街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ホッキョクグマ繁殖計画とバフィン母娘の浜松移動(帰還)、そしてシルカ来日との関係

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バフィンとモモ (2015年11月22日撮影)

毎日新聞の静岡地方版の本日付け(5月24日)記事の中でちょっと気にかかる文言がありました。こう述べています。

>バフィンは、国内8施設の間で5頭を移動させてペアを作るホッキョクグマ繁殖プロジェクトで、2011年3月、浜松市動物園から天王寺動物園に引っ越し。雄の「ゴーゴ」との間で14年11月にモモを出産した。今回は繁殖計画の一環で娘と一緒に帰ってくる。

この記事でバフィンの大阪への移動の根拠に「ホッキョクグマ繁殖プロジェクト」を挙げているのは正に的確で、今までのいくつかの報道ではこの「ホッキョクグマ繁殖プロジェクト」を明確に挙げていない報道もあったわけです。さて、その次です。「今回は繁殖計画の一環で娘と一緒に帰ってくる。」と書かれているのですが、これが問題です。バフィン(母娘)が浜松に移動(or 帰還)するのは、これは繁殖計画(つまり「ホッキョクグマ繁殖プロジェクト」)とは関係がないはずです。「ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明 (2011 年2 月18 日)」(以下、「共同声明2011」と略記)は、繁殖のためにバフィンが大阪に移動することは述べていますが、「帰還」についてまでは触れていません。「帰還」というのはあくまでも「繁殖を目的とした貸借契約」(つまりBL)の契約終了に伴う「原状回復」を意味し、繁殖計画自体と直接の関係はないわけです。つまり「共同声明2011」は「繁殖に成功したら(or しなかったら)どうするか」までは述べていないわけです。しかし上の毎日新聞の述べる「繁殖計画」が「共同声明2011」とは別の計画を意味しているとすれば、様相は一転するわけです。一般には公表されていない「繁殖計画」が存在している可能性は十分あり得るのです。ただし私はそれには否定的です。それは以下のような状況から言えると考えられます。





以下の事実をどう考えてみるかということです。昨年2015年9月の「『ホッキョクグマ計画推進会議(於 恩賜上野動物園)』について ~ 『ツヨシ問題』の行方や如何 」という投稿をご参照頂きたいのですが、昨年9月15,16日の両日に上野動物園で開催された「ホッキョクグマ計画推進会議」です。これは天王寺動物園の担当者の方の述べている内容からしますと、日本でホッキョクグマを飼育している動物園(その他)の担当者、そして種別調整者の集まった会議だったことは間違いありません。そこで今後の日本でのホッキョウグマの繁殖についても話し合われたことも間違いないと思われます。ところがこの会議に出席した天王寺動物園の担当者の方は驚くべきことにスタッフブログの2016年4月22日の記載で、モモが誕生してしばらくしてシルカが来ると聞いてシルカとバフィン母娘の両方をどう飼育していくかに腐心したという内容を述べていらっしゃるわけです。「ホッキョクグマ計画推進会議」のメンバーだったこの担当者の方すら、シルカの来園については寝耳に水だったということを意味します。
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シルカ(2015年12月19日撮影 於 天王寺動物園)

私がロシア側から得た情報ではシルカの大阪行きが完全に100%決定したのは2015年2月4日です。この日付に間違いはありません。ですから天王寺動物園の担当者の方がシルカの来園を知らされたのは翌日の2015年2月5日、つまりモモの誕生から約二カ月半が経過した時点だったとみて間違いないでしょう。しかし大阪市(とスポンサー)がシルカ入手の交渉をノヴォシビルスク動物園と開始したのは諸般の情報では2014年の6月、もしくは7月頃だったわけです。初期の段階では私が得た情報ではシルカの入手を狙ったもう一つの日本の動物園があったわけです。こうしてシルカの入手を希望した複数の動物園があったにもかかわらず、この件(つまりシルカの導入計画)について9月に上野動物園で開催された第5回目の「ホッキョクグマ計画推進会議」の出席メンバーの方々は、前年2014年の時点ではこの件(つまりシルカの導入計画)について、まず誰も知らなかっただろうことは当時の状況から考えて間違いないと思われます。つまり「シルカ導入計画」は園の最上層部だけが知っていた話であり、日本のホッキョクグマの繁殖について考えて開催されていた「ホッキョクグマ計画推進会議」の討議内容とは無関係に進行していたことを強く示唆しています。
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バフィンとモモ(2015年12月19日撮影)

これ以上は述べないことにしますが、やはり園の最上層部、そして中間管理職、そして担当者の三つのレベルでの「風通し」が良ければ良いほど、ホッキョクグマの繁殖計画の有効性は増すように思います。「自分の勤務している園は、どういう血統のどういうホッキョクグマをどこから入手しようとしているか」を「ホッキョクグマ計画推進会議」の場で情報を共有する必要があるわけですが、この場合、園の最上層部、中間管理職は担当者に十分の情報を開示しておいたほうが繁殖計画の効率性はより増すはずです。私が心配しているのは札幌・円山動物園です。海外から個体を導入したり、あるいは交換交渉をしようという場合に、担当飼育員さん、中間管理職、最上層部にしっかり意思疎通と情報(特に導入希望個体の血統問題)を共有していただき、それをさらに「ホッキョクグマ計画推進会議」の場で各園の担当者の方々とも共有していただきたいと思います。海外(つまりおおむねロシア)の特定の個体を導入しようとして日本の二つの動物園がバッティングすることは避けるほうがよいわけです。そうしませんと繁殖計画は効率的に作用しないわけです。

(*追記)欧州の動物園は赤ちゃんが生まれる前からもうその動物園と接触を持つ場合すらあるわけです。「雌の入手を求めてペルミ動物園を訪問したベルリン動物園のブラスキエヴィッツ園長」という投稿をご参照下さい。ブラスキエヴィッツ園長は当時欧州には一頭も存在していなかったアンデルマの息子や娘の入手を、その生まれる前から狙っていたわけです(ニュルンベルク動物園のヴェラはアンデルマの曾孫でしたが、それ以外に当時はアンデルマと血の繋がりのある個体はいませんでした)。血統面を完全に把握して動いていたわけです。

(資料)
毎日新聞 (May.24 2016 - バフィン、モモ母娘が来月13日到着 繁殖計画参加、浜松市動物園に)
ホッキョクグマ繁殖プロジェクト共同声明  (2011 年)2 月18 日)
天王寺動物園スタッフブログ (Sep.16 2015 - ホッキョクグマ計画推進会議) (Apr.22 2016 - バフィンとモモ6月中に浜松市動物園へ帰ります。)

(過去関連投稿)
・「ホッキョクグマ計画推進会議(於 恩賜上野動物園)」について ~ 「ツヨシ問題」の行方や如何
・ロシア・ノヴォシビルスク動物園のシルカの入手を狙う日本の動物園 ~ 売却金額は三千万円前後か?
・ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとシルカの母娘が本日突然永遠の別れ ~ ゲルダお母さんの動揺
・ロシア・ノヴォシビルスク動物園で別離したゲルダお母さんと娘のシルカの近況 ~ 母娘共に依然として動揺
・ロシア、ノヴォシビルスク動物園のシルカの今春来日が決定的! ~ 日本の動物園との契約の締結が完了
・ロシア・ノヴォシビルスク動物園のシルカが大阪・天王寺動物園へ! ~ 「ロシア血統の闇」の深淵を覗く
・ロシア・ノヴォシビルスク動物園のシルカ (Шилка Красиновна) の偉大で華麗な血族たち
・「ロシア血統の謎」に迫る(1) ~ ラスプーチン、ゲルダ、血統番号2893個体の三頭の謎を追う
・"Polar Bear of the Year (2015)" in Japan
by polarbearmaniac | 2016-05-24 23:00 | Polarbearology

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