動のシーズンではこのペアはまだ3歳でしたから、やはりこれではまだ繁殖は無理という結論は妥当なところでしょう。
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ロモノーソフ Photo(C)SakhaNews

昨年暮れに「北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること ~ 再び考えるキャンディの今後」という投稿を行っていますが、そこで示した北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマに関するデータでは出産があった時点での雌と雄の最も若い年齢は4歳ではあるものの、極めて少ない実績しかないわけです。またこれは自然下でも同じであり、この件については「ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限」という投稿をご参照下さい。昨年の暮れにコルィマーナが出産に成功していたとそれば、このペアは4歳になったばかりのペアということになりますからデータ上はホッキョクグマの繁殖可能年齢最年少である4歳での繁殖成功という結果になっていたはずですが、なかなかそううまくはいかなかったようです。
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コルィマーナ Photo(C)YKT.ru /Ledyanoy
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ロモノーソフ Photo(C)YKT.ru /Ledyanoy

しかしこのコルィマーナとロモノーソフのペアは将来が極めて有望なペアであることは間違いありません。ロシアの動物園というのは年齢が同じ場合には、ペアは幼少期から別居させずに一緒に暮らさせる場合がほとんどのようです。ノヴォシビルスク動物園のゲルダとクラーシン(カイ)ペルミ動物園のユムカ(ミルカ)とセリクイジェフスク動物園のザバーヴァとバルーモスクワ動物園ヴォロコラムスク保護施設のミラーナとアイオン、そして今回のヤクーツク動物園のコルィマーナとロモノーソフといった非常に若いペアです。これらのペアのうち繁殖可能年齢に達しているのはノヴォシビルスク動物園のゲルダとクラーシン(カイ)のペアだけですが、このペアの間にはすでに二頭の子供が誕生しているわけです。ロシアのホッキョクグマ界は将来が有望な若いペアが実に多くいるわけです。そしてそれらのペアは別飼育や交代展示ではなく、全て幼少期から共に一緒に暮らしているというわけです。こういうやり方は「モスクワ動物園流」のやり方ですね。ロシアでもレニングラード動物園は過去の例を紐解いてみると「モスクワ動物園流」とは反対に、ペアは幼少期から一緒に暮らさせない場合が原則で、成長後も同居は繁殖行動期だけにしているようです。仙台の八木山動物公園のラダゴル(カイ)とポーラのペアは幼少期から別居で、成長した後も同居は繁殖行動期に限定しているのではないでしょうか。つまり「レニングラード動物園流」というわけです。アメリカ動物園・水族館協会(AZA)の「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Polar Bear Care Manual)」です(pdf)では、どちらのやり方に優位性があるかについては場合場合であるという見解であり、それは雄と雌の気質・性格の問題と施設の構造の問題次第であるという見解です。ですから日本の動物園関係者が多く考えている「雄雌のペアは繁殖行動期以外は別居させねばならない」 という厳格な考え方は必ずしも常に正しいとは言えないということになります。ただしAZAのマニュアルではペアが幼少期から繁殖可能な年齢に至るまでの時期については何も語ってはいません。しかし過去のロシアでの実例だけ見れば幼少期から同居させるという「モスクワ動物園流」に優位性があるような印象を受けますし、現実に現在のロシアの動物園では「モスクワ動物園流」でペアの同居が幼いうちから行われている例が多いわけです。ただしこれは年齢差がせいぜい一歳程度の場合であることにも注意が必要でしょう。
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ロモノーソフ Photo(C)Россия 1

(資料)
SakhaNews (Feb.12 2016 - Ожидание: Когда же знаменитая Колымана станет мамой...)
Дальневосточная Политика (Feb. 12 2016 - Якутия ждёт, когда белая медведица Колымана станет мамой)
YKT.ru (Ledyanoy/Jun.9 2015 - Якутский зоопарк "Орто-Дойду". Часть 4.)
"Reproductive trends of captive polar bears in North American zoos: a historical analysis" (2015)
"ANURSUS:A POPULATION ANALYSIS SYSTEM FOR POLAR BEARS (Ursus maritimus)" (1987)
Association of Zoos and Aquariums - Polar Bear (Ursus maritimus) Care Manual

