街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ノヴォシビルスク動物園のロスチクの成長 ~ 「シルカの物語」を乗り越えられるか?

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ロスチク (Белый медвежонок Ростик)
Photo(C)Новосибирский зоопарк
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シルカ (Белый медвежонок Шилка)
(2014年9月12日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)

ロシアのノヴォシビルスク動物園で昨年12月7日に8歳のゲルダお母さんから誕生した雄のロスチク (Ростик) の成長を地元のファンの方々が大変に丹念に映像で記録し続けています。世界の動物園で誕生したホッキョクグマについてこれだけ頻繁に映像で成長が記録されてきたのは札幌でのララの子供達、そして大阪でのモモくらいでしょう。ロスチクは我々にとっては大阪のシルカの弟であるという点において彼の成長を追っていくのは非常に大きな楽しみです。Photogenicity という点においては今までの札幌でのララ親子には及ばないものの、ゲルダとロスチクの親子の姿を見るときに遠い日本に旅立ったロスチクの姉のシルカ、特にノヴォシビルスクで市民に愛されたシルカの劇的なまでのゲルダお母さんとの別れ、そして孤独と諦念のシルカの異国への旅立ちをようやく見送ることのできたファンの方々といった一つの「物語」の存在を忘れるわけにはいきません。
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シルカ (Белый медвежонок Шилка)
(2014年9月13日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)

ノヴォシビルスクにおける「シルカの物語」がいかに鮮烈な印象を残したかは、たとえば現在公募されている故ラスティスラフ・シロ (Ростислав Шило) 前園長の記念像のデザイン応募案にすら及んでいるのです。
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シルカ (Белый медвежонок Шилка)
(2014年9月12日撮影 於 ノヴォシビルスク動物園)

それは「故シロ園長とシルカ」という、要するにノヴォシビルスク動物園に暮らす多くの動物たちを代表しているのは依然としてシルカの姿であるという想いをノヴォシビルスク市民の方々は持っているわけです。そういった「シルカの物語」そして「シルカの影」を背後に背負っているのがロスチクであるようにすら私には思えてきます。

ここでまた最新のロスチクとゲルダお母さんの映像を見てみましょう。最初の映像ですが、母親との距離と間合いを測りながらロスチクは巧みに行動しています。



この下の映像でもそうですが、母親との距離が近くなれば適時母親を刺激し、そして母親が離れればタイヤ遊びえお試みるといったように、ロスチクは決してゲルダお母さんの機嫌を損ねることなくバランスのとれた親子関係を見せてくれます。



この下の映像も同様です。来園者からエサを与えてもらいたいゲルダお母さんですが、ロスチクはその邪魔もせず、かといって孤立することもなく動き回っています。こういった行動はシルカには非常に少なかったわけです。



ロスチクには屈託がありません。そしてそれと同時に彼には賢さといったものが備わっていて、あのノヴォシビルスク時代のシルカが持っていた、どこか「切なさの漂う甘さ」といった雰囲気は感じさせません。このロスチクにシルカの場合のような物語を描くことは現時点では難しいわけです。ここには「シルカの物語」の影を引き摺らない清澄さがあるといってよいでしょう。

さて、ノヴォシビルスク動物園でシロ園長の死後から今まで園長代行の職にあった息子さんのアンドレイ・シロ氏はとうとう昨日、正式に新園長という地位が承認され、ノヴォシビルスク市長であるアナトリー・ローコチ (Анатолий Локоть) 氏が任命書に正式に署名しました。アンドレイ・シロ(Андрей Шило)氏は若干26歳の若さです。ノヴォシビルスク動物園では園長であった父の下で働いていました。アンドレイ・シロ新園長の横顔を紹介する地元TVニュースをご紹介しておきます。



さて、ノヴォシビルスク市長であるアナトリー・ローコチ氏は昨日の記者会見で興味深いことを話しています。それは、ノヴォシビルスク動物園が参加する形でノヴォシビルスク市と姉妹都市である街との交流を図りたいという内容です。ということは、こういったことを機会としてノヴォシビルスク市の姉妹都市である札幌市の円山動物園はノヴォシビルスク動物園と交流するチャンスであるということです。このロスチクというのは日本のホッキョクグマ界における血統から考えれば非常に多い「アンデルマ/ウスラーダ系」ですので彼の札幌への導入(つまりリラのパートナーとして円山動物園の新ホッキョクグマ飼育展示場の主役となること)は本当は好ましくはないでしょう。ましてやロスチクの姉であるシルカが昨年日本に来ているからです。ただし正式に話をローコチ市長経由で持って行けばロスチクを札幌に導入することはいとも簡単だろうと思います。ララファミリーとロスチクには何の血統上の関係もありませんから、ゴーゴ/シルカよりもロスチク/リラ(or マルル、ポロロ)のほうが組み合わせとしては圧倒的に優っているわけです。現在の若年世代だけを考えれば、「ゴーゴ/デア」「ロッシー/アイラ」「キロル/ヴァニラ」「イコロ/シルカ」「ロスチク/リラ」.....こういった感じならばこの世代に関するならば何ら問題はないわけです。血統上の問題は彼らの次の世代に持ち越してしまうという考え方です。

大分話がそれました。このロスチクについて果たして物語を描く来る日がやってくるかどうかはわかりません。仮に描く日がやってきたとしてもシルカの場合のような物語ではなく、まったく別の何か明るい物語となるでしょう。そしてそこに登場するのは今度は若い新園長さんといったことになるでしょう。

(*追記)ノヴォシビルスク動物園は以前にご紹介していましたように正式名称に故シロ園長の名前が付冠されることととなり、だいたいの予想通り "Новосибирский зоопарк имени Р.А. Шило" 、つまり「R.A.シロ記念 ノヴォシビルスク動物園」となり、正門の表示もすでにそうなっているそうです。日本語の表記としては今まで通り「ノヴォシビルスク動物園」でよいと思いますし、そうしておきます。

(資料)
НГС.НОВОСТИ (Jul.27 2016 - Форменное зверство)
Новосибирские новости (Jul.28 2016 - Директором новосибирского зоопарка официально назначен 26-летний Андрей Шило)
ГТРК «Новосибирск» (Jul.29 2016 - Андрей Шило: Новосибирский зоопарк войдет в десятку лучших в мире за пять лет)
НГС.НОВОСТИ (Jul.27 2016 - Новосибирский зоопарк сменил вывеску над главным входом)

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by polarbearmaniac | 2016-07-29 17:30 | Polarbearology

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