街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・プラハ動物園のホッキョクグマたちの夏 ~ ペアに母親を加えた繁殖行動期の三頭同居の成功例

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Photo(C)zijushandicapem.cz

今年ももう9月になっています。昨年の繫殖シーズンで11~12月に誕生した個体の成長を追いつつ、今年の繫殖シーズンにおいて世界的な視野において出産が期待されるペアについて少しずつ見ていきたいと思います。今回はチェコのプラハ動物園です。この動物園はホッキョクグマの繁殖には過去にも優れた実績があるわけで、なんと1942年に人工哺育にも成功しています。その件については全て過去関連投稿に譲ることとし今回は省略します。

このプラハ動物園には現在3頭のホッキョクグマが飼育されています。ウィーンのシェーンブルン動物園生まれの29歳の雌のボラ(Bora)、そして彼女の娘である12歳のベルタ(Berta/Framina)、そしてそのベルタのパートナーでありブルノ動物園でコーラお母さんから生まれた双子のうちの一頭である8歳の雄のトム(Tom)という三頭です。この三頭が2013年の初頭に同居している姿を御紹介しておきます。じゃれあっているのはベルタとトムであり、少し離れた場所にいて静観しているのはボラです。



端的にこう考えて下さい、それは浜松のバフィンとモモの親子が同居し続け、そして何年か経過してモモにパートナーがやってきたもののバフィンは別居せずにそのままモモと一緒にいるという状態と同じというわけです。さて、こうして2013年の初頭に同居していたこの3頭なのですが、実はこの年の春にベルタとトムとの間で繁殖行動があり、ベルタはこの年2013年11月30日に一頭の赤ちゃんを出産したものの12月2日にその赤ちゃんは死亡していたことが後の血統台帳の記録より明らかになっています。プラハ動物園は赤ちゃん誕生の発表を行う前に赤ちゃんは亡くなってしまったということなのです。このように世界の動物園では「実は〇〇だった。」という実際には発表しない出産の事実が存在しているわけです。次に翌年2014年の2月頃の映像です。やはり三頭が同居しています。



この2014年にベルタに実際に出産があたのかどうかは記録上の確認がとれません。しかし上の映像から少なくとも繁殖行動期の少し前の段階では三頭が同居しているということです。それにしても上の映像ですが、2月という段階で三頭同居(つまり若いペア二頭と、そのペアのうちの一頭の母親)を行っているというのは、実はあまり好ましいことではないかもしれません。前年の2013年にもこの三頭同居を行い、それでもベルタは一応は出産したわけですから、春の時点(つまり繁殖行動期、及びその直前)については三頭同居は問題ではないというプラハ動物園の判断なのでしょう。問題は秋以降(つまり9月下旬以降)の具体的にいつ頃にベルタを引き離して別居させていたのかということなのですが、それが確認できません。昨年の2015年も実際にベルタに出産があったかについては確実ではないものの、あったらしいというのが未確認情報です。しかしやはり出産後早い時期に赤ちゃんは死亡してしまったようです。しかし「実は〇〇だった。」というような話を重要視するのは問題でしょう。

さて、今年2016年ですが2月の段階では下の映像のようにやはり三頭同居が行われています。



そして下はつい先日の8月25日の映像ですが、これも三頭同居になっていますね。



ということで、繁殖を狙うペアにもう一頭が加わって、全体での三頭同居は少なくとも夏までの時点ならば十分可能というのがこのプラハ動物園での実例であるということです。ただし、その加わった一頭がペアのうちの雌(メス)のほうの母親という点がポイントなのかもしれません。このアナロジーで言えば、浜松で将来モモにパートナーがやってきたときにバフィンを加えて三頭同居を行うことは問題ではないと考えたいところですが、これは母親(つまりバフィン)がどう反応するかが重要なポイントのような気がします。仮に札幌でリラにパートナーが来園し、そしてリラの母親であるララを加えての三頭同居を考えてみると、これは全く不可能だと思います。ララというのは自分の暮らす空間に自分と自分の子供達以外の別のホッキョクグマが存在すること自体を決して許さないホッキョクグマだからです。ララというのはそういった自らの空間を完全に支配しようという欲求の非常に強い雌なのです。ではバフィンはどうでしょうか? ララの場合よりは幾分かはそういった別の個体の存在を許容しそうな気もしますが、やってみなければわかりません。こういった券については「「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(9) ~ 同居を許容しうる雌雄の頭数構成」という投稿を御参照下さい。私が日本の動物園で三頭同居をやらさせてみたい(みたかった)のは旭山動物園のイワン、ルル、ピリカという三頭の組合せです。果敢にこういったような試みに挑戦して、なんとか活性化させてほしいと思うのですが。

しかしいずれにせよこういった三頭同居は9月頃には終了させて出産が期待される雌の個体は独居させるというのがセオリーであるということです。11月にもなってまだ三頭同居を行っていた先日のミュルーズ動物園の例というのは大きな問題でしょう。

さて、今年の繁殖シーズンですが果たして11~12月にベルタは出産、そしてその後の育児に成功するでしょうか? 今年こそ大いに期待したいと思います。下の映像は先週日曜日のトムの姿、そして二番目は2011年の夏の氷のケーキのプレゼントで、食らいついているのはボラです。





さて、実は私はこのブログを開設した直後の2009年12月にこのプラハ動物園を訪問してこの三頭に会っています。その当時はこのブログに写真や動画をアップしようなどという発想は全くなかったわけですが、当時のプラハ動物園でのこの三頭の写真やら古都プラハの街並みなどを遡ってアップしておこうかなとも思っています。仮にアップが完成しましたらお知らせしたいと思います。思い出したのですが、その2009年12月の時点ではベルタの母親であるボラは別居していました。当時はトムは繁殖可能年齢には達していなかったわけですが、何故その時には三頭同居が行われていなかったのかがわかりません。

(資料)
Pražský deník (Aug.25 2016 - Lední medvědi dováděli s novými hračkami a bavili návštěvníky pražské zoo)
Blesk.cz (Aug.25 2016 - Lední medvědi dováděli jako malé děti: Vystačili si s podstavcem od slunečníku)
Hobby.cz (Feb.11 2010 - Lední medvědi se v zimní Praze i potápějí a umějí si to skutečně užít)
Hobby.cz (Aug.26 2011 - Vedro zvířata zvládají díky ledovým bábovkám a sprchám)

(過去関連投稿)
チェコ・プラハ動物園とロシア・クラスノヤルスク動物園のホッキョクグマのお誕生会
チェコ・プラハ動物園の愉快なホッキョクグマたちの姿 ~ 1942年に人工哺育成功の輝かしい歴史
チェコ・プラハ動物園での1942年のホッキョクグマ人工哺育記録集が出版となる ~ ドイツ軍占領下での快挙
チェコ ・ プラハ動物園の動物たちが洪水の被害から無事に避難 ~ 園内復旧にボランティアを募集
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(9) ~ 同居を許容しうる雌雄の頭数構成
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(10) ~ 出産に備えた雌の「隔離」とは? 
by polarbearmaniac | 2016-09-04 02:00 | Polarbearology

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