街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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大阪・天王寺動物園がシルカへの今後の方針を示す ~ 「ホッキョクグマが楽しければ来園者も楽しくなる」

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シルカ (Белая медведица Шилка)
(2015年12月12日撮影 於 天王寺動物園)


昨日6月18日に大阪の天王寺動物園でシルカの小さなイベントが開催されたそうです。担当飼育員さんがシルカについて今後どのように飼育していくかという方針を説明するというのが最も重要な目的だったようです。つい先日「大阪・天王寺動物園で終日展示となったシルカ ~ 担当飼育員さんとの新しい関係の構築はなるか?」という投稿をしましたので、突然開催が発表されたこのイベントは結果的には実にタイムリーなイベントだったと思います。シルカの映像を見ていただきましょうか。



ちょっと意外に思ったのは担当者の方が「バフィンとモモがいなくなったらホッキョクグマ舎のお客様が減った。」と言われていることですが、そういう予想を私はできませんでした。私の感じではシルカは十分にバフィン親子の存在に「対抗」してきたと思っているからです。このシルカというのは今まで日本のホッキョクグマ界にはほとんどいないようなタイプのホッキョクグマである点でも、私は魅力十分だと思っています。

さて、担当飼育員さんがブログでも書いていらっしゃいますが、まずシルカについて以下のような認識が明らかにされています。

・お客様が多くなる時 ⇒ 遊んでいる時やおやつを食べている時
・お客様が少なくなる時 ⇒ 常同行動をしている時

つまりここから読み取れる最も重要なことは「常同行動をさせない」という方針の維持です。これについては先日、「大阪・天王寺動物園で終日展示となったシルカ ~ 担当飼育員さんとの新しい関係の構築はなるか?」という投稿でも述べた通りです。そしてお客様を増やすためにエンリッチメントに取り組み、そしてホッキョクグマへの理解を深めてもらうと述べていらっしゃいますので、基本的にはエンリッチメントについては今まで通りの方針でシルカの飼育を続けるということのようです。おそらくこれが正しいやり方だろうと思います。「外部からの刺激」に頼らねばならない点にやや危険性が潜んでいるわけですが、これは今までシルカが育ってきた環境を考えれば止むを得ないことでしょう。また仮に方針を少し転換させていくにしても、もっと時間が必要だろうと思います。つまり、ノヴォシビルスク動物園というホッキョクグマと来園者との関係が世界でも稀な独特のものが存在している場所で育ったシルカというホッキョクグマをうまく飼育していくのにはかなりの工夫が必要であるということをも示しているわけです。

ホッキョクグマにおもちゃを与えることに必ずしも積極的ではない(なかった)動物園もあります。それは旭山動物園です。旭山動物園がエンリッチメントとおもちゃとの関係についてどういう見解を持っているのかは明らかにされていないように思いますし私もよく知りませんが、少なくとも旭山動物園ではそういうおもちゃがホッキョクグマに与えられていたという光景は極めて少ない(少なかった)と私は認識しています。おそらくそれは、繁殖を狙うホッキョクグマ(ルル、サツキ)にとってはおもちゃというものを与えることによって注意力と関心が別の方向に行ってしまうことが繁殖にはマイナスに作用するという可能性を考えている(考えていた)のかもしれません。あるいは、おもちゃは本来のホッキョクグマ(野生)には異質な存在であるという考え方が根底にある(あった)のかもしれません。

それはともかくとして、「ホッキョクグマが楽しければ来園者も楽しくなる」というのが天王寺動物園(の飼育員さん)の考え方の基本であると要約できるでしょう。いくらかの危険性を感じつつも、私もその考え方でよいだろうと思います。

(*注 - このシルカには日本で新しい名前が付いていますが、彼女のロシアでの誕生から成長、来日、そして日本でのこれからの生活を一貫して捉え、本ブログでは引き続き彼女の名前をシルカ - Шилка - で統一して記載するのを方針としています。)

(資料)
天王寺動物園スタッフブログ(Jun.18 2016 - 第一話

(過去関連投稿)
・シルカ (Шилка)、その印象の厚みと深さ ~ ララファミリーの個体の対極にある、ロシア的存在感
・シルカにとっての「おもちゃ」の意味するもの ~ その想像力を引き出す源泉
・師走の晴天の土曜日、とくしま動物園のポロロの快活な動き ~ 過不足無きエンリッチメントの充実さ
・ポロロの確固とした成長 ~ いったい本当の「勝者」は誰なのか?
・シルカ(Шилка)、その好奇心を駆り立てるもの ~ 多層的エンリッチメントの見事な成果
・シルカ (Шилка) の木曜日。光沢を持った柔らかさ ~ 「心で感じるホッキョクグマ」の魅力
・大阪・天王寺動物園で終日展示となったシルカ ~ 担当飼育員さんとの新しい関係の構築はなるか?
by polarbearmaniac | 2016-06-19 01:30 | Polarbearology

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