街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・クラスノヤルスク動物園へのセードフ司令官の帰還が2019年に延期となる ~ その意味するもの

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セードフ司令官 (Белый медведь Командор Седов)
Photo(C)Анна Ткаченко

ロシア国内の動物園のホッキョクグマの情報に関しては非常に小さなニュースでも実は大きな意味を持っている場合があり、そういったものを拾い上げて積み重ねていくことで初めて全体が見えてくるという事情があります。今回の投稿で述べる内容もそういった煉瓦のブロックの一つです。

ロシア・シベリア中部にあるクラスノヤルスク動物園(正確にはロエフ・ルチェイ・クラスノヤルスク動物園 - Красноярский зоопарк "Роев ручей")は現在の我々日本のホッキョクグマファンにとっては密かに目を凝らしてその動向を注視しておかねばならない動物園であることは先日の投稿でも申し上げた通りです。この動物園に暮らす雄のフェリックスと雌のオーロラ(本名ヴィクトリア)のペアは共に野生出身ですので繁殖が大いに期待されているわけですが、実はこのクラスノヤルスク動物園が所有しているもう一頭のホッキョクグマに13歳の雄のセードフ司令官というのがいるのですが、彼は現在、黒海沿岸のゲレンジークのサファリパークに貸し出されているわけです。そのセードフ司令官のクラスノヤルスク動物園時代の映像が今回地元のTVニュースの中で紹介されていましたのでご紹介しておきます。



セードフ司令官は2002年にサンクトペテルブルクであのウスラーダから誕生した三つ子の一頭なのですが、その彼は最初はスタロースコルィスク動物園でサーカス出身の雌のラパの引退後のパートナーとして、そして次にゲレンジークのサファリパークへラパと共に移動したわけですが、そこには複雑な経緯があったわけで、そういったことは過去関連投稿をご参照いただきたく思います。

このセードフ司令官はクラスノヤルスクでは非常に人気のあったホッキョクグマなのですが、その彼がいよいよ今年2016年にゲレンジークからクラスノヤルスクに帰還する予定となったことは昨年「ロシア・ゲレンジーク、サファリパークのセードフ司令官が来年2016年にクラスノヤルスク動物園に帰還が決定」という投稿でお知らせしています。 さて、ところが今になってクラスノヤルスク動物園はこのセードフ司令官の帰還は同園に建設される新ホッキョクグマ飼育展示場が完成となる2019年となる予定であると今になって彼の帰還時期の延期を発表しました。これはいったいどういうことなのかということが問題です。
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セードフ司令官 (Белый медведь Командор Седов)
Photo(C)Анна Ткаченко

2013年にセードフ司令官は3年間という期限の契約で貸し出されたわけで今年がその契約の切れる年なのですが途中でゲレンジークのサファリパークと事情によって再契約したために期限は2017年までとなったわけです。しかしこれを前倒しして今年2016年に再度3年間ということで再契約すればクラスノヤルスク動物園に2019年に完成する新飼育展示場に戻ることになるはずでタイミング的に都合が良いわけですが、では何故昨年の暮れにクラスノヤルスク動物園は契約延長の意思を示さず今年2016年にセードフ司令官は帰還するのだという発表を昨年行ったのかという大きな疑問が沸いてくるわけです。

私が推測するにこれは、クラスノヤルスク動物園の野生出身のフェリックスとオーロラとの間に今年の春に繁殖行為があり、そしてその後のオーロラの様子などから彼女の今年11~12月の出産の可能性が高いと同園では判断しているのではないかとということです。そういった状態で今年の秋にセードフ司令官(そして多分ラパも)をクラスノヤルスクに帰還させてしまえば秋以降のオーロラの出産準備に悪影響を与えることを危惧しているからだと私には思えます。だからセードフ司令官のBL契約を延長したのだろうということです。さて、私の見方が正しければオーロラは今年の11~12月に出産する可能性は高いのではないかということです。

仮に首尾よくオーロラが出産、そして育児に成功した場合(ロシアという国は繁殖の成功確率の高い国です)、そしてその赤ちゃんの性別が雄(オス)であった場合に、これはどうしても日本に連れてきたい個体となるわけです。さて、そういった私の期待と見通しが仮にうまく進行するとすれば来年はロシアとの交渉の「勝負」の年になると考えられます。なにしろ「ロシア動物園・水族館協会」は先日立ち上げが宣言されたばかりで組織としての実体整備が不十分な状態だろうと思いますし、その組織がホッキョクグマの繁殖計画についてEAZAとの連携が成立するような段階ではないわけですから、クラスノヤルスク動物園で生まれたその幼年個体を導入しようという意思のある日本の動物園が雌(メス)の幼年・若年個体を有していれば、そのパートナーとなる雄(オス)の個体の入手のために手を挙げる資格があるということです。そうなればこの赤ちゃんの入手交渉は来年の春からでも開始せねばいけないということなのです。ロシアから個体を導入しようとすれば、あと2~3年が勝負になるわけで、それを逃すと簡単ではなくなってしまうのです。

(資料)
Красноярский парк флоры и фауны «Роев ручей» (Aug.17 2016 - ПАРК БУДУЩЕГО! или КОГДА МИШКА СЕДОВ ВЕРНЕТСЯ В «РОЕВ РУЧЕЙ»?)
Аргументы и факты - Красноярск (Aug.22 2016 - Любимец красноярцев белый медведь Командор Седов вернется в «Роев ручей»)
ГТРК Красноярск (Aug.21 2016 - "Роев ручей" готовится к возвращению медведя Седова)

(過去関連投稿)
ロシア・クラスノヤルスク動物園の2頭の伊達男たち ~ 華麗なる独身生活を謳歌?
ロシア・クラスノヤルスク動物園のプール開き
ロシア・クラスノヤルスク動物園の夏の始まり ~ プールを雌2頭に占領されてしまったセードフ司令官閣下
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のプール開き
ロシア・シベリア中部のクラスノヤルスク動物園のセードフ司令官の10歳のお誕生会 ~ 行方不明の兄弟たち
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官の希望無き恋 ~ 野生出身の雌は高嶺の花
ロシアの氷上サーカス団でスケート演技をするラパに遂に引退の日来る ~ スタロースコルィスク動物園へ
ロシア・シベリア中部、クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が今週末に同園を出発し新天地へ
ロシア・シベリア中部 クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が同園を出発し、五千キロの移動の旅へ
ロシア・クラスノヤルスク動物園のセードフ司令官が陸路5日間で無事にスタロースコルィスク動物園に到着
ロシア西部、スタロースコルィスク動物園でのラパとセードフ司令官の近況 ~ ラパの健康状態への危惧
ロシア西部、スタールイ・オスコル市のスタロースコルィスク動物園で、ラパとセードフ司令官の同居が始まる
ロシア・スタロースコルィスク動物園のラパとセードフ司令官が黒海沿岸のゲレンジーク・サファリパークへ
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークで暮らすセードフ司令官とサーカス出身のラパの近況
ロシア・黒海沿岸、ゲレンジークのサファリパークのホッキョクグマ展示場にライブカメラ設置
所有権を持つロシア・クラスノヤルスク動物園の同意無しに他園に移動させられた出張中のセードフ司令官
ロシア・クラスノヤルスク動物園に所有権のあるセードフ司令官の無断移動問題、ほぼ一件落着へ
ロシア・ゲレンジーク、サファリパークのセードフ司令官が来年2016年にクラスノヤルスク動物園に帰還が決定
ロシア・クラスノヤルスク動物園の新飼育展示場計画発表 ~ 欧露の「囲い込み」体制に日本はどう対応するか
by polarbearmaniac | 2016-08-25 00:15 | Polarbearology

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