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ロシア・ノヴォシビルスク動物園のゲルダとロスチクの親子模様 ~ 「未完の大器」ゲルダ

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ゲルダとロスチク Photo(C)Новосибирский зоопарк

ロシア・西シベリアのノヴォシビルスク動物園で昨年2015年の12月7日にゲルダお母さんから誕生した雄(オス)のロスチク (Ростик)の成長を追っています。前回の投稿から約3週間が経過していますが、その時から現在までの現地のファンの方々の撮った映像のうちいくつかを見ていきましょう。映像の数は非常に多いわけで、思いついたものだけをご紹介しておきます。

まず最初の映像ですが、これは以前から述べていますようにこのノヴォシビルスク動物園に特有の来園者による園公認のえさの投げ入れに反応しているゲルダとロスチクです。あらかじめこの親子は飼育員さんから肉をもらっていたようなのですが、ゲルダお母さんは来園者から投げてもらうものをキャッチして食べることを優先しています。ロスチクのほうはもともともらっていた肉に執着しているのですが途中でゲルダお母さんの食べているものに関心を持つのですが、やがて肉に戻っていくというシーンです。ロスチクはなかなか冷静です。



さて、次の映像ですが開始後10秒あたりからの個所に御注目下さい。これがノヴォシビルスク動物園が投げ入れを公認している有料のエサです。かなり嗜好性の強いものです。ただしこの時はゲルダはほとんど反応していませんね。満腹だったのでしょう。最後は授乳のシーンで終わっています。



次は親子の水中のシーンです。ゲルダお母さんは少し来園者を気にしています。ロスチクは適当に母親にちょっかいを出すといった感じです。シルカとの時と比較するとロスチクは悠々としているように思います。



下のシーンですが、要するにゲルダは来園者から与えられるものに次から次へと関心が向いているわけですが、ロスチクは落ち着いていてすでに与えられているものの方に関心があるわけです。たいしたものです。



下の映像ですが、ロスチクは来園者から与えられるものに対してそれほど執着していません。



二年前、あのシルカがゲルダお母さんと一緒だった時はシルカには何か孤独の影といったものを強く感じさせたわけです。そこには将来シルカが体験せざるをえ得なかった悲しさというものが予感されていたような気がします。ところがロスチクにはそういった孤独の影といったものは感じません。彼は適当に母親に甘え、そしてうまく御機嫌をとるという余裕すら感じさせます。母親であるゲルダをうまく操縦しているのがロスチクなのです。あるいはゲルダはそういったことが全てわかっていて、敢えてそれにうまく乗っかっているとも言えるのです。



ゲルダ/シルカとゲルダ/ロスチクの親子関係は全く異なっていることに驚かざるを得ません。何故そういったことをもっと論じられないのでしょうか? これはホッキョクグマの親子関係を考える場合に非常に興味深い観察対象であると思います。原因はシルカとロスチクの性別の違いによって生じるゲルダの母親としての対応の違いなのか、それともゲルダが母親として経験を積んだためなのか、それともシルカとロスチクの性格の違いなのか......こういったことが論じられなければならないのです。こののヴィシビルスクにお住まいの方々の多くの映像は実に貴重だと思います。特異なシーンをことさら集めたりせず、この親子の普通のシーンをすくい取ることによって浮かび上がるゲルダとロスチクの親子模様を継続して記録していくことは実に有意義だと思います。

一つだけ付け加えておけば、ゲルダというのはまだ幼い母親のように感じられることです。クルミやバフィンは育児初体験ではあったものの「幼さ」と言った要素は感じさせませんでした。それは彼女たちの年齢が大きく作用していただろうと思います。ウスラーダやシモーナやララやフギースやオリンカといった母親になりますと、母親としての育児スタイルの違いこそあれ、やはり熟練の手綱さばきといったものを感じさせるわけです。ところがこのゲルダはまだ初々しいといいますか、母親としてはまだ成熟していないものを感じさせます。ただしかし、ゲルダの潜在能力の大きさは大変なものであることは十分に予感できます。そういった意味ではゲルダは「未成熟の大器」、あるいは「未完の大器」といったところでしょう。なにしろゲルダはまだ8歳なのです。

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2016-09-25 23:00 | Polarbearology

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