(過去関連投稿)
*以下、ヤクーツク動物園のコルィマーナ関連)
ロシア極北・サハ共和国(ヤクーチア)のコルィマ湾でホッキョクグマの赤ちゃんが保護される
ロシア極北・サハ共和国(ヤクーチア)で保護された孤児の赤ちゃんがヤクーツク動物園へ
ロシア極北・サハ共和国(ヤクーチア)で保護された孤児の赤ちゃんが無事にヤクーツク動物園に到着
ロシア極北・サハ共和国で保護された孤児の赤ちゃん、「コルィマーナ」と命名される
ロシア極北・サハ共和国のヤクーツク動物園で保護されているコルィマーナが一般公開となる
ロシア極北・ヤクーツク動物園のコルィマーナのパートナーはレニングラード動物園のロモノーソフに決定か?
ロシア極北・サハ共和国のヤクーツク動物園に到来した夏 ~ コルィマーナの近況
ロシア極北・ヤクーツク動物園のコルィマーナが11月に新飼育展示場へ移動
ロシア極北・ヤクーツク動物園のコルィマーナに地元航空会社のヤクーチヤ航空より支援の手
(*以下、ロモノーソフ関連)
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダが15頭目の赤ちゃんを出産!
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園で赤ちゃんの初登場の日が迫る
ウスラーダの赤ちゃんの登場を待つサンクトペテルブルクのレニングラード動物園
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダの15番目の赤ちゃんが遂に一般初公開!
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの15番目の赤ちゃんの近況
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの赤ちゃんの名前がロモノーソフに決まる
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園の赤ちゃんの最近の様子 ~ 新動物園建設計画が発表
ロシア極北・ヤクーツク動物園のコルィマーナのパートナーはレニングラード動物園のロモノーソフに決定か? 
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの15番目の子供、ロモノーソフの近況
秋晴れのサンクトペテルブルクでウスラーダ一家と再会 ~ ロモノーソフ君、はじめまして!
ウスラーダの15番目の子供、ロモノーソフの素顔 ~ 一人っ子の温和な性格か?
ウスラーダお母さん、堂々たる貫禄を見せつける理知的な母性の発露
夕方から満を持して登場のウスラーダとロモノーソフの親子
ウスラーダさん、メンシコフさん、ロモノーソフ君、お元気で! ~ ホッキョクグマ体験の至福の3日間
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のロモノーソフの旅立ち間近を同動物園が告知
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のロモノーソフのヤクーツク動物園への移動が決定
息子との間近の別れを予感しているウスラーダお母さん ~ 冬の日のサンクトペテルブルクの親子の情景
ロモノーソフとウスラーダお母さんの親子最後の一日 ~ サンクトペテルブルクでの別れ
ロモノーソフ、無事にヤクーツク動物園に到着 ~ そして息子の去った日のウスラーダお母さんの姿
ロシア・北東部、サハ共和国のヤクーツク動物園に移動したロモノーソフの近況
(*以下、ヤクーツク動物園でのコルィマーナとロモノーソフの同居関連)
ロシア・シベリア北東部のヤクーツク動物園でコルィマーナとロモノーソフの新飼育展示場が完成
ロシア・シベリア北東部、ヤクーツク動物園の新飼育展示場でのコルィマーナとロモノーソフの同居の様子
ロシア・シベリア北東部、ヤクーツク動物園でのコルィマーナとロモノーソフの順調な成長
ロシア・シベリア北東部、ヤクーツク動物園でのコルィマーナとロモノーソフの「国際ホッキョクグマの日」
ロシア北東部、サハ共和国・ヤクーツク動物園のコルィマーナとロモノーソフに企業が魚のプレゼント
ロシア北東部サハ共和国・ヤクーツク動物園のコルィマーナとロモノーソフの冬の日 ~ 雪を楽しむ若いペア
ロシア北東部・ヤクーツク動物園のコルィマーナとロモノーソフの将来の繁殖に期待する地元の人々
(*以下、繁殖年来、同居関連)
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの歩む道 ~ 再説: 繁殖可能年齢上限
北米の過去約100年間の飼育下のホッキョクグマ出産記録が語ること ~ 再び考えるキャンディの今後
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(1) ~ 雄雌の同居は繁殖行動期に限定すべき?
by polarbearmaniac | 2016-04-06 09:25

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