街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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フランス東部・ミュルーズ動物園、ホッキョクグマの繁殖に一抹の不安を感じさせる同園での三頭同居

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ヴィックスとセシ Photo(C)L’Alsace

フランス東部アルザス地方の都市であるミュルーズの動物園 (Parc zoologique et botanique de Mulhouse)に暮らすホッキョクグマたちについては以前から何回か投稿しています。野生出身で現在29歳となっている雌のティナ、オランダのロッテルダム動物園でオリンカお母さんから生まれた5歳の雄のヴィックス、そして同じオランダのアウヴェハンス動物園でフリーダムお母さんから生まれた5歳の雌のセシという三頭です。このヴィックスとセシという若いペアの繁殖に大いに期待しているのがミュルーズ動物園です。

8月も下旬となったにもかかわらずフランスでは気温の高い日が数日続いているためにミュルーズ動物園ではホッキョクグマたちに氷のケーキとスイカのプレゼントがあったそうです。これはおそらく予定外のことだったようです。その様子を報じるTV(France 3)のニュース映像をご紹介しておきます。



実は私は今年の1月の地元ミュルーズのニュースをうっかりと見落としていたのですが、このセシには昨年11月中旬、つまり彼女が5歳の誕生日の直前に双子の赤ちゃんの出産があったそうで、一頭目は屋外で出産したものの死産、二頭目は屋外から産室につながる場所で出産したものの一日経過しないうちに赤ちゃんは死亡したという結果だったそうです。実に残念でした。ミュルーズ動物園としてはこの若いペアに繁殖能力があることが明らかになった点で昨年の失敗についてはむしろ好意的にすら受け止めているようです。セシはまだ非常に若いですので将来が実に有望です。ただしかし以下の映像をご覧ください。これは昨年2015年の11月7日の映像です(撮影年月日が入っている映像は実に価値があることを如実に示しています)。この映像にはセシ、ヴィックス、ティナの三頭が11月のこの時点でまだ同居していたことを示しています。これではダメですね。もっと早い時期からセシを一頭にしておかねばならないのです。非常に問題がありますね。



さてこのミュルーズ動物園でホッキョクグマの担当責任者であるイザベル・ドラコートさん(最初のニュース映像に登場している女性です)は現在29歳になっているティナが当時のソ連で野生孤児として保護されたあとにこのミュルーズ動物園にやってきた当時からホッキョクグマを担当しているそうです。現在5歳の雄のヴィックスについてドラコートさんは、彼は非常に頭が良くて何事に対しても理解が早く、そしていつも来園者の様子を気にしているそうです。全てに関してヴィックスは反応が非常に敏感なホッキョクグマだという内容を語っています。私はヴィックスにはロッテルダム動物園で会ったことがありますが、本当に元気一杯で見ていて全く飽きないホッキョクグマでした。セシについても私はアウヴェハンス動物園で会ったことがあるのですが、その時には彼女の性格というところまではわからなかった記憶があります。セシは昨年の出産の前に一頭でいた期間は短かったとドラコートさんは語っていますが、この方は確かにホッキョクグマの飼育はベテランの方であることはヴィックスの性格を見事に語っていることでよくわかるのですが、繁殖という面について成功している他の動物園がどのようなやり方で行っているかに深い知識や情報を持っていない方ではないでしょうか。他園(それも繁殖に成功している動物園)ならばもっとずっと早い時期に雌を独居させているわけです。

ドラコートさんによればヴィックスは現在、毎日10キロの肉を食べているそうで、一方のセシとティナは肉については毎日5~7キロということだそうです。ここで2年前の映像ではありますが、ヴィックス、セシ、ティナの紹介とこの三頭に対するエンリッチメント(フランス語では “l'enrichissement” – アンリシスマン)を紹介している素晴らしい映像がありますので下にご紹介しておきます。音声はonにして下さい。実に美しくてセンスのある映像だと思います。



確かにセシとヴィックスは繁殖に関して潜在能力の非常に高い素晴らしいペアだと思いますが、このミュルーズ動物園の出産が期待されている雌(メス)の個体をその出産時期の直前まで雄(オス)を含めた三頭同居をさせておいた展示姿勢には一抹の不安を感じざるを得ません。

(資料)
Franceinfo (Aug.26 2016 - Zoo de Mulhouse: les ours polaires ont droit à des glaces)
L'Alsace (Jan.15 2016 - De l’espoir pour des oursons) (Jul.26 2016 - Isabelle et Vicks) (Jun.20 2016 - France 3 Alsace samedi au zoo de Mulhouse)

(過去関連投稿)
フランス・アルザス地方のミュルーズ動物園の新施設建設計画 ~ 2頭のホッキョクグマの移動について
チェコとフランスにおけるホッキョクグマの搬出入の映像
フランス・ボルドー近郊、パルミール動物園のジュリ逝く ~ 故郷の新施設の完成を待たずに客死
フランス東部 ミュルーズ動物園でのヴィックスとセシの近況 ~ 優先されるオランダの若年個体のペア形成
フランス東部アルザス地方のミュルーズ動物園にパルミール動物園からティナが無事帰還
フランス東部、ミュルーズ動物園の新施設「グランノール(L'espace Grand Nord)」 がオープン
フランス東部のミュルーズ動物園の 「アンリシスマン (l'enrichissement) – エンリッチメント」 の試み
フランス東部、ミュルーズ動物園のセシとヴィックスのペアの繁殖への期待 ~ 求められる謙虚な姿勢
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(1) ~ 雄雌の同居は繁殖行動期に限定すべき?
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(10) ~ 出産に備えた雌の「隔離」とは?
by polarbearmaniac | 2016-08-28 01:00 | Polarbearology

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