街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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「期待されるホッキョクグマ」イコロ、「愛されるホッキョクグマ」キロル、それぞれが繁殖への道へ

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「時代は変わった」ということを強く認識させるニュースがいくつか流れています。まず恩賜上野動物園で飼育されている共に7歳のデアとイコロですが、先日の室内での同居開始のニュースに続いて昨日の休園日に屋外の飼育展示場で30分間だけの時間であったものの、同居が行われたそうです。上野動物園はこうして「あわてず急がず」着々とホッキョクグマの繁殖成功に向けて歩みを進めているということです。昨年をイコロの上野への順応にたっぷりと費やし、そしてこうして今年の春からの同居の試み開始と、足がしっかりと地に着いた確実さです。同年齢の若いペアを飼育しているという強みが生かされています。昨年私は毎月のように上野動物園でこのデアとイコロを観察してわけですが、秋から冬の入口にかけて一緒の「マンネリ化」状態が観察されたわけですが、そうした「退屈な状態」をあえて作りだし、そして熟した果実が自然に地面に落下するような形で同居の試みへと進めていくやり方は、まさに「ホッキョクグマ繁殖の王道」を歩んでいるように思います。

(*追記 - 天下の上野動物園のホッキョクグマ繁殖に向けての本気度がよくわかる記事が出ています。さすがだと思います。)
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上野動物園はイコロとキロルがまだ帯広に暮らしていた時代からイコロに白羽の矢を立てていたそうです。私は「東京」という大都市で展示されるホッキョクグマのキャラクターとしてはキロルのほうが向いていると考えます。しかし上野はあえてイコロを当初から指名して札幌市に話を持ち込んでいたというわけです。しかしそれはすぐには実現しませんでした。「共同声明2011」によってホッキョクグマが不在となる浜松にバフィンを補充する形でイコロとキロルのどちらかが移動することになった時に浜松市動物園が実際にこの二頭を見て選択したのはキロルでした。その選択は今にして思えば正しかったと思います。不在のホッキョクグマの代役としてはキロルのキャラクターはピッタリだったわけです。こうして、「期待されるイコロ」、「愛されるキロル」がそれぞれ別の道を歩んだものの、とうとうこの二頭も繁殖の舞台に立つ日がやってきたというわけです。このイコロとキロルの一般公開開始の日から札幌に頻繁に出かけてその成長を見てきた私ですが、膨大な枚数のその時代のこの双子の写真を撮影しています。本ブログ開設以前のことでしたので、それらの写真はここでご紹介したことはありません。

イコロとキロルのプール初体験 (Apr.19 2009)
(Ikor and Kiroru for the first time into the water)


夏の日のララとイコロ、キロル (Summer 2009)
(One Summer day of Lara, Ikor and Kiroru)


イコロとキロルを送る会 (Feb.20 2010)
(Farewell to Ikor and Kiroru....!)


世界で片手の指の数にも満たないほどしか存在していない超トップクラスの偉大なホッキョクグマの母親たちの一頭となったララですが、実はこのイコロとキロルの育児中の一時期、「迷い」が生じた時期があったのです。「ディオニソス的ホッキョクグマ」であるララはこの双子をうまく等距離で公平に扱ってきたわけですが、一時期になってやはり同じ「ディオニソス的ホッキョクグマ」であるキロルに肩入れしてしまったのではないかと思える場面が出現したわけです。イコロが円山動物園の濠の下に降りられず、濠の下にいたのはララとキロルの二頭だったという瞬間が多く見られた時期があったわけです。ララはなんとそこでキロル一頭だけに授乳しようとしたことがありました。それを見ていた来園者の何人かがララお母さんに対して抗議の声を上げたことがあったのです。結局ララは上に登って二頭に授乳したというわけでした。こういったことだけではなく、ララはそうした一時期にキロルに肩入れしているのではないかと思われる行動を何度か行ったわけです。キロルはそのことによって「自分はイコロよりも母親に大事にされている」と思ったのでしょう、キロルはイコロに対して「攻勢」に出た時期があったのです。

やがてこの二頭は帯広に移動しました。帯広では飼育員さんはこの双子を平等に扱ったのは当然のことでした。キロルはそれまで自分の方が母親から大事にされていたと思っていたために、この双子を平等に扱う飼育員さんに不満を持ったわけです。「ボクはイコロよりもお母さんに大事にされていた。なのに何故ここではイコロとボクが同じ扱いなの?」ということだったわけです。そしてその不満の矛先を飼育員さんにではなくイコロに向けたのです。一時期ではあったにせよ、「偉大なる母」であるララすら間違いをしてしまったらしいこともあったというわけです。ところがイコロはキロルからの「攻勢」をさほど気にすることもなく冷静だったわけです。「アポロ的ホッキョクグマ」イコロ、「ディオニソス的ホッキョクグマ」キロル、そこにこの二頭の違いがあるわけです。将棋で言えば大山康晴のイコロ、升田幸三のキロルといったところでしょうか。指揮者で言えばヘルベルト・フォン・カラヤンのイコロ、レナード・バーンスタインのキロルといったところでしょう。画家で言えばレオナルド・ダ・ヴィンチやセザンヌのイコロ、そしてミケランジェロやゴッホのキロルといったところです。「ディオニソス的ホッキョクグマ」キロルは、過去の一時期に母親であるララから特別の愛情をもらっていたと少なくとも彼自身は理解していたわけです。ですからキロルは人間からもより多く愛されることを望み、そして浜松ではそれを実現してきたわけです。そのキロルも4月10日に浜松市動物園でお別れ会がありました。
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そしてそのキロルの釧路での近未来のパートナーはミルクというわけです。キロルとミルクとの間には4年の年齢差があるわけです。釧路市動物園は彼らの同居開始を含めて、いろいろと気苦労が多くなるのに違いありません。なかなか難しい舵取りを要求されるわけです。実はこれは思った以上に難しいはずです。ましてや、回りには熱心な方々が多くいて大変です。  さて、性格的な組み合わせで言えば私はキロルと相性が良いのはミルクよりもシルカだろうと思っています。キロルとシルカは性格的にはかなり違うわけですが、その違いによってむしろ相性が良いだろうという気がするわけです。さて、それはそれとして、キロルは釧路ではもう一段の脱皮が求められるような気がします。その点がイコロとは異なっているわけで、イコロは持って生まれたそのままの姿と性格で年月とともに成長を遂げてきたわけですが、キロルの場合は繁殖と言う舞台においては今までと少し異なる役回りを演じる必要があると思うからです。

さて、そういったことはともかくとして、イコロとキロル、この若き二頭のホッキョクグマたちに大いに期待したいと思います。

(*追記 - キロルが本日、浜松市動物園を出発した様子が同園の「飼育員だより」の「キロル釧路市動物園へ その1」、及び「キロル釧路市動物園へ その2」で公表されています。なかなか胸にしみる内容です。)

(資料)
静岡新聞(Apr.12 2016 - 「キロル」元気でね 浜松市動物園でお別れ会)
浜松市動物園(Apr.8 2016 - キロル) (Apr.10 2016 - キロルのお別れ会)

(過去関連投稿)
粛々と浜松へ
待ってました、浜松のキロル若旦那!
新居にやや戸惑いながらも元気なキロル
by polarbearmaniac | 2016-04-12 12:00 | Polarbearology

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