街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カザフスタン・アルマトイ動物園がモスクワ動物園主任獣医の診断に反発 ~ アリコルのX線検査は様子見へ

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アリコル (Белый медведь Алькор)
Photo(C)Алматинский зоопарк

昨夜に引き続いてカザフスタン・アルマトイ動物園における騒動の続報です。実はこれを動物はホッキョクグマだけを対象としている本ブログで扱うのはやや苦しいのですが、同園のホッキョクグマのアリコルにも一部関係していますので、それに引っ掛けて投稿しています。なにしろカザフスタンという国から発せられる動物園の情報は非常に少なく、そういったもののなかにホッキョクグマに関するものがあれば漏らさずに投稿しているわけですが、今回の件はアルマトイ動物園の抱えている大きな問題が関係していますので、ここでさらに詳しくご紹介しておいたほうがよいだろうと考えているからです。

一昨日の投稿で、モスクワ動物園の主任獣医であるミハイル・アリシネツキー氏が「アルマトイ動物園支援基金(Социальный фонд помощи алматинскому зоопарку)」の理事長である実業家のバタロフ氏の要請でアルマトイ動物園で現在健康状態が問題となっている動物たちの診断のためにアルマトイ動物園を訪問し、そして意見を述べたことを御紹介しています。現在問題となっている重病のアムールトラのクラライ(Куралай)についてアリシネツキー獣医は、病状が進行していてもう治療には手遅れとなっているため苦痛から解放してやるためにクラライを安楽死させることを提案しています。ホッキョクグマのアリコルの歯の状態については抜歯治療を行うかどうかはX線検査で判定したいという診断でした。



さてこのモスクワ動物園から出張してきたアリシネツキー獣医の診断についてアルマトイ動物園当局の反応ですが、副園長のアクバイ・アジバエフ(Акбай Ажибаев)氏はこのアリシネツキー獣医の診断に反発しています。「それはアリシネツキー氏の意見であり提案である。我々には我々の考え方があって、実際に動物たちの命のために奮闘しているのはあくまでも我々である。アリシネツキー氏は昨日やってきて動物たちを見ただけであるが我々は毎日問題の動物たちを見ているが、彼らの病状は我々の行っている治療で好転に向かっているのだ。」と語っています。ホッキョクグマのアリコルに対するX線検査も急がない方針だそうです。つまり、事実上は「やらない」ということなのでしょう。

こうしたアルマトイ動物園当局の反応はある意味では予想されたことでした。モスクワ動物園のアリシネツキー獣医はアルマトイ動物園が招聘したものではなく、あくまでも「アルマトイ動物園支援基金」の理事長であるバタロフ氏が個人的に連れてきて同園の動物たちを見ただけであり、その結果としてアリシネツキー獣医が何をアドバイスしようが、それに対して自分たちは従う義務などないということです。確かにこういう反発が生じてくるのも無理からぬところであり、基金の理事長であるバタロフ氏は事前に同園の園長に対してアリシネツキー獣医の訪問について理解を求め、そしてその診断を尊重してほしいという了解をとっていなかったのではないでしょうか。そういった根回しを行っていないと折角モスクワから獣医を連れてきても逆効果になってしまうのです。実に困った状況になってきたようです。

アルマトイ動物園は昨日になってSNSのページに以下のように現在のクラライの状態について報告しています。彼女の病状は好転しているということを示したいのでしょう。しかし私の見たところ檻の位置関係からして、これはクラライではなくて別のアムールトラだと思いますが。(*後記 - クラライは5月7日未明に死亡しました。アルマトイ動物園はやはり事実ではないことを言っていたということになるでしょう。)



実はこのアルマトイ動物園は重病となっているクラライについて十分な治療を行ってきたという形跡がないようで、これはあくまでも噂ですが祈祷師が呪術によってクラライの回復を祈って飲み水に呪術を施したりなどしていることもあったそうです。何かもう救いようのない気持ちになってきます。

同園を一昨日取材した記者によればホッキョクグマのアリコルは気持ちよさそうな表情で昼寝をしていたそうですから(下の写真)、彼に関してはまあそれほど心配する必要はないのかもしれません。
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昼寝をするアリコル Photo(C)ktk.kz

さて、このアルマトイ動物園は1998~99年にホッキョクグマの人工哺育に成功しているわけです。その時の赤ちゃんは現在チェコのブルノ動物園のあのコーラのパートナーであるウムカなのです。ですから決して飼育技術に劣っているという動物園ではないはずなのですが、今回のアムールトラのクラライの件についてはまったくいただけません。そしてこういった同園を取り巻く複雑な外部の状況も憂慮すべき点でしょう。カザフスタンもウクライナと同じく魑魅魍魎とした社会状況であることは間違いないのです。謎の実業家バタロフ氏は本当にアルマトイ動物園の救世主なのか、それとも策士なのかペテン師なのか、これも全くわかりません。

(資料)
Казахстанский портал NUR.KZ (May.5 2016 - В зоопарке Алматы не слушают московского врача и отказываются усыплять тигрицу)
Телеканал КТК (May.5 2016 - В Алматинском зоопарке не слушают московского специалиста и продолжают мучить Куралай)
informburo.kz (May.5 2016 - В алматинском зоопарке отказываются выполнять рекомендации московского ветеринара)
(*後記資料)
Tengrinews.kz (May.7 2016 - В Алматинском зоопарке умерла тигрица Куралай)
Zakon.kz (May.7 2016 - В зоопарке Алматы умерла тигрица Куралай)

(過去関連投稿)
カザフスタン・アルマトイ動物園、アリコルの独居の「孤独」
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カザフスタン・アルマトイ動物園のアリコル、抜歯治療はX線検査の結果次第とモスクワ動物園主任獣医が診断
by polarbearmaniac | 2016-05-06 01:00 | Polarbearology

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