街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・オレゴン動物園のタサル逝く ~ 「自分はもうここでは不要となった」と悟ったかのような死

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タサル (Tasul the Polