街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ハンガリー・ニーレジハーザのソスト動物園、シンバ (姫路のユキ、仙台のポーラの母) の夏の日

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シンバ(姫路のユキと仙台のポーラの母)Photo(C)nyiregyhaza.hu

海外から来日して日本の動物園で暮らしているホッキョクグマたちの両親、特に母親について知っておくことは重要であるということを以前の投稿で述べました。その理由としてはやはり彼らが幼少期にどのような性格の母親によってどのように育てられたかということを知っておくほうが、彼らの日本での生活ぶりを観察する際に重要なヒントを与えてくれるからだろうと思います。特にホッキョクグマのように母親によって子供に接する姿勢が大きく異なる種の場合にはなおさらです。今回は姫路市立動物園のユキ、そして仙台の八木山動物公園のポーラという姉妹のホッキョクグマの母親であり、そして現在も元気でハンガリーのニーレジハーザの動物公園 (Nyíregyházi Állatpark) のソスト動物園 (Sóstó Zoo)に暮らしている29歳のシンバ(現在はゾラ - Zora - という名前で呼ばれています)にスポットを当て、そしてさらにユキとポーラの弟である9歳のヨレク(現在はセルビアのパリッチ動物園で飼育)の姿も確認しておきたいと思います。
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シンバ Photo(C)Nyíregyházi Állatpark

まずユキとポーラの母親であるシンバ(ゾラ)ですが、1986年12月5日に当時は東ドイツであったライプツィヒの動物園で生まれています。血統的には豊橋のチャッピーの叔母にあたるわけですがチャッピーの母親(つまりシンバの姉)とは同父異母姉妹という関係です。このシンバは誕生したライプツィヒ動物園で約4年を過ごした後にセルビアのパリッチ動物園 (Palić zoo)に移動して、そこでベルリン動物公園生まれの故ビョルン・ハインリヒとペアを組んでパリッチ動物園で三頭の子供たちの繁殖に成功しています。故ビョルン・ハインリヒについては「25年前の東ドイツにいた「もう一頭のクヌート」 ~ ユキ(姫路)とポーラ(仙台)の父親の物語」という投稿を是非ご参照下さい。さて、シンバはこのビョルン・ハインリヒとの間で繁殖に挑戦して見事に成功したわけです。第一子が1999年11月26日生まれの姫路市立動物園のユキ、第二子が2004年12月5日生まれの仙台・八木山動物公園のポーラです。そして第三子が2006年12月25日生まれの雄のヨレクです。シンバお母さんの育児姿で映像に残っているのは第三子のヨレクとのものだけですので、その映像をご紹介しておきます。

パリッチ動物園での母親シンバと息子のヨレク(ユキとポーラの弟)

上の短い映像を見ての私の直感ですが、シンバお母さんというのは多分面倒見の良い「情愛型」の母親ではなかったでしょうか。仙台のポーラを見ているとポーラは「情愛型」の母親に育てられたのではないかという痕跡が見え隠れしているということもこのことと矛盾しないように思います。来日後のユキとポーラですが、姉のユキはアンデルマの息子であるルトヴィク(ホクト)をパートナーとし、妹のポーラはウスラーダの息子であるラダゴル(カイ)をパートナーとしています。このユキとポーラのどちらも日本でこれから繁殖に成功しないようなら日本のホッキョクグマ界にとっては情けない話となるでしょう。何が何でも成功してもらわねばなりません。

さて、シンバお母さんの第三子である雄のヨレクは生後14ヶ月ほどでシンバお母さんと別れてセルビアのパリッチ動物園からハンガリーのソスト動物園に移動しています。移動してからそう日の経過していない時期のソスト動物園でのヨレクの姿を映像でご紹介しておきましょう。

ソスト動物園でのヨレク

さて、シンバ(ゾラ)は2011年の6月にパートナーであったビョルン・ハインリヒが亡くなったためにパートナーがいなくなってしまったというわけでした。そのため2013年3月に息子のヨレクが暮らしているハンガリーのソスト動物園に移動することになり、その交代のような形で息子のヨレクは生まれ故郷のセルビアのパリッチ動物園に戻ることとなったわけでした。ソスト動物園に到着したシンバ(ゾラ)の姿をニュース映像で下にご紹介しておきましょう。


