街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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米トランプ次期政権とホッキョクグマ ~ 保護地域開発規制撤廃を求め連邦最高裁への裁量上訴の申立てへ

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アイラ (Eisbärin Aïra/Белая медведица Аира)
(2013年6月30日撮影 於 おびひろ動物園)

アメリカ合衆国の大統領選挙の当選者予想を行ったロシア・クラスノヤルスク動物園のホッキョクグマ、フェリックスはドナルド・トランプ氏当選予想を行い、見事に的中させました。フェリックスはなかなか賢いホッキョクグマのようです。何故なら彼は「こうであってほしい」という願望と「こうなるだろう」という現実の予想を別のものとして峻別できたのです。フェリックスが当選を予想したトランプ氏が次期のアメリカ大統領に就任以降は、ホッキョクグマには逆風が吹く可能性は大きいように思います。まずトランプ氏がホッキョクグマに関係があると思われる政策について選挙運動中に語っている演説をよく注意してお聞きください。ポイントは二つあります。



第一点として、昨年12月に2020年以降の地球温暖化対策を定めたパリ協定(Paris Agreement)からの離脱を示唆している点、第二点としてそれに関連して国連の温暖化対策への資金拠出を行わないことも述べています。そしてそういった選挙運動中の演説で述べたことを具現化する方向でトランプ氏は選挙後に環境保護局(EPA)の政権移行チームのリーダーに地球温暖化懐疑論者を指名しています。「地球温暖化とホッキョクグマの将来」というテーマでは本ブログでも何回か投稿してきましたので、その内容はここでは繰り返しません。ホッキョクグマの未来に逆風が吹いてきたといったような漠然とした認識はもちろん可能ですが、今回はこういった大きなテーマよりも、日本では報道されていない重要なニュースを取り上げたいと思います。
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アイラ (Eisbärin Aïra/Белый медвежонок Аира)
(2011年10月21日 於 札幌・円山動物園)

2010年にアメリカ内務省の魚類野生動物保護局 (U.S. Fish and Wildlife Service - FWS)がアラスカ州北側の沿岸地区及び海上にホッキョクグマ保護を目的とした「重要指定地区(Critical habitat designation)」を定め、行政規則による事実上の開発規制を設定したことに対してアラスカ州政府とアラスカの石油ガス協会が、その指定地区設定と行政規則の無効を求めて訴訟となり、第一審ではアラスカ州政府とアラスカの石油ガス協会が勝訴したものの上訴審でそれが覆ってFWS側が勝訴しホッキョクグマ保護にとって明るい材料となった件についてその推移を詳しく追いかけたことがありましたので、下の過去関連投稿を御参照下さい。 さて、訴訟の性格上この問題は第二審を最終審として決着したはずなのですが、それに不満を持つアラスカ州の石油ガス協会とアラスカ州政府は、この問題を合衆国最高裁判所 (連邦最高裁判所 - Supreme Court of the United States)に裁量上訴の申立て (petition for writ of certiorari) を行ったというニュースが報じられています。それを報じるTVニュースをご覧下さい。



通常、合衆国最高裁は憲法問題その他の重要な論点を含む事件以外は裁量上訴を認めないわけで非常にハードルが高いと言われています、本件で果たしてそれが本当に受理されて上訴審が行われるかどうかはわかりません。常識的に考えれば本件では管轄権の問題によってそれは非常に難しいと思うわけです。

ただしかし問題なのは現在合衆国最高裁の判事が一名欠員になっており、トランプ氏が大統領に就任直後に欠員を埋めるために保守派の新しい判事を指名することは確実で、そうなると多数を共和党が占める上下両院もそれを承認することは間違いないでしょう。となれば保守派の判事は開発規制といったものには消極的であるわけで、仮に上訴審が開始されるようなことがあった場合に私はFWSが勝訴した第二審が覆る可能性がないわけではない考えています。何故ならばアラスカ州の石油ガス協会とアラスカ州政府が勝訴したアラスカ州の連邦地方裁判所 (U.S. District Court)の第一審の決定(decision) のほうがFWSが勝訴した合衆国第9控訴裁判所 (9th Circuit Court of Appeal) の第二審の評決(verdict) の判断よりも純粋に法律的な観点からは論理が精緻だと思うからです。仮に合衆国最高裁が本来は最終審であったはずの第二審の結論を覆せば、アラスカの野生のホッキョクグマの保護指定地域には容赦なく資源開発が行われるでしょう。そうなればこれはホッキョクグマの生態にとっては重大な危機なのです。

果たして合衆国最高裁がアラスカ州の石油ガス協会とアラスカ州政府の裁量上訴の申立てを認めて心理が行われるのか....それに注目しておきたいと思います。

(資料)
KTVA.com - Anchorage, Alaska (Nov.6 2016 - State, Alaska Native corporations petition US Supreme Court to review polar bear habitat designation)
Alaska Public Radio Network (Nov.4 2016 - State, Native Corps ask U.S. Supreme Court to enter fray over polar bear habitat)
Alaska Dispatch News (Nov.11 2016 - Alaska calls for Supreme Court to weigh in on polar bear habitat)
Newsweek (Nov.13 2016 - What Can a Donald Trump Presidency Do to National Parks?)

(過去関連投稿)
アラスカにホッキョクグマ生息重要指定地区を設定へ
アメリカ・アラスカの連邦地方裁判所がホッキョクグマ保護の「重要指定地区」の設定を無効と判断
アメリカの控訴裁判所がホッキョクグマ保護の「重要指定地区」への開発規制を無効とした下級審の決定を覆す
by polarbearmaniac | 2016-11-15 19:00 | Polarbearology

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