街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワ動物園で保護された野生孤児ニカに欧州の多くの動物園が重大な関心を抱く

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モスクワ動物園のスヴェトラーナ・アクーロヴァ新園長とニカ
Photo(C)пресс-служба Московского зоопарка

ロシア極北・チュクチ自治管区のリィルカイピ村で野生孤児として保護された後にロシア軍の協力でモスクワまで移送され、現在はモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設で保護・飼育されたまだ一歳になっていない雌(メス)の幼年個体のホッキョクグマであるニカ (Ника)については、そういった一連の経緯は全て御紹介してきました。最新のイズベスチヤ紙の報道によりますと獣医さんのチェックではニカは歯が二本折れてはいる以外の健康状態は非常に良好だとのことです。このニカの映像で前回ご紹介していなかったものを下に御紹介しておくこととします。



さて、モスクワ動物園の新園長となっているスヴェトラーナ・アクーロヴァさんの話ですが、このニカがモスクワ動物園のヴォロコラムスク附属保護施設に移動して来て以来、欧州の複数の動物園が極めて大きな関心をこのニカに抱いているそうです。間違いなく欧州の動物園はモスクワ動物園に接触を図ってきているということでしょう。なんといってもこのニカは野生出身ですから、飼育下の「遺伝的多様性(Генетическое разнообразие)」の維持に大きく有利に働く状態を導くことになり、ホッキョクグマの繫殖計画に組み入れる必要性を認識していることが理由であることは誰の眼にも明らかだからです。アクーロヴァ園長はイズベスチヤ紙に対して語っていますが、欧州の動物園はこのニカが繁殖に成功した「果実」について欧州の動物園は入手の可能性があり、ニカそのものは決してロシア国外に出すことはないとも語っています。そしてこれはロシア連邦天然資源・環境省(Министерство природных ресурсов и экологии Российской Федерации)の自然管理局 (RPN)の決定事項であることにも触れています。こういったことは今までも散々このブログへの投稿で述べてきた通りです。ロシアの野生孤児出身個体は2000年頃を境にしてロシアはもう国外には出さないという国家的な方針を確立しているわけです。モスクワ動物園に問い合わせを入れてきた欧州の複数の動物園のうちの多くはこうしたロシアにおける野生孤児個体に関する取扱いを知っていると思います。しかし何故もうこうしてモスクワ動物園に問い合わせを入れてきているかと言えば、それは少なくとも5年後以降から誕生が期待されるこのニカの繫殖の成果を入手したいという希望を今の段階から示しているとみて間違いないでしょう。一方で、このニカのニュースが報じられた直後にモスクワ動物園に問い合わせを入れた日本の動物園はおそらく皆無でしょう。
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ニカ Photo(C)пресс-служба Московского зоопарка

日本の動物園でこのニカの繁殖の「果実」を入手しようと考えれば、それにはこの「果実」のパートナーとなる個体を有している動物園でなければならなくなったいるわけです。これはここ3年ほど前からのEARAZA(つまり事実上はモスクワ動物園)の方針となってしまったわけです。現時点でその「ニカの繫殖成功果実入手希望グラブ」への入会資格を有している日本の動物園は札幌・円山動物園と浜松市動物園の二園だけです。上野の場合はイコロとデアとの間で繁殖に成功し、本来は札幌市が最初に権利を得るはずのその個体(第一子)を上野が札幌市から権利を敢えて入手した時点で入会資格が得られます。横浜の場合はジャンブイとツヨシとの間での繁殖成功個体(第一子)を釧路市から権利を譲ってもらえれば入会資格が得られます。

飼育下のホッキョクグマをめぐる国際環境はどんどん変わっています。それについていかなければ、日本のホッキョクグマ界の未来は決して明るくはならないでしょう。

(資料)
Известия (Sep.30 2016 - Россия стала главным поставщиком белых медведей в зоопарки мира)

(過去関連投稿)
ロシア極北・チュクチ自治管区 リィルカイピ村でホッキョクグマの生後約8ヶ月の孤児が発見・保護される
ロシア極北 リィルカイピ村で保護された推定生後8ヶ月の孤児はモスクワ動物園で保護・飼育が決定
ロシア極北で保護されたホッキョクグマの野生孤児がモスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設に到着
ロシア極北で保護のホッキョクグマの野生孤児のモスクワへの移送の様子が公開 ~ ロシア軍が輸送に協力
モスクワ動物園・ヴォロコラムスク附属保護施設に移送された野生孤児は雌(メス)で「ニカ」と命名
by polarbearmaniac | 2016-09-30 12:00 | Polarbearology

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