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カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園の深慮遠謀 ~ エサクバクとミラクのダブル出産への挑戦

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雌のエサクバクとミラク、雄のエディ
Photo(C)Le Journal de Québec

カナダ・ケベック州のサンフェリシアン原生動物園 (Zoo sauvage de Saint-Félicien) といえば、あの2009年11月にエサクバク (Aisaqvak/Aisaqvaq) から誕生したタイガとガヌークの双子の成長の記録を大変鮮やかにネット上で公開した動物園として私の記憶に残っているわけですが、このエサクバクにはその後に2012年、2013年、2014年と三回にわたって繁殖に挑戦したものの期待された出産がなく、その責任は二番目に彼女のパートナーとなった雄のイレ (Yellé) にあったと考えられることはほぼ間違いなく、とうとう同園はエサクバクの三番目のパートナーとして当時15歳のケベック水族館のエディを二繁殖シーズンの出張ということで2015年3月にサンフェリシアン原生動物園に連れてきたというわけでした。

こうした一連のエサクバクの繁殖を目指す経緯の中で、同園にはデンマークのオールボー動物園から当時6歳になったばかりの雌のミラクが2014年12月に来園したということがあったわけです。ですから現在このサンフェリシアン原生動物園では13歳のエサクバクと7歳のミラクという、雌の二頭が繁殖を狙う体制になっています。 このエサクバクとミラクは現時点では雌二頭で同居しているようで、同園ではエンリッチメント(アンリシスマン - l'enrichissement)として下の映像のようなことが行われたそうです。箱の中に食べ物が隠されているといったわけです。



エサクバクは食べ物を独り占めしてしまい、ミラクはなかなか接近できないようです。次の映像ですが、ミラクは体を水の中に半分入れて涼んでいるようです。歩いているのはエサクバクです。



さてこのサンフェリシアン原生動物園ですがSNSでの最新の情報によりますと、エサクバクの三番目のパートナーとして同園にやってきた雄のエディはなんとケベック水族館に戻ってしまったそうで、再びイレが戻ってきてこのサンフェリシアン原生動物園の戸外のバックヤードで飼育されているようです。いったいこれはどうしたことかと思うわけですが、エサクバクとミラクの二頭が春にエディとの間で繁殖行為があったようで、この雌の二頭は年末に出産が期待されるという状況になったためにとりあえずエディの存在(気配や匂い)を無くしてしまおうということなのではないかと思われます。しかしそうはいっても今度は雄のイレが戻ってきているようですから、さほどの効果は期待できないでしょう。以下は今年の一月のミラクとエディの姿です。その時点ではまだ繁殖行為にまでは至っていなかったようです。



最近戻ってきたイレというのは実は欧州の「ロストック系」であり、そして欧州からやってきたミラクも「ロストック系」です。いずれも祖母と祖父はロストック動物園のヴィエナと故チャーチルであるわけで、仮に今年の年末にエサクバクもミラクも出産に成功しなかった場合、来年はいったいどうするつもりなのでしょうか? イレはミラクとはパートナーを組めず、エサクバクとイレとの間での繁殖挑戦はもうやってみてもほとんど意味がないように思うからです。となれば、また来年の春にケベック水族館からエディを連れてくるということなのでしょうか? 

しかし振り返って考えてみれば2015年3月にエサクバクの三番目のパートナーとしてケベック水族館のエディをサンフェリシアン原生動物園に出張させたのは、前年の12月に欧州から「ロストック系」のミラクが来園したのに合わせて同じ「ロストック系」のイレではなくケベック水族館のエディを連れてきたほうがエサクバクとイレの二頭を同時に一頭の雄とのペアリングを狙うことができるという利点を考えた戦略だったという考え方も可能かもしれません。

深慮遠謀のサンフェリシアン原生動物園ですが、果たして今年の年末にエサクバクとミラクのダブル出産はあるでしょうか? 見守っていきたいと考えます。

(*後記)昨年時点での報道ではエディは血統的に孤立している(つまり他の個体と血統的なつながりがない)ためにサンフェリシアン原生動物園に出張することになったと報じられています。やはりイレとミラクの「ロストック系」の血統の繋がりを回避することが第一の目的だったということです。)

(追記資料)
LE JOURNAL DE MONTRÉAL (Mar.12 2015 - Un échange de couples peu commun d'ours blancs pour favoriser la reproduction de l'espèce)

(過去関連投稿)
(*エサクバク関連)
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(*ミラク関連)
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by polarbearmaniac | 2016-07-27 22:00 | Polarbearology

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