街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・西シベリア、ボリシェリェーチェ動物園のグーリャ(Гуля)、乏しい情報から知るその動向

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グーリャ (Белая медведица Гуля в Большереченском
зоопарке)
 Photo(C)Отзовик

世界の動物園には話題という名の陽が当たらないホッキョクグマも多く存在しています。これをもっと正確に言えば、実際は来園者はそのホッキョクグマを見るものの名前やそれまでの生き様を知らないために、その個体を他のホッキョクグマと区別して認識しないために注目されないまま一生を終えてしまうというホッキョクグマなのです。現在の日本の動物園には陽の当たらないホッキョクグマは一頭もいないと思います。仮に日本のどこかの動物園でいるはずのホッキョクグマの姿が見えなくなって何日も経過するとすれば、「いったい何が彼(or 彼女)に起こったのか?」という疑問が直ちにネット上で発せられるというわけです。ところが数年前には日本の動物園にも陽の当たらないホッキョクグマがいたのです。それはクーニャ(札幌のララ、旭川のルルの母)でした。彼女ほどその死の時まで陽の当たらなかったホッキョクグマはいなかったでしょう。しかし、札幌のララというのはいかなるホッキョクグマなのか、そしてララの類稀なる母性とは何なのかを説明する鍵は全てクーニャにあったのです。
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グーリャ (Белая медведица Гуля) Photo(C)cis.edu.yar.ru

実は現在でもそうしたホッキョクグマはロシアの動物園に何頭が存在しています。そのうちの一頭が西シベリアのオムスク近郊にある田園動物園であるボリシェリェーチェ動物園 (Большереченский зоопарк) に暮らす現在推定26歳の雌のホッキョクグマであるグーリャ (Гуля) です。彼女に関しては非常に情報が少なく、現在元気でいるのかそうでないのかについて正確な情報を得ることは極めで難しいのです。ですから彼女の近況を報じる情報があればそれを見逃さないようにしなければなりません。一般的にロシアの動物園というのはホッキョクグマが死亡してもその事実が報じられるというケースは非常に少ないのです。あのモスクワ動物園さえムルマのパートナーであったウムカ(ウンタイ)の死亡の事実を一切発表せず、一年以上してからマスコミが別の話題でモスクワ動物園に取材した記事の中でようやくウムカ(ウンタイ)の死亡の事実がさりげなく紹介されたという程度だったわけです。この点でロシアの動物園とは正反対なのがアメリカの動物園に暮らすホッキョクグマたちの情報です。死亡などすると必ず動物園からもマスコミからもその情報が発せられるというわけです。しかしそういったことから、ロシアの動物園がアメリカの動物園に比べてホッキョクグマを大事にしていないのだと言うことはできません。こういった件についてはまた稿を改めて論じてみたいと思います。
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グーリャ Photo(C)Cartman

さて、ボリシェリェーチェ動物園のグーリャに話を戻します。このグーリャというホッキョクグマは幼年期に非常に過酷な体験をしているのですが、それについては「ロシア・西シベリア、ボリシェリェーチェ動物園のグーリャの「ホッキョクグマの日」 ~ 悲劇の幼年期の記憶」という投稿をご参照下さい。こういったグーリャに身に起こった不幸な出来事について同園は年に一度のイベントの際に子供たちに話してきかせているそうですから、そういった意味でグーリャは地元ではよく知られているホッキョクグマなのです。しかしでは地元以外ではといえば、ロシア国内でさえ彼女の存在を知るファンはほとんどいないようです。ましてや欧米のホッキョクグマファンの方々が彼女について語るなどということは全くないというわけです。
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グーリャ Photo(C)Schardt

さて、冒頭の写真はこの夏に撮影されたものですがグーリャは元気でいることが確認できます。ボリシェリェーチェ動物園はこのグーリャの年齢を血統台帳上の情報より5歳年上であると認識しているようですが、その根拠を知りたい気がします。グーリャには以前ルハリャーダ (Рухляда) という仲良しの雌のホッキョクグマがいたのですが、ルハリャーダは繁殖目的でセヴェルスク動物園へ移動し、そしてその後にペルミ動物園に移動したわけですが、そこで亡くなってしまったようです。グーリャは仲良しのルハリャーダと別れさせられ一頭でこのボリシェリェーチェ動物園に暮らしているわけですが、この動物園のホッキョクグマ飼育場はコンクリートがなく土と芝生ですしプールは自然の池ですから、飼育環境は非常に良好だと言えましょう。その点が救いです。地元の人々以外からは全く注目されないホッキョクグマですが、その彼女の姿をこれからも追い続けていきたいと思っています。

以前の投稿でご紹介済ですが、このグーリャの映像を三つほどご紹介しておきます。上より2014年、2015年、2016年、それぞれ「国際ホッキョクグマの日」の映像です。







私が海外に出てホッキョクグマに会うようになってから、それまで全くわからなかったことに気が付くようになったことが二つあります。一つはサーカス出身のホッキョクグマたちの表情、そしてもう一つは野生孤児個体で人間に保護されたばかりのホッキョクグマたちの表情です。前者はベルリン動物園の故トスカ、ハバロフスク動物園の故ゴシ、ロストフ動物園(そしてその後にハバロフスク動物園)の故イョシなどです。後者はペルミ動物園のセリク、イジェフスク動物園のバルーといったところです。彼らの表情は私に強い印象を与えました。このボリシェリェーチェ動物園のグーリャにはまだ会ったことはないのですが、写真や映像だけでも非常に独特の雰囲気を感じます。つまりサーカスであれ野生孤児となった経緯であれ、不幸という過去を背負ったホッキョクグマたちなのです。そういったホッキョクグマたちに比べれば、シルカやモモやリラなどは本当に恵まれたホッキョクグマなのです(そもそもホッキョクグマが飼育下で幸福なのかといった根本問題は脇に置いておきます)。母親が立派に育児を行い、そして多くのファンの暖かい視線を受け続けているわけです。しかし世界にはそのような幸運に授からなかったホッキョクグマもいるわけです。グーリャもそうしたホッキョクグマだというわけです。

(資料)
Отзовик (Jul.16 2016 - Отзыв: Большереченский зоопарк)
ПрессЛайф (Nov.21 2013 - Бабушке-медведице зимой не до сна)
vettorg.net (БОЛЬШЕРЕЧЕНСКИЙ государственный зоопарк)

(過去関連投稿)
ロシア・西シベリアのオムスク近郊、ボリシェリェーチェ動物園に暮らすグーリャ ~ 人間への不信と無関心
ロシア・西シベリアのボリシェリェーチェ動物園で飼育のグーリャに 「ホッキョクグマの日」 が開催予定
ロシア・西シベリア、ボリシェリェーチェ動物園のグーリャの「ホッキョクグマの日」 ~ 悲劇の幼年期の記憶
ロシア・西シベリア、ボリシェリェーチェ動物園のグーリャの近況 ~ 話題の光が当たらずとも良好な飼育環境
ロシア・西シベリア、オムスク近郊のボリシェリェーチェ動物園の「国際ホッキョクグマの日」のグーリャの姿
ロシア最大の石油会社 ロスネフチがロシアの動物園の全ホッキョクグマへの援助・保護活動開始を表明
ロシア・西シベリア、ボリシェリェーチェ動物園のグーリャにロスネフチ社より飼育場整備の資金援助
ロシア・西シベリア、ボリシェリェーチェ動物園、グーリャ(Гуля) の「国際ホッキョクグマの日」
by polarbearmaniac | 2016-09-08 02:00 | Polarbearology

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