街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ドイツ・ノイミュンスター動物園のカップ、パートナー獲得の見込みはあるか? ~ 苦戦するムルマの子供たち

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カップ (Eisbär Kap /Белый медведь Капля) - 豪太の兄
Photo(C)strebos

欧州のホッキョクグマ界を見ていきますと、あれれと思うことが時々あります。年齢的にも若いにもかかわらずパートナーがいないために繁殖に寄与できない個体というのがちらほらと見受けられるわけです。私の見たところその筆頭がドイツ・ノイミュンスター動物園(Tierpark Neumünster)の雄のカップです。彼は2000年10月にモスクワ動物園であのムルマから誕生したわけで現在は16歳になったばかりです。彼の誕生については「モスクワ動物園のムルマ(3) ~ 初産、そして訪れた危機」という投稿を御参照下さい。彼のロシア時代からの正式な名前は「カプーリャ(Kaplya/Капля) 」というそうです。このカップですが、欧州に移動した時には孤立的な血統であり、現在においてもコペンハーゲン動物園のボリスやマリンランドのラスプーチンなどといった彼の兄弟は欧州内にはいるものの(日本には豪太がいるわけですが)、いわゆる「ロストック系」などとは違って血統的には非常に少ない個体であるものかかわらず、今まで一度もパートナーを得たといった経験がないという不可思議な個体です。
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カップ (Eisbär Kap /Белый медведь Капля) Photo(C)shz.de

このカップが雄としての繁殖機能に欠陥があるという話は聞いたことがありませんし、事実ノイミュンスター動物園もカップのパートナーを獲得して繁殖に挑戦したいという意欲を持ち続けてきたわけで、仮に彼に繁殖能力の欠陥があるとすればノイミュンスター動物園はカップのパートナーを求めるといった態度を持ち続けていられたはずはないのです。同園の飼育展示場は狭くて環境も良好ではないと言われていたためにそこにカップのパートナーとなる雌を移動させるということが難しかったのではないかという推測も成り立ちそうですが、ノイミュンスター動物園はホッキョクグマ飼育展示場を大改修して、それが2014年5月に完成してカップは工事期間中預けられていたハノーファー動物園からノイミュンスター動物園に帰還しています。そういった経緯は過去関連投稿を御参照下さい。帰還からもう二年半が経過しているものの、依然としてカップにはパートナーがいない状態なのです。本当に惜しいことです。宝の持ち腐れとでもいえましょう。このカップの最近の姿をご紹介しておきましょう。のんびりとした暮らしぶりのようです。



このカップの母親であるモスクワ動物園のムルマの血統、つまり彼女の子供たちなのですが2012年12月に男鹿水族館の豪太が繁殖の成功(つまりミルク)に寄与するまでは全く繁殖の実績がないという状態が長く続いたわけで、この2012年12月の男鹿水族館での成功例の後は2014年11月の南仏マリンランドでのラスプーチンが繁殖の成功(つまりホープ)に寄与したのがやっと二例目といったところなのです。ノヴォシビルスク動物園のゲルダは私見によればムルマの娘ということになり、そうなると2013年12月に誕生したシルカは実はムルマの血統としての繁殖成功2例目となるはずです。いずれにせよ、モスクワのムルマの血統はコペンハーゲン動物園のボリスを含めてやはり繁殖には苦戦を強いられているということは言えるのかもしれません。しかし、苦戦を強いられているといってもこのカップの場合はそもそもパートナー自体がいないわけですから、それ以前の問題なのです。ここでもう一つ、カップの映像をご紹介しておきましょう。



何故 EAZAのコーディネーターはこのカップのパートナーを他園から移動させてくる調整ができないのでしょうか。オランダの動物園と比較するとドイツやデンマークの動物園の個体はEAZAのコーディネーターから軽視されているらしいということが、このカップの件から垣間見えてくるといっても過言ではないでしょう。先日「デンマーク・コペンハーゲン動物園がボリスとノエルの相性を否定的に評価し同ペア間の繁殖を断念へ」という投稿でコペンハーゲン動物園の雌のノエルと相性の悪いボリスが他園に転出し、ボリスの代わりに雄の個体が移動してくることがほぼ内定していることを述べたのですが、その際に私はこのノイミュンスター動物園のカップが適役であると述べました。実はアメリカの有名ブロガーさんも私と同じ意見を、ある場所で述べていることがわかりました。やはりマニアの考えることは同じだなと思いました。 このカップがコペンハーゲン動物園にでも移動しなければ、彼はこのままノイミュンスター動物園で暮らしていてもパートナーを得ることが難しいと思います。カップの今後に期待したいと思います。

(資料)
shz.de (Feb.29 2016 - Eisbär Kap war der Star des Tages) (Oct.23 2016 - Tierschutz contra Unterhaltung: Das Dilemma der Zoos)

(過去関連投稿)
ドイツ・ノイミュンスター動物園のマイカ逝く ~ その数奇なる生涯の終焉
ドイツ・ノイミュンスター動物園、悲願へのハードルの高さ ~ カップのパートナー探し難航
モスクワ動物園のムルマ(3) ~ 初産、そして訪れた危機
ドイツ・ノイミュンスター動物園のカップが同園展示場の地表改良工事のため一時的にハノーファー動物園へ
ドイツ・ハノーファー動物園のカップ (豪太の兄)が施設改修工事の終了したノイミュンスター動物園に帰還
by polarbearmaniac | 2016-11-03 01:30 | Polarbearology

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