街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ノヴォシビルスク動物園の当時6歳だったゲルダが嫉妬し脅威に感じた娘シルカの怜悧さ

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ゲルダとシルカ(Белая медведица Герда и медвежонок
Шилка)
(以下、全て2014年9月11日 ノヴォシビルスク動物園)

最近、ノヴォシビルスク動物園のゲルダが将来のライバルとして前回の出産で産んだ娘のシルカ(現 大阪・天王寺動物園)を脅威を感じていたというような記述を私は行っていますが、その典型的な一例をご説明しておきたいと考えます。それは2014年9月11日の現地ノヴォシビルスクでの投稿でも触れたのですが旅先のことでもあり詳しくは述べる余裕がなかったわけです。写真と映像を時系列的に並べてみることとします。
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小雨の降って肌寒い来園者の非常に少ない平日に突然現れた私を見つめるゲルダお母さん。つまりゲルダお母さんは私から何かエサを投げてもらいたいわけで、こうして期待して待っているわけです。(*追記 - ノヴォシビルスク動物園では来園者は園指定のものならばホッキョクグマにエサを投げ入れることを認めているわけです。「ロシア橋北地域で働く人々とホッキョクグマの不思議な関係 ~ 「蜂蜜(мёд)を食べるお方」への敬意」という投稿を御参照下さい。)
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当然シルカも私に期待していたのですが、「どうもこの人は何もくれそうにないな。」と諦め始めてしまうのです。私はもちろん、動物園で動物たちにエサを投げ入れることなど考えたこともありません。そういったことをシルカはいち早く私から感じ取ったのでしょう。
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しかしゲルダお母さんは諦めずにまだ私を見ているわけです。「早く私に何か下さいな.....」とでもいった感じでしょうか。
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シルカは当の昔に私を諦めてしまっているわけです。
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かなり時間が経ってようやくゲルダお母さんは私が何もくれないことをわかってきたようです。怪訝な表情になってきました。
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ゲルダお母さんがふと娘のシルカを見ると、娘のシルカは利口にもさっさと私から何かエサをもらうことを先に諦めてしまっていたわけです。それを見たゲルダお母さんは怒ったのです。
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つまりゲルダお母さんは娘のシルカのほうが先に私からエサをもらうことができないことを察していた、つまり自分よりも状況の判断(つまり、この人からはエサをもらえないと早く見抜くこと)に優れていたという娘の利口さという事実を見せつけられてゲルダお母さんは娘のシルカに嫉妬し、そして怒ったわけです。 ゲルダお母さんは娘のシルカに八つ当たりです。下の映像を是非ご覧下さい。ホッキョクグマの母親というのは、こうったように子供に向かっていくということは通常は決してしないものなのです。これをゲルダお母さんの若さと未熟さということで説明することも十分可能でしょう。

シルカの態度が気に入らないゲルダお母さん (Gerda the polar bear is getting angry at her female cub, Shilka, on Sep.11 2014 at Novosibirsk Zoo)

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いたく御立腹なゲルダお母さんなのです。ゲルダお母さんは腹いせにシルカの好きな白いポリタンクを取り上げて自分で遊び始めてしまうのです。つまり「私はお前なんかと遊ばなくても楽しいんだよ!」とゲルダお母さんは虚勢を張っているのです。しかし意地で遊んでいるために遊び方がぎこちないわけです。以下の映像でそういった様子をご覧ください。ただ茫然と母親を見つめているだけのシルカなのです。

シルカの好きなポリタンクを取り上げて腹いせに自分で遊ぶゲルダお母さん (Gerda the polar bear demonstrates her supremacy
over Shilka, by playing with Shilka's favorite toy, at Novosibirsk Zoo, on Sep.11 2014)


そういったゲルダお母さんの怒りが収まると、結局シルカは母親から孤立してしまうのです。
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シルカは何故ゲルダお母さんが怒ったのかが理解できません。

母親の怒りの理由を理解しないまま孤立してしまったシルカ (Shilka
the polar bear cub does not understand the reason of her mother's anger, at Novosibirsk Zoo, on sep.11 2014)


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ゲルダ (Белая медведица Герда)

このシルカの母親であるゲルダはこの時点でまだ6歳なのです。つまり母親としてだけではなく一頭の雌のホッキョクグマとしても意識や感情が完全に成熟していなかったと考えることは可能です。しかしそれよりももっとホッキョクグマの母親と娘との関係には、あることがきっかけで母親が娘に対して厳しく対応する時があることは間違いないと思います。こういった件については「ホッキョクグマの母娘の再会で何か起きるのか? ~ セシ、ヴィルマ、ピリカに冷水を浴びせた母親たち」という投稿をご参照下さい。こういった母親ゲルダと娘シルカとの親子関係の断面は、天王寺動物園で暮らしている現在のシルカを見ていてもあまり想像できないに違いありません。今回のゲルダの息子であるロスチクとゲルダとの関係はシルカとの関係のような微妙なバランスの上に存在している関係ではなく、もっとおおらかさを感じさせるものです。その理由がゲルダお母さんの育児経験に厚みが出てきたために生じたのか、それとも子供たちの性別によって生じているのかのどちらが正しいかについて確定的な結論を出すことは難しいわけです。 しかし現時点では私は前者が正しいように思っています。
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シルカ (Белый медвежонок Шилка)

現在は大阪・天王寺動物園で暮らしているシルカは「寂しがり屋」であるという言われ方が大阪でよくされるようですが、より正確に言えば、シルカの母親であったゲルダは娘であるシルカに愛情は持っていたものの、ゲルダはまだ母親として6歳という年齢によって未熟であり自分の娘に対する愛情をうまく表現し、そして的確に発揮できなかったことから、シルカは誰からでもよいからもっと自分に愛情を注いで欲しいと内心願うようになっていったホッキョクグマではないかというのが私の現時点での見方なのです。そして現在はそれが自分の担当飼育員さんにより大きく向かっているのではないかということです。徳島のポロロはおもちゃをくれる人ならばどの飼育員さんが現れても同じように喜ぶわけですが、大阪のシルカの場合は関心がもっと特定の個人(つまり担当飼育員さん)に向かう傾向が強いというのは、こういったノヴォシビルスク時代の母親との関係が影響しているように思うわけです。

ホッキョクグマの親子関係というのは実におもしろいのです。ホッキョクグマの母親は全て一頭一頭、その育児スタイル(子供に対する接し方)が違うのです。多くのホッキョクグマの親子に接すれば接するほど、ますますホッキョクグマの親子関係に興味が湧いてきます。

(以上、写真そして映像は全て2014年9月11日にロシア・ノヴォシビルスク動物園で撮影)

(過去関連投稿)
ロシア橋北地域で働く人々とホッキョクグマの不思議な関係 ~ 「蜂蜜(мёд)を食べるお方」への敬意
ロシア・ノヴォシビルスク動物園生まれの二頭 ~ シルカ vs オイゼビウス (Ойзебиус - 仮称)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダをシモーナと比較する ~ 母親と息子の実力は反比例?
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの成長 ~ シルカ/ゲルダとは非常に異なる親子関係
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとロスチク、その日常の姿 ~ 経験を積んだゲルダお母さん
(2014年9月ノヴォシビルスク動物園訪問記)
◎2014年9月11日(木曜日)訪問
・リバーパークホテルからノヴォシビルスク動物園へ ~ ホッキョクグマたちに御挨拶
・容姿端麗なゲルダお母さん、その娘への態度に見る子育て初体験の初々しさ ~ 育児スタイルを模索中
・シルカ、順調に成長を遂げるその素顔
◎2014年9月12日(金曜日)訪問
・ノヴォシビルスク動物園訪問二日目 ~ ゲルダお母さんとシルカの不安定な関係
・ゲルダの将来への道のりと課題 ~ 一頭の母親と一頭の雌の二役の演技の動機となっているもの
・シルカ、その聡明かつ醒めた知性が発散する魅力 ~ ミルク、マルル、ポロロを超える逸材か?
・クラーシン(カイ)の性格とその素顔 ~ 双子兄弟のピョートル(ロッシー)との違い
◎2014年9月13日(土曜日)訪問
ノヴォシビルスク動物園訪問三日目 ~ "Pour que Gerda et Shilka soient heureuse..."
シルカちゃん、ゲルダさん、クラーシン君、お元気で! そしてまた会う日まで!
by polarbearmaniac | 2016-07-16 06:00 | Polarbearology

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