街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ベルリン動物公園、産室内のトーニャお母さんに若干の余裕が生まれる ~ 隣室での水分補給

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トーニャ (Eisbärin Tonja/Белая медведица Тоня)
(2013年1月2日撮影 於 ベルリン動物公園)

ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)で11月3日にトーニャお母さんから誕生した双子の赤ちゃんは、その後に一頭が5日頃に産室内から姿を消し(死亡し)た模様ですが、残る一頭の赤ちゃんについて同園はまた最新の映像を公開しました。これは昨日14日のものですが、トーニャお母さんも幾分かは余裕が出てきたようで隣室に水を飲みに行ってまた戻ってきて赤ちゃんの世話をするといった様子だそうです。ですから下の映像の冒頭ではトーニャお母さんの姿は見えないというわけです。



担当主事のジックス氏は、赤ちゃんの誕生後から10~14日間が非常に危険な時期であるという認識を示しています。そういった時期を乗り越えようとしている赤ちゃんですので、いよいよ順調に成育できる見通しが出てきたことに幾分かの安堵の念を吐露していますが、まだまだ油断できる状態ではないことを認め、その一因として周囲の物音を挙げています。そして周囲に騒がしさや騒音が生じることがないように同園では警備会社に委託を行ったとのことです。警備員が付近を監視するということなのでしょう。ベルリンではあのクヌート以来のホッキョクグマの赤ちゃん誕生ですから一般の関心も非常に高くて同園への問い合わせも多いようですしマスコミ各社の取材も多いようです。同園はそういったことに応えて産室内の赤ちゃんの情報をネットなどで一般に発信したいと考えているものの、事前の準備が十分ではなかったことを認めています。
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トーニャ (Eisbärin Tonja/Белая медведица Тоня)
(2013年1月2日撮影 於 ベルリン動物公園)

さて、率直に言って私が非常に気になるのは、このベルリン動物公園、特にその担当主事であるジックス氏が産室内でのホッキョクグマの赤ちゃんの成長、その他について他園とは少し異なる理解と認識をしているのではないかということです。一例を挙げれば同園ではさかんに「赤ちゃんの誕生後から10~14日間における赤ちゃんの死亡率は50%である。」とマスコミの取材に述べています。だから生後10~14日間が危険な時期なのだという認識のようですが、しかしそういった「死亡率」(50%は根拠薄弱な数字です)だから生後10~14日間が重要だというのは倒錯した考え方であり、そもそもホッキョクグマの赤ちゃんの成育のフェーズこそが大事なのです。たとえば現在の一般的な認識では、最初にして最大の関門は生後72時間ということになっており、この期間中に授乳音が確認できるかどうかが大問題なのです。赤ちゃんが母親の授乳なしでも生きていけるのが生後72時間であり、だからこそその間に授乳が正常に行われているか否かが大問題なのです。ドイツの他の動物園、たとえばニュルンベルク動物園、ブレーマーハーフェン臨海動物園、ヘラブルン動物園、ロストック動物園、そしてその他の欧州の動物園でも、産室内における授乳の有無(主に授乳音)が確認できたことを情報としてが外部に発信しています。円山動物園も男鹿水族館も天王寺動物園も、今まで全てこの授乳の有無の確認(授乳音)をネットで発信した情報の中できちんと指摘しているのです。ところがこのベルリン動物公園では、お母さんは赤ちゃんに寄り添っているというようなことばかりを毎回の情報発信のたびに何度も述べ立てています。初期の段階でも授乳にはほとんど触れず、公開された映像は音声がなくて授乳音などは聞こえません。非常に重要な最初のフェーズを通過したかどうかを明らかにしないまま、メリハリのない情報をダラダラと垂れ流しているのがベルリン動物公園なのです。マスコミに関しても取材する記者にも問題があると思います。

トーニャの表情の変化 (A variation in Tonja's facial appearance at Tierpark Berlin, on Jan.2 2013)

いったいこれから赤ちゃんにはどのような危機をいつ頃乗り越えねばならず、そして生後何日頃にはどういった変化が現れるのかということにはフェーズがあるわけです。そういったフェーズの移行期こそが重要であり、それを無視した情報をいくら流しても、こちらの側はイライラするばかりということなのです。ベルリン動物公園にお願いしたいのは、赤ちゃん誕生後に存在してくるフェーズをきちんと押さえたメリハリのある情報発信をして欲しいということです。

(*追記)アメリカとロシアの動物園では産室内の赤ちゃんの成長といった情報はほとんど外部に発信しません。そういうことを行おうという発想はほとんどないようです。これはそういった文化だということなのでしょう。

(資料)
B.Z. (Nov.14 2016 - Einfach goldig! Hier versucht das süße Eisbären-Baby seine ersten Schritte)
rbb|24 (Nov.14 2016 - "Ich bin sehr zuversichtlich, dass es groß wird")
Tagesspiegel (Nov.13 2016 - "Die Überlebenschancen sind nicht besser geworden")

(過去関連投稿)
ベルリン動物公園(Tierpark Berlin)でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 第一関門は週末
ベルリン動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、第一関門の生後72時間を見事に乗り切る ~ 授乳音確認
ベルリン動物公園で誕生の双子の赤ちゃんは生後五日を乗り切る ~ 生後10日間を最初の関門ととらえる同園
ベルリン動物公園で誕生の双子の赤ちゃん、一頭が産室内で姿を消す? ~ 生存は一頭と同園が発表
by polarbearmaniac | 2016-11-15 06:00 | Polarbearology

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