ソスト動物園に到着したシンバ(ゾラ)と待ち受けるオーテク(1)


ソスト動物園に到着したシンバ(ゾラ)と待ち受けるオーテク(2)

シンバ(ゾラ)はこの時点で26歳になっていましたが過去に三回の繁殖経験があったため、この年齢でもさらに繁殖が可能であるとEAZAのコーディネーターは考えたらしい形跡が当時の報道記事の中にありました。ところがこの26歳のシンバ(ゾラ)のパートナーとなったのはなんと推定34歳にもなっていたカナダの野生出身のオーテクだったのです。このオーテクの2013年、まだシンバが到着していない時期の姿をご紹介しておきましょう。34歳にしてはやや若く見えるようにも感じます。

ソスト動物園のオーテク

さて、昨年の春に「ハンガリー、ニーレジハーザのソスト動物園の28歳のシンバと36歳のオーテクの老境に咲く満開の花」という投稿でご紹介していましたが、驚くべきことにこのシンバ(ゾラ)とオーテクとの間には繁殖行動があったというわけです。現在アムステルダムのEAZAのホッキョクグマ担当のコーディネーターのハンガリー人の方はこのソスト動物園の出身だったわけですが、自分の出身園におけるホッキョクグマの繁殖に随分大胆なことを行ったものです。あの札幌の円山動物園が2009年当時に職員をアムステルダムに派遣して個体交換の交渉を行おうとした際に対応したのもこのハンガリー人のコーディネーターの方だったわけですが、こういったオランダに住む旧東欧出身の人というのは海千山千の人間が多く私もオランダでそのような人々と昔に仕事をしたことがありますが、一癖も二癖もある人たちでした。多分EAZAのコーディネーターというのもそういう種類の人だったのでしょう。
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シンバ Photo(C)Nyíregyházi Állatpark

さて、昨年の7月に当時36歳だった雄のオーテクは亡くなってしまったそうで、そのニュースもソスト動物園やマスコミでも報じられないニュースだったわけで残念な話です。こうして再びシンバ(ゾラ)はパートナーがいなくなってしまったわけですが彼女ももう29歳です。こうしてシンバ(ゾラ)も余生をハンガリーのソスト動物園で送っているそうです。室内の寝室は空調が効いているそうですが、シンバはもともと夏の季節には野外の飼育展示場をあまり動き回らないそうで氷のケーキなどをもらって野外の飼育展示場でゆったりとした夏を過ごしているようです。ソスト動物園としてはシンバ(ゾラ)の遊び友達をどこかの園から連れてきたいと考えているそうです。

母親であるシンバと入れ替わる形でセルビアのパリッチ動物園に帰還したヨレクですがその姿を見てみましょう。そしてパリッチ動物園の飼育展示場に御注目下さい。これこそがまさに姫路のユキ、仙台のポーラが育った場所なのです。

パリッチ動物園のヨレク

(資料)
Szeretlek Magyarország (Feb.27 2016 - Veszélyben a világ legnagyobb szárazföldi ragadozója)
Szabolcs Online (Feb.27 2016 - Február 27-e a Jegesmedvék Nemzetközi Világnapja)
Blikk.hu (Jul.26 2016 - Napi cuki! Így pancsolt Zora, a jegesmedve a Nyíregyházi Állatparkban)
Nők Lapja Café (Jul.26 2016 - Így pancsol Zora, a jegesmedve Nyíregyházán – cuki fotók)
World of Paws (Jun.21 2008 - Jorek, a fehér bundás közönség mágnes)
nyiregyhaza.hu (Jegesmedve Szerbiából) (Örökbe fogadták a jegesmedvét)

(過去関連投稿)
25年前の東ドイツにいた「もう一頭のクヌート」 ~ ユキ(姫路)とポーラ(仙台)の父親の物語
セルビア・パリッチ動物園のビョルン・ハインリヒ死す ~ ユキ(姫路〕 とポーラ(仙台) の父親の訃報
セルビア・パリッチ動物園のシンバ (姫路のユキ、仙台のポーラの母) がハンガリーのソスト動物園へ
ハンガリー、ニーレジハーザのソスト動物園の28歳のシンバと36歳のオーテクの老境に咲く満開の花
by polarbearmaniac | 2016-08-13 00:30 | Polarbearology

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