街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダお母さんとオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)のプール開き

a0151913_0371833.jpg
ゲルダお母さんとオイゼビウス(仮称) 
Photo(C)Новосибирский зоопарк

ロシア・西シベリの大都市ノヴォシビルスクもすっかり雪がとけて春になっています。ノヴォシビルスク動物園のホッキョクグマ飼育展示場もとうとう今週からプール開きとなったようです。それを報じる地元TV局のニュースをご覧いただきましょう。該当部分だけ抽出してあります。



プールにはいつものように水が入れられました。さて、ノヴォシビルスク動物園は昨年12月7日に誕生したこの赤ちゃんの名前を公募するのか、あるいは園で決めてしまうのか、あるいは名無しのままにしておくのかなどを全く明らかにしていません。困ったものです。いつまでも「赤ちゃん」では具合が悪いので私は早々と仮称を付けることにします。この赤ちゃんが雌(メス)だと発表されたあとは「フローラ(Флора - 春と花の女神)」にしようと思っていましたが雄(オス)だと訂正発表されましたのでこの赤ちゃんを、冷静で思索的な「静」を象徴する名前として「オイゼビウス (Ойзебиус)」という仮称で呼ぶことにします。

さて、このオイゼビウスは飼育展示場のプールに今まで水が満たされていなかたっために当然まだ泳げません。さてオイゼビウスはどうやって水に親しんでいくでしょうか? まず4月16日の映像です。ゲルダお母さん、久し振りのプールで実に伸び伸びとしています。



次の映像ではオイゼビウスはさかんに水に入っているゲルダお母さんにちょっかいを出しています。



オイゼビウスはまだまだ水に入る勇気はありません、



まあこれはしょうがないですね。さて、では一昨年の同じプール開きの頃のシルカ(Шилка 現 大阪・天王寺動物園)の映像を見てみましょうか。



オイゼビウスよりもシルカのほうが幾分好奇心が上回っているようです。ゲルダお母さんは太っ腹なのか、オイゼビウスにもシルカにもあまり気を払いませんね。こういった時点で赤ちゃんが水に接近することに非常に神経質になるのがウスラーダ、シモーナ、フギース、フリーダム、ヴェラといった母親たちです。それほど神経質にならないのはオリンカ、ムルマ、メーリク、ドゥムカといった母親たちです。ララの場合はプール開きの日は水が非常に少ししかプールに入れられていないため赤ちゃんたちは非常に安全であることをララは当然知っていて、むしろ赤ちゃんの体を押して水に入れようとさえするわけです。こういった点でレニングラード動物園、モスクワ動物園、アウヴェハンス動物園、ロッテルダム動物園、オールボー動物園、ニュルンベルク動物園などは赤ちゃん登場の時から深いプールには水が一杯に入っているわけで、ララの円山動物園とは状況が異なるわけで単純な比較はできません。円山動物園(そして天王寺動物園)の場合は最初は非常に水を浅くしているわけで、ララは気苦労することなく赤ちゃんたちを水に「押しやる」ことができるわけです。イコロとキロル、そしてマルルとポロロのシーンをもう一度ご紹介しておきます。

イコロとキロルのプール初体験 (Apr.19 2009)
(Ikor and Kiroru for the first time into the water)


マルルとポロロのプール初体験(Apr.20 2013)
(Marle and Porolo for the first time into the water)


さて、母親が最初から水が入った深いプールで赤ちゃんを水に親しませようとする場合なのですが、モスコフスキー・コムソモーレツ (Московский комсомолец) 紙の2012年5月23日付の記事にモスクワ動物園でシモーナがこれを行う場面を記者が観察したレポートがあります。それは記者はシモーナの巧みさに感嘆している様子がよくわかる内容です。そして記者はシモーナのテクニックを実に見事に解析しているのですがが、それは以下のようなことです。

①母親(シモーナ)は、まず必ず最初に水に入って、そこから陸の子供たちに「話しかける(оттуда общалась с детками)」。

②母親(シモーナ)は子供たちが水に入ったときは、そこから子供たちが陸に上がるときにだけ助けてやる(помогла им выкарабкаться)。

③母親(シモーナ)は次の段階では、子供たちと同時に水に入るようにする。


といったことです。つまり子供たちにストレスを与えず、のびのびと水に親しめるようにしてやるということです。特に②は素晴らしいと思います。赤ちゃんたちは何かあっても必ず母親が助けてくれるという安心感を持つために水に入りやすい気持ちになるというわけです。①については、まさにこれができるかどうかがホッキョクグマの母親の育児能力の問題なのです。水の中に入った母親が陸上にいる子供たちとコミュニケートするという行為ができる母親は育児能力が高いわけです。この下はシモーナの三つ子が初めて戸外に出てくる様子なのですが(何度もご紹介してきましたので改めて見ていただくことは不要)、シモーナはこうして自分が先に外に出て、中にいる子供たちとコミュニケートするわけです。「外に出てきて大丈夫ですよ。」と話しかけているわけです。まさにこれは上の記者が観察したシモーナが子供たちを水に誘うことと同じやり方だということです。



一方で「私は私で自由に水の中で遊んでいるから、あなたはあなたで勝手にしてね。」とでも言わんばかりの母親は育児能力が高くはないというわけです。ゲルダお母さんを見ていると、こういったシモーナのような見事な技量は現時点ではまだ発揮されてはいないようです。しかしこれからが楽しみです。

(*追記)ホッキョクグマの母親というのは、これが本当に同じ種なのかと思えるほど母親によって育児スタイルがそれぞれ異なります。そういったスタイルの違いという座標軸がまずあって、そこにさらにもう一つ育児技量の優劣といった座標軸もあるわけです。世界の有名な母親たちの中ではシモーナとララは育児スタイルは比較的良く似ています。もう一方でウスラーダとフギースはその育児スタイルが似ているわけです。大阪のバフィンというのは後者のスタイルなのです。しかしウスラーダには母親としての圧倒的な「権威」を感じさせますが、バフィンは比較的親しみやすいといった違いは大きいわけです。)

(資料)
Московский комсомолец (May.23 2012 - Медвежат в зоопарке записали в школу плавания)

(過去関連投稿)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ やはり出産していたゲルダ!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの登場を待つ人々 ~ その時を親子の意思に委ねる度量
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、一瞬姿を見せる ~ 'authenticity' への視座
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんがゲルダお母さんと本日、初めて5分間だけ戸外に登場!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダ親子の「国際ホッキョクグマの日」
ロシア・ノヴォシビルスク動物園で誕生の赤ちゃんの「国際ホッキョクグマの日」の映像を追加
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの声を札幌のリラ、大阪のモモと比較する
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの性別予想に盛り上がる地元 ~ 雄(オス)の予想に高い支持
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子の近況 ~ 親子関係を破壊しかねない来園者のエサやり行為
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、日曜日に来園者が入場に長蛇の列 ~ 大人気のゲルダ親子
ロシア・西シベリア、ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、生後100日を超える
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんは雌(メス)と判明 ~ 赤ちゃんはシルカの妹だった!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの命名への同園の迷い ~ シルカ同様の過熱を恐れる同園
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子の近況 ~ ララ/アイラの多層的な親子関係と比較する
ロシア・ノヴォシビルスク動物園が赤ちゃん命名について沈黙状態 ~ 「シルカ事件」から学ばぬ同園
ロシア・ノヴォシビルスク動物園が赤ちゃんの性別を訂正発表! ~ 赤ちゃんは雄(オス)だった!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダお母さんと赤ちゃんの近況
by polarbearmaniac | 2016-04-20 00:30 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ロシア・西シベリア、セヴェル..
at 2017-06-22 23:00
ロシア・中部シベリアに記録的..
at 2017-06-21 18:30
アメリカ・フィラデルフィア動..
at 2017-06-20 23:50
デンマーク・オールボー動物園..
at 2017-06-19 22:00
オーストラリア・ゴールドコー..
at 2017-06-19 20:30
モスクワ動物園・ヴォロコラム..
at 2017-06-18 21:00
フランス・ミュルーズ動物園の..
at 2017-06-17 23:00
エストニア・タリン動物園の雄..
at 2017-06-16 23:55
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-06-15 23:55
ロシア・ウラル地方 ペルミ動..
at 2017-06-14 23:55

以前の記事

2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin