街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダをシモーナと比較する ~ 母親と息子の実力は反比例?

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ゲルダお母さんとオイゼビウス(仮称)
Photo(C)Новосибирский зоопарк

ロシア・西シベリアのノヴォシビルスク動物園で昨年12月7日にゲルダお母さんから誕生した雄(オス)の赤ちゃんであるオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)の成長を追っています。幸いなことに現地の方が多くの映像を週末を中心として撮っていますので、そういった映像だけでもかなりのことがわかってくるわけです。しかし、量的観点からは非常に多いこういった映像を見る場合に、何かの切り口を設定してそれについて観察していくことが有意義だと思います。言い方を変えれば「テーマ」と「問題意識」を持つということです。前回は2013年12月に誕生したシルカとその2年後に誕生したオイゼビウス(仮称)との比較を行ったわけですが、今回は昨日5月22日の日曜日に撮影された映像を見ながら母親であるゲルダとモスクワ動物園のシモーナとの比較を行ってみることにします。似たようなシーンを選んでみました。
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シモーナと双子の子供たち(2015年8月8日撮影 於 モスクワ動物園)

まずそれは、何か大きなおもちゃを母親がどう取り扱い、そしてそのおもちゃを仲介として子供(たち)と、どのような親子関係を見せてくれるかという点に集中したいと思います。まずゲルダお母さんです。以下の二つの映像はおそらく一つの流れを二つの映像に分けて撮ったように思うわけですが、全体が一つでしたらもっとおもしろかったかもしれません。 さて、オイゼビウス(仮称)はやや退屈気味でゲルダお母さんに相手をしてほしいと思っている様子が見てとれます。プールの中には赤いブラスチックの容器の一部があり、ゲルダお母さんはそれを咥えて陸に上げます。



上のシーンに続く下の映像ですが、結局ゲルダお母さんはこの赤い容器には淡泊であり、オイゼビウス(仮称)もどうやって遊んだらよいのかがわからないというのが下のシーンです。



こうやって結局振出しに戻ってしまうわけです。 さて、この下はモスクワ動物園での2015年8月の映像です。母親であるシモーナはやはりプールの中に会ったプラスチック容器の一部を咥えて陸に上げます。そして自らその容器の一部を使って遊び始めるというシーンです。



上の映像のシモーナが先の映像のゲルダと異なるのは、母親がおもちゃとなる容器の一部を相手にして遊ぶかどうかという違いです。次の二つの映像は2012年9月の映像で、やはりシモーナです。やや退屈気味であった子供たちの前でプールにあったブラスチックの板のようなもので遊び始め、そして子供たちもそれに引き付けられ始めるわけです。



こうして子供たちは自然に「遊び(Jeux)」の世界に入っていくわけです。こうして下のシーンではシモーナは自分も子供たちの遊びに、さらに自らも加わっていくというシーンです。



こうやって比較してみますとゲルダとシモーナの違いは、母親自らの「遊び(Jeux)」が自分だけのために遊びを意味するのか、あるいは子供たちを誘導する手段としての遊びを意味しているのかという違いなのです。こうして映像を振り返ってみるとシモーナというホッキョクグマはいかに天性の母親であるのかがよくわかると思います。ゲルダの場合は、あくまでも5月22日の映像だけを利用しての比較ですので完全にそうだとは言い切れませんが、しかし彼女はこの点で「母親」という役回りには何か一貫していない不十分さ、あるいは淡泊さを感じさせます。一般的によく写真などで母親が子供を抱きかかえているシーンが撮影されると、いかにもそれは親子の愛情といったもので理解されやすいわけですが、実は「母親らしさ」というものは母親と子供たちとの行動がどういう位置関係、力学、役割といった構造のなかで発揮されているかどうかが問題なのです。要はそれを見抜く人間の側の理解力と洞察力の濃淡が問題だといって過言ではありません。
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シモーナ(2015年8月7日撮影 於 モスクワ動物園)

さて、こうして上の三つの映像でシモーナが2011年、2014年に産んだ合計5頭の子供たちの姿も見ていただいたわけですが、この5頭のうち雄(オス)は3頭です。ところがゲルダが昨年12月に産んだこのオイゼビウス(仮称)はシモーナの産んだ上の映像の3頭の息子たちよりも優れた個体であるように私には感じます。人間の場合は男の子が優秀になるかどうかは全て母親にかかっているのです。ところがホッキョクグマの場合は、そうとは言い切れない場合がいくつもあると思うわけです。こういうことを書くとまた問題ですが、母親として能力も力量もシモーナとゲルダでは相当の開きがあるのは明らかです。ところが、彼女たちの息子を比較してみるとこれが反対となっているように思います。いつかも書きましたが札幌のララは男の子よりも女の子を育てる方が得意なのです。モスクワのシモーナも同様でしょう。ところがゲルダはどうもその逆のように感じます。
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ゲルダお母さんとオイゼビウス(仮称)
Photo(C)Новосибирский зоопарк

さて、このオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)はいつまでたっても名前が決まらないようです。ノヴォシビルスク動物園はこの赤ちゃんの命名に関することは公式には沈黙したままですが、今回はモスクワ動物園流に赤ちゃんに名前を付けない方針なのかもしれません。モスクワ動物園というのは、飼育員さんは赤ちゃんたちにはニックネームを付けるのですが正式な名前を付けずに血統登録も名前無しで登録する場合が非常に多いわけです。モスクワ動物園で生まれた赤ちゃんたちは他園に売却されることがほとんどでしたので、正式な名前は移動先で付けてもらえばよいという考え方です。旭山動物園のイワンという名前は、もともと飼育員さんの付けたニックネームだったそうですが、いつのまにか正式な名前になってしまったわけです。一方で同じロシアでもレニングラード動物園は必ず赤ちゃんに正式な名前を付け、そしてその名前で血統登録するわけです。このノヴォシビルスク動物園の今回の赤ちゃんのオイゼビウス(仮称)が正式に命名されるとすれば、下馬評の候補のうち雄の名前の「ロスチク(Ростик)」「シビリャーク(Сибиряк)」「スネジョーク(Снежок)」などかもしれません。あるいは単に「ミーシャ(Миша)」というのも有力でしょう。

(過去関連投稿)
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ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダお母さんと赤ちゃんの近況
ロシア・ノヴォシビルスク動物園、ゲルダお母さんとオイゼビウス(Ойзебиус - 仮称)のプール開き
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(*シモーナ関連)
モスクワ動物園のシモーナ(1) ~ 偉大なる母の娘、やはり偉大なる母となる!
モスクワ動物園のシモーナ(2) ~ その初産への道のり
モスクワ動物園のシモーナ(3) ~ 豊かなる母性の輝き
モスクワ動物園のシモーナ(4) ~ 消息不明の息子は何処に? (上)
モスクワ動物園のシモーナ(5) ~ 消息不明の息子は何処に? (中)
モスクワ動物園のシモーナ(6) ~ 消息不明の息子は何処に? (下)
ホッキョクグマ親子達の昼寝姿 (3) ~ シモーナ親子
シモーナの夏の日の午後 ~ くつろいだ日常の姿
シモーナ、その姿の変わらぬ端麗さ
モスクワ動物園の「良妻賢母」シモーナ ~ 母親のウスラーダに似た顔立ち
秋の日のモスクワ動物園のシモーナとウランゲリ ~ 再び期待されるこのペアの繁殖
モスクワ動物園のシモーナの夏
モスクワ動物園のシモーナとウランゲリ、冬の日の同居映像
モスクワ動物園のシモーナ、その日常の姿(1) ~ 遠征での映像より
モスクワ動物園のシモーナ、その日常の姿(2) ~ 遠征での映像より「情愛型」 と 「理性型」、「対象関与型」 と 「対象非関与型」 のそれぞれの母親像の違いを探る
クルミお母さんの母親像を再度考える ~ 「求心性」、「非求心性」の第三の座標軸から見えてくること
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女帝ウスラーダとシモーナ、コーラ、リアの三頭の娘たち ~ 偉大な母親たちの三代の系譜
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シモーナ(Белая медведица Симона)、偉大なる母親としてのその素顔
by polarbearmaniac | 2016-05-23 06:00 | Polarbearology

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