街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ポーランド・ワルシャワ動物園、5歳の双子のグレゴールとアレウトの将来、そして日本との関係を考える

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グレゴールとアレウト (Белый медведь Грегор и Алеут)
Photo(C)FAKT.pl

欧州のホッキョクグマ界で実に不可思議に思うことはいくつかあるわけですが、私に言わせればその筆頭が現在ポーランドのワルシャワ動物園(Warszawskie Zoo) で一緒に暮らしている5歳となっている雄(オス)の双子であるグレゴール(Gregor)とアレウト(Aleut)です。この雄の双子はいまだにパートナーが決まっていません。ホッキョクグマの繁殖に極めて熱心である、あの欧州のホッキョクグマ界においてはこれは極めて理解が難しい状況です。仮にこの双子がEAZAの繁殖計画に入っていないからだとすれば、何故入っていないかが問題なのです。
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グレゴールとアレウトの5歳の誕生会 
Photo(C)wyborcza.pl/Agencja Gazeta

この双子は2010年12月2日にドイツのニュルンベルク動物園でヴェラお母さん(モスクワ動物園のシモーナの娘であり旭川のイワンのすぐ下の妹)から誕生しています。私は2011年4月にこの双子に会うためにニュルンベルク動物園まで行ったわけで、その時の様子は過去関連投稿をご参照下さい。私の見たところこの双子には大きな性格の違いがあるように見えました。それは、ヴェラお母さんの授乳すら二頭が一緒に受けないというほどのものだったことが記憶に残っています。例えば札幌であのイコロとキロルの雄の双子が仮に一頭だけが授乳を受けもう一頭が離れた場所で遊んでいるというような光景を考えてみて下さい。そういったことは札幌では有り得なかったわけですがニュルンベルクでは現実にあったわけです。そして光景を説明するのはこの双子の性格の違い以外の要素は考えにくかったということです。このグレゴールとアレウトの成長、そしてワルシャワ動物園への移動、さらにワルシャワ動物園での暮らしについては全て過去関連投稿をご参照下さい。この双子も昨年2015年12月2日に満五歳の誕生日を迎えました。その誕生会の様子をワルシャワのTV局のニュース映像でご覧下さい。



氷のケーキなどいくつもの肉や野菜、果物などの好物のプレゼントがあったそうですが、この双子は争うこともなく分け合って食べていたそうです。上のニュース映像を見るとこの二頭の間には仕切りが存在しているかのようにも見えるのですが、当日撮影された別のマスコミの下の映像では二頭が一緒に映っていますのであれは仕切りではないようです。



また、今年1月の下の映像では二頭一緒の様子がはっきり映っていますので、この雄の双子はこの年齢となっても別飼育にはなっていないことは明らかです。



ちなみに、一昨年2014年12月の彼らの4歳の誕生会の様子をニュース映像でご紹介しておきます。



さて、欧州では幼年・若年個体をプールする集中基地システムが近年構築され、雄の個体はイギリスのヨークシャー野生動物公園、雌の個体はオランダのエメン動物園に移されて繁殖可能となる年齢まで飼育され、パートナーの組み合わせが決まってから別の動物園に移動させるという形がとられています。このグレゴールとアレウトがニュルンベルク動物園からワルシャワ動物園に移動した時点ではまだこの欧州の「集中プール基地システム」が構築されていなかったわけで、当時EAZAのコーディネーターはこの双子をニュルンベルク動物園からどの動物園に移すかについて非常な苦心をしたようです。結局のところ欧州におけるホッキョクグマの飼育基準を満たさないワルシャワ動物園にこの二頭を移動せざるをえなくなったわけです。そもそもポーランドの動物園はこのワルシャワ動物園も含め、欧州におけるホッキョクグマの飼育基準を満たしていないためにホッキョクグマの飼育を断念せざるを得なくなってしまったという経緯があるのですが、そういった規準を満たさないワルシャワ動物園にグレゴールとアレウトを移動させざるを得なくなってしまったのは皮肉な話です。
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グレゴールとアレウトの5歳の誕生会 Photo(C)FAKT.pl

今になってみれば、このグレゴールとアレウトが飼育されているワルシャワ動物園は欧州における雄の集中プール基地であるヨークシャー野生動物公園の機能の一部を先取りして肩代わりしているのだと理解するとすれば、現在この双子が置かれている不可思議な状況を理解することは一応は可能でしょう。仮に状況をそう理解するとすれば、この双子は年内、あるいは来年中にでもパートナーが決まってワルシャワ動物園から旅立っていくことになるでしょう。実は私は昨年一つの投稿を行っています。それは、「ポーランド・ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウトの近況 ~ 「汝ラ札幌ニ来タモウコトナカレ」」という投稿です。その投稿を是非ご参照頂きたいのですが、仮にグレゴールとアレウトのどちらか一頭が日本に来たとすると(つまりアイラ、あるいはマルル、ポロロのパートナーとなることを意味します)、少なくともアイラ、マルル、ポロロの一頭は欧州に移動するわけです。となると、少なくとも現時点においてはマニトバ規準、EAZAの規準を満たしていない円山動物園が所有している雌の個体は同じように基準を満たしていないワルシャワ動物園に移動してグレゴールとアレウトのうち欧州に残ったどちらか一頭とペアになる......これは想定可能ですね。つまり基準を満たしていない動物園(札幌、帯広、熊本、徳島)から来た個体を欧州が受け入れるならば、同じく欧州内で基準を満たしていない動物園、つまりワルシャワ動物園でグレゴールとアレウトのどちらか一頭と繁殖を狙わせればよい.....そうEAZAのコーディネーターが考えることは十分想定は可能なのです。となれば、EAZAはWAZA経由でJAZAを通じて円山動物園に対して、グレゴールとアレウトの権利を有するドイツのニュルンベルク動物園と交渉してほしいという連絡があるはずです。もし仮にここまでいったとすれば円山動物園とニュルンベルク動物園との間の交渉は成立する可能性は大きいかもしれません。何故なら、EAZAのコーディネーターが事前にニュルンベルク動物園に対して日本の個体との交換候補としてグレゴールとアレウトをノミネートする話をニュルンベルク動物園に持ち込んで同園の了解を得た上で日本サイドにニュルンベルク動物園の名前を交渉すべき相手として円山動物園に提示してくるであろうという予想がつくからです。 となると、アイラ、マルル、ポロロのうち一頭の移動先はワルシャワ動物園である.....そういう想定は可能かもしれないということです。(*追記 - 例の太地町のイルカ猟の問題でJAZAがWAZAから改善・除名通告を受けWAZAの加盟継続の賛否を問う会員投票がJAZAで行われようとしていた時期に、当時の円山動物園の園長さんはTVのインタビューに答えて、「脱退したら当園は非常に困る。」と狼狽しながらも強く発言した背景には、仮にJAZAがWAZAから脱退すれば、WAZAの仲立ちにした円山動物園のEAZAとのホッキョクグマの個体交換構想が崩壊する危険性があったためです。その際の発言で「個体導入」と言っていたか「個体交換」と言っていたかについて私の記憶は定かではありません。ただし、明らかにホッキョクグマについて念頭に置いていた表現のあった発言であったことを私は記憶しています。)
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グレゴールとアレウト Photo(C)FAKT.pl

しかしそういった想定以前の問題として、私は円山動物園の自園所有の雌の個体と欧州の雄の個体の交換構想は実現しないだろうと考えています。この交換構想そのものは実に素晴らしいアイディアであり私はその構想自体は大いに支持しますが、しかしこれを実現する戦略が欠けていると思っています。その原因は欧州事情に関する情報収集があまりなされていないことだろうと思っています。しかしそれ以上に、現在はホッキョクグマの飼育・繁殖には「地域ブロック化」された意識が根強く存在しているわけです。そしてそもそも、日本側は自分たちの投げたボールは現在は欧州側のコートにあると思っていても欧州側はボールが自分たちのコートに投げられているとは認識していないでしょう。
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グレゴールとアレウト Photo(C)FAKT.pl

ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウトの今後については十分注目して行きたいと思っています。

(資料)
teleexpress (Dec.2 2015 - Warszawskie niedźwiedzie świętują urodziny)
FAKT.pl (Dec.2 2015 - Huczna impreza w zoo. Misie kończą 5 lat!)
Radio Dla Ciebie (Dec.2 2015 - Niedźwiedzie polarne z warszawskiego ZOO obchodzą piąte urodziny)
Radio Eska (Nov.27 2015 - Zoo: Warszawskie niedźwiedzie skończą 5 lat) (Dec.2 2015 - Warszawskie ZOO: Ali i Gregor skończyli 5 lat. Ogród uczcił urodziny niedźwiedzi)
WawaLove (May.30 2016 - Zwierzęta z ZOO bawią się
prezentami od warszawiaków!
)
Gazeta Wyborcza (Jun.27 2016 - Zoo w Warszawie. Kolejny dzień zabawek. Tym razem dostaną je lemury i kapucynki)
カナダ・マニトバ州 「ホッキョクグマ保護法」 - Manitoba ‘Polar Bear Protection Act’ (PBPA, 2002)
カナダ・マニトバ州 「ホッキョクグマ保護法」・ホッキョクグマ保護規定 (通称「マニトバ基準」) - Polar Bear Protection Regulation)

(過去関連投稿)
ドイツ・ニュルンベルク動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生!
ドイツ・ニュルンベルク動物園の生後6週目に入った赤ちゃんの映像
ドイツ・ニュルンベルク動物園、育児に奮闘中のヴェラお母さんに遂に食事を与える
ドイツ・ニュルンベルク動物園の双子の赤ちゃんの性別判明 ~ グレゴールとアロイトの予防接種
ドイツ・ニュルンベルク動物園の双子の赤ちゃん、遂に戸外へ!
ドイツ・ニュルンベルク動物園のグレゴールとアレウトの最近の様子 ~ ヴェラお母さんにも変化の兆し?
ドイツ・ニュルンベルク動物園のグレゴールとアレウトの双子の移動先調整にEAZAが難航?
ポーランド ・ ヴロツワフ動物園のシニェシュカとの告別 ~ 最初で最後のホッキョクグマとの別れの哀感
ドイツ・ニュルンベルク動物園の双子の兄弟、グレゴールとアレウトがポーランド・ワルシャワ動物園へ!
ポーランド・ワルシャワ動物園に到着したグレゴールとアレウトの双子兄弟の近況
ポーランド・ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウト ~ 飼育環境の改善への期待と同園の今後の役割
ポーランド・ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウトの近況 ~ パートナー獲得の見込みはあるか?
ポーランド・ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウトの双子が四歳となる ~ 進まぬ新施設建設計画
ポーランド・ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウトの近況 ~ 「汝ラ札幌ニ来タモウコトナカレ」
(ニュルンベルク動物園関連)
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(1) ~ ヴィルマとヴェラの出産
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(2) ~ 消えた赤ちゃん
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(3) ~ ヴェラの狂気
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(4) ~ 赤ちゃん救出劇
ドイツ・ニュルンベルク動物園の2つの選択(5) ~ 安楽死/人工哺育是非論への視座
(2011年4月 ニュルンベルク動物園訪問記)
ニュルンベルク動物園到着!
フェリックスさん、はじめまして!
ヴェラお母さんの性格と子育て
グレゴールとアレウトの双子の性格の差
グレゴールとアレウトのお昼寝の時間
ヴェラお母さんの食べる物は全部欲しがるグレゴールとアレウト
by polarbearmaniac | 2016-06-29 00:30 | Polarbearology

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