街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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エストニア・タリン動物園のノルトの軌跡 ~ 偉大なる雄への階段を登る

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タリン動物園のノルト(2014年) Photo(C)Sven Arbet/MAALEHT
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ノヴォシビルスク動物園時代のノルト(2003年) Image:youtube

エストニア・タリン動物園の現在14歳のノルト(Nord)と言えば、今では旧ソ連圏では押しも押されもせぬ雄のホッキョクグマです。彼はエストニアという旧ソ連圏にあっては珍しい西欧生まれのホッキョクグマですが、彼は2001年11月24日にウィーンのシェーンブルン動物園に生まれており、彼の父親はオランダ・ロッテルダム動物園で疾駆されていたエリックです。つまりノルトは鹿児島・平川動物公園の故ホクトの甥にあたることになります。

さて、私は実はこのノルトにモスクワ動物園で会ったことがあります。2008年の秋でしたが彼はあのウランゲリと同居していたのですが、ウランゲリに押されっぱなしという状態で飼育展示場で与えられた給餌もウランゲリに奪われていたという状態でした。このノルトは実はモスクワ動物園に来る前はシルカの生まれたあのノヴォシビルスク動物園で2003年の4月から約5年半暮らしていたわけです。そのノルトのノヴォシビルスク動物園時代の貴重な映像がネット上に存在していますので下でご覧いただきたいと思います。これは2002年、2003年、2004年にノヴォシビルスク動物園内を撮影したやや長い映像の一部を抽出したものです。体の大きさから考えて前半は2003年、後半は2004年の映像と考えて間違いないでしょう。



さて、こうしてノヴォシビルスク動物園で暮らしていたノルトですが、2008年の10月にモスクワ動物園に移動し、そして短期間同園で展示されたものの彼は同園附属のヴォロコラムスク保護施設に移動し、そして2009年4月にエストニアのタリン動物園にやってきたというわけです。タリン動物園では2007年9月に飼育していた雄のフランツが不幸な死を遂げ(「エストニア・タリン動物園の気骨のホッキョクグマ、フランツの非業の死 ~ 待ち望まれる新施設」という投稿を御参照下さい)、雄のホッキョクグマがいなくなってしまったわけです。タリン動物園はどうしても雄のホッキョクグマを導入する必要に迫られ、導入希望の話をモスクワ動物園に持って行ったようです。タリン動物園に残されたのは二頭の雌である当時22歳のヴァイダと彼女の娘である当時4歳のフリーダでしたが、この二頭の繁殖のためのパートナーという意味合いも、もちろん非常に大きかったわけです。そしてモスクワ動物園は自分たちが権利を有していたノヴォシビルスク動物園のノルトをタリン動物園に移動させることにしたわけでした。

このノルトは2009年4月初旬にモスクワ動物園の付属施設であるヴォロクラムスク保護施設から陸路タリン動物園に輸送されました。移動に用いられたのはタリン動物園の車両です。ロシアや旧ソ連圏の動物園の多くはこうしてホッキョクグマを陸路で移動させるときは自園の車両を用いる点で日本の動物園のホッキョクグマの移動とは異なっています。日本では日本通運のような外部の運送会社にトラックを仕立ててもらうわけで、そうすると運送費用は非常に高くなるわけですがロシアや旧ソ連圏の動物園は自園で保持している車両を使いますので費用面では大きなメリットがあるということです。モスクワ動物園の付属施設であるヴォロコラムスク保護施設からのノルトの出発を報じるエストニアのTVニュース映像を御紹介しておきます。



さて、こうしてタリン動物園に到着したノルトですが、二週間ほどで当時23歳になっていたヴァイダとの同居の試みが行われ、この二頭はなかなか相性が良かったようです。以下がその時の写真で左がヴァイダ、右がノルトです。
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Photo(C)Sven Arbet/ Maaleht.ee

しかしこのタリン動物園で待望の繁殖成功の結果が出たのはヴァイダの娘であるフリーダとノルトの間でのことでした。何年からノルトのパートナーがヴァイダからフリーダに変わったかですが、遅くともそれは2012年の繫殖シーズン、つまりヴァイダが27歳、フリーダが9歳となっていた頃からだろうと推定されます。この下のTVニュースの映像は2013年2月の「国際ホッキョクグマの日」のノルトとフリーダのTVニュースの映像ですが、いくら食べ物の取り合いといってもこれはやや険悪な雰囲気に見えます。



しかしこの年2013年11月24日にフリーダとノルトとの間で誕生したのが雌のノラだったということです。相性というものを判断するのは難しいですね。
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ノルト Photo(C)Madis Kallas/Delfi

こうして現在14歳のノルトは偉大な雄としての地位を築きつつあるということです。

(資料)
Delfi
(Mar.16 2009 - Moskva jääkaru õnnistab Tallinna emasloomi)
(Apr.9 2009 - Moskva kingitud jääkaru saabub peagi Tallinna)
(Apr.9 2009 - Jääkaru Nord alustas Moskva loomaaiast teekonda Tallinnasse)
(Apr.9 2009 - Vaata, kuidas jääkaru Nord Tallinna saabus)
(Apr.10 2009 - jääkaru Nord tutvub Tallinna loomaaiaga)
(Apr.11 2009 - Moskvast jõudis kaubikukastis Tallinna loomaaeda seitsemeaastane jääkaru Nord)
(Apr.11 2009 - loomaaed sai uue jääkaru)
(Apr.22 2009 - uus paar loomaaias - jääkarud Nord ja Vaida)
(May.5 2009 - Loomaaed alustab suvehooaega)
(Feb.26 2016 - Tallinna loomaaed kutsub homsel jääkarupäeval jääkarusid uudistama ja pakub toredaid üritusi)
Postimees (Mar.2 2016 - Tallinna loomaaed kuulutas välja joonistusvõistluse)
ERR
(Apr.9 2009 - Jääkaru Nord alustas teed Eestisse)
(Mar.16 2013 - Tallinna loomaaias oli jääkarupäev)

(過去関連投稿)
エストニア・タリン動物園の気骨のホッキョクグマ、フランツの非業の死 ~ 待ち望まれる新施設
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by polarbearmaniac | 2016-06-07 21:00 | Polarbearology

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