街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

ロシア・ノヴォシビルスク動物園生まれの二頭 ~ シルカ vs オイゼビウス (Ойзебиус - 仮称)

a0151913_2115313.jpg
ゲルダお母さんとオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)
Photo(C)Виктора Шпакова

ロシア・西シベリアのノヴォシビルスク動物園で昨年12月7日に8歳のゲルダお母さんから誕生した雄の赤ちゃんのオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)については今まで多くの映像を御紹介してきました。昨年の繁殖シーズンに世界の動物園で誕生した赤ちゃんの映像ではこのノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの映像が突出して多いわけで、それは現地のファンの方々の関心の高さを物語っています。そして私がとりわけ素晴らしいと思うのは、そういった映像にはタイトル、あるいは当該映像サイトのページの記述欄に撮影された日が明記されているわけで、このことによって赤ちゃんの成長を追うための資料的価値を大きく高めていることです。

いくつもの映像があるのですが、私のもっぱらの関心はこのオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)とシルカとの違いといったことに集中しています。性別が異なるわけですから、その点でも極めて興味深い観察材料が提供されていると思っています。私が2年前にノヴォシビルスク動物園で観察した印象では、シルカというのは実に醒めた意識を持った怜悧なホッキョクグマだったわけで、母親であるゲルダとの間に一線を画した存在であったわけです。ところが今回のオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)についてはゲルダとの距離間隔はシルカよりも近く、そして自然な親子関係を形成しているように見えます。

現地で撮影されたいくつもの映像においてはこの今回の赤ちゃんとシルカとの比較という問題意識とは別の関心が示されているように思うわけですが、その中であえていくつかの映像をご覧いただきたいと思います。

今回はいずれも昨日撮影された映像を四つほどご紹介しておきます。例によって来園者から与えられるものを待つゲルダお母さんに対してオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)はそれに関心を持たずに母親に後ろからちょっかいをかけているシーンなどは非常に興味深いです。こういったことはシルカは全くと言ってよいほどやりませんでした。









シルカというのは幼いながらもゲルダお母さんにとっては「手ごわい」ライバルだったわけです。母親を冷静に見つめ、そしてその母親に対して自分が何かの働きかけを行うということについては慎重だったわけです。「賢さ」「聡明さ」というものが際立っていたのがシルカでした。そういった存在であったシルカに対してゲルダお母さんは心の中のどこかで脅威を感じていたように見えました。ゲルダとシルカとの間には、実は深いところである種の緊張関係が存在していたようにも感じたわけです。シルカに備わっていた醒めた意識と怜悧さにはどこかにある種の「悲しみ」が伴っていたわけで、シルカがゲルダから引き離された後に多くの同情を喚起させたのはそこにも理由があると私は思っています。そしてシルカは「豊饒な深み」と「黒光りする陰影」を湛えたホッキョクグマとして我々の前に現れたというわけです。ご参考までに以下の二つの投稿でご紹介したノヴォシビルスク動物園でのシルカの映像を再度ご覧下さい。

・シルカ(ノヴォシビルスク動物園)の2014年3,4月の成長を映像で追う ~ 親子関係変質の萌芽を探る

・シルカ(ノヴォシビルスク動物園)の2014年5,6,7月の成長を映像で追う ~ 一筋縄ではいかぬ親子関係

ところが今回のオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)は楽天的で明るく、そして屈託のない赤ちゃんのように見えます。ゲルダお母さんにとってこのオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)は「御しやすい」赤ちゃんであるように見えます。ですからゲルダお母さんにとってはシルカよりも育てるのは楽だと思っているはずです。私たちも彼を見ていると何か楽しいような気分になってきます。 

こういったことが今まで私がこの親子の映像を見て感じることなのですが、今年もノヴォシビルスク動物園を訪問する予定ですので、そこでの私の観察の主眼はシルカとオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)の徹底的な比較ということに絞られるでしょう。そこから、ホッキョクグマというものの「母親と娘」「母親と息子」との関係の違いをテーマにして考察してみたいと思っています。今回は腰を据えてもっと日数をかけて観察してこようと思っていますが、まだフライトは予約していません。いろいろとスケジュールを調整中です。

(過去関連投稿)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ やはり出産していたゲルダ!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの登場を待つ人々 ~ その時を親子の意思に委ねる度量
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、一瞬姿を見せる ~ 'authenticity' への視座
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんがゲルダお母さんと本日、初めて5分間だけ戸外に登場!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダ親子の「国際ホッキョクグマの日」
ロシア・ノヴォシビルスク動物園で誕生の赤ちゃんの「国際ホッキョクグマの日」の映像を追加
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの声を札幌のリラ、大阪のモモと比較する
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの性別予想に盛り上がる地元 ~ 雄(オス)の予想に高い支持
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子の近況 ~ 親子関係を破壊しかねない来園者のエサやり行為
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、日曜日に来園者が入場に長蛇の列 ~ 大人気のゲルダ親子
ロシア・西シベリア、ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、生後100日を超える
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんは雌(メス)と判明 ~ 赤ちゃんはシルカの妹だった!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃんの命名への同園の迷い ~ シルカ同様の過熱を恐れる同園
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダ親子の近況 ~ ララ/アイラの多層的な親子関係と比較する
ロシア・ノヴォシビルスク動物園が赤ちゃん命名について沈黙状態 ~ 「シルカ事件」から学ばぬ同園
ロシア・ノヴォシビルスク動物園が赤ちゃんの性別を訂正発表! ~ 赤ちゃんは雄(オス)だった!
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダお母さんと赤ちゃんの近況
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダお母さんとオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)のプール開き
ロシア・ノヴォシビルスク動物園の赤ちゃん、オイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)が泳ぎ始める

(2014年9月ノヴォシビルスク動物園訪問記)
◎2014年9月11日(木曜日)訪問
・モスクワからノヴォシビルスクへ ~ 肌寒い秋のシベリアの朝
・リバーパークホテルからノヴォシビルスク動物園へ ~ ホッキョクグマたちに御挨拶
・容姿端麗なゲルダお母さん、その娘への態度に見る子育て初体験の初々しさ ~ 育児スタイルを模索中
・シルカ、順調に成長を遂げるその素顔
◎2014年9月12日(金曜日)訪問
・ノヴォシビルスク動物園訪問二日目 ~ ゲルダお母さんとシルカの不安定な関係
・ゲルダの将来への道のりと課題 ~ 一頭の母親と一頭の雌の二役の演技の動機となっているもの
・シルカ、その聡明かつ醒めた知性が発散する魅力 ~ ミルク、マルル、ポロロを超える逸材か?
・クラーシン(カイ)の性格とその素顔 ~ 双子兄弟のピョートル(ロッシー)との違い
◎2014年9月13日(土曜日)訪問
ノヴォシビルスク動物園訪問三日目 ~ "Pour que Gerda et Shilka soient heureuse..."
シルカちゃん、ゲルダさん、クラーシン君、お元気で! そしてまた会う日まで!
by polarbearmaniac | 2016-05-18 23:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

ウクライナ・ムィコラーイウ動..
at 2017-03-25 13:00
ロシア北東部・サハ共和国、ヤ..
at 2017-03-24 15:00
ドイツ・ミュンヘン、ヘラブル..
at 2017-03-23 20:00
男鹿水族館のクルミと豪太のペ..
at 2017-03-22 23:30
ハンガリー・ブダペスト動物園..
at 2017-03-21 20:00
ロシア・ノヴォシビルスク動物..
at 2017-03-21 18:00
ロシア・ノヴォシビルスク市の..
at 2017-03-20 19:00
デンマーク・オールボー動物園..
at 2017-03-19 20:30
チェコ・ブルノ動物園の「国際..
at 2017-03-19 00:30
ドイツ・ミュンヘン、ヘラブル..
at 2017-03-18 11:00

以前の記事

2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin