街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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イギリスのヨークシャー野生動物公園が中国・広州市の「皮扎 (Pizza)」の受け入れを申し出る

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皮扎 (Pizza) Photo(C)MailOnline

中国・広東省の省都である広州市のショッピングモールにある「広州正佳極地海洋世界 (广州市正佳极地海洋世界 - Guangzhou Grandview Polar Ocean World)」の水族館で飼育されているハイブリッドのホッキョクグマである「皮扎 (Pizza)」の飼育環境が劣悪であるとし、この皮扎 (Pizza)を「世界で最も悲しいホッキョクグマ」と呼んで彼が飼育されている水族館の閉鎖を求めてネット上で署名活動が行われ、そして地元の人々に対してもこの施設の訪問をボイコットするように呼びかけている件は「中国・広東省、広州市の世界からの批判を浴びる「広州市正佳極地海洋世界のホッキョクグマ」の謎」という投稿でご紹介していました。 さて、その後もこの中国の施設に対する批判の声は下火になることはなく、「広州正佳極地海洋世界」はネット上で世界中から集団リンチを受け続けている状態です。





この広州市の施設は皮扎 (Pizza)の飼育環境の改善の意思を公言し、そして少しずつではあれそれを実行しようとしている模様ですが、そもそもネット上の批判などというものは、それが集団リンチ状態のように激しいものであっても批判された側に対してクシャミを一つさせるほどの物理的な強制力すらありません。しかしここにきてイギリス・サウス・ヨークシャー州 ドンカスター近郊にあるヨークシャー野生動物公園(Yorkshire Wildlife Park) がこの皮扎 (Pizza)を引き取りたいと中国の施設に対して申し出ているそうです。その申し出に対して中国の施設側からはまだ回答はないそうです。 ヨークシャー野生動物公園や動物保護活動家グループはこの皮扎 (Pizza)をイギリスに引き取るにあたり金銭的な支払いを中国側には行わない意向だそうで(つまり「購入」は行わないということ)、その理由は仮に金銭を中国側に支払えばその金でまたこの施設は別のところからホッキョクグマを入手しようとする危険性があると考えているからのようです。この皮扎 (Pizza)はホッキョクグマとはいってもハイブリッドですから、そのルーツはセルビアのベオグラード動物園にあるわけで仮にヨークシャー野生動物公園で引き取ってもEEP対象集団としての個体にはなりえず、繁殖に寄与させる可能性は全くないことも明らかでしょう。こういった件については「セルビア・ベオグラード動物園と中国・広州市の正佳極地海洋世界を結んだ「暗黒の闇」の連鎖の世界」という投稿をご参照下さい。
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皮扎 (Pizza) Photo(C)MailOnline

このヨークシャー野生動物公園は当ブログで何度もご紹介していますが、欧州におけるホッキョクグマの雄の幼年・若年個体の集中プール基地として機能しており、またすでに繁殖からは引退したヴィクトルなども暮らしている動物園ですが、デンマークのスカンジナヴィア野生動物公園、スコットランドのハイランド野生公園などと並ぶ世界でも屈指の環境の良さを誇る動物園です。果たして中国側がこのヨークシャー野生動物公園の申し出を受け入れるかどうかですが、私は受け入れないだろうと予想しています。
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皮扎 (Pizza) Photo(C)MailOnline

一般論で言えば、こういった場合には当該施設、つまり今回の場合では広州市の「広州正佳極地海洋世界」の飼育環境を向上させるべく強く働きかけ続けるべきで、安易に欧米の施設で引き取ることによって問題を解決させようということは好ましくないと私は考えます。では今回の件に関してはどうかと言えば、私には何とも答えようがないということです。ただし現時点でイギリスはEUからはまだ離脱していませんので、中国からこの皮扎 (Pizza)を輸入する場合にはEUに適用される動物検疫関連の法令が依然としてイギリスにも共通して効力を持ち、イギリスへの(つまりEUへの)輸入には健康証明書などのいくつかの書類が必要であるはずで、そういった書類の有効要件を満たすデータをこの中国の施設がヨークシャー野生動物公園に提示することは極めて難しいと考えられます。あのメンドーサ動物園の故アルトゥーロをカナダのアシニボイン公園動物園が引き取ろうとして結局はカナダの法令によってそれが不可能であることが判明した件の二の舞となる可能性が大きいでしょう。

(資料)
BBC News (Sep.19 2016 - 'Saddest' polar bear Pizza offered new Yorkshire home)
Daily Telegraph (Sep.19 2016 - 'World’s saddest polar bear' kept in shopping centre offered Yorkshire home)
Mail on line (Jul.21 2016 - Trapped in a glass prison: 'World's saddest polar bear' bangs against a metal door in a Chinese shopping centre as gawping tourists take SELFIES)

(過去関連投稿)
セルビア・ベオグラード動物園のハイブリッドの正体 ~ “Polar Bear/Kodiak Bear Hybrid”
中国・広東省、広州市の世界からの批判を浴びる「広州市正佳極地海洋世界のホッキョクグマ」の謎
セルビア・ベオグラード動物園と中国・広州市の正佳極地海洋世界を結んだ「暗黒の闇」の連鎖の世界

(*ヨークシャー野生動物公園関連)
イギリスのヨークシャー野生動物公園がメキシコのベニート・フアレス動物園のユピの移動受け入れを表明
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オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園のヴィクトルがイギリスのヨークシャー野生動物公園に無事到着
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by polarbearmaniac | 2016-09-20 06:00 | Polarbearology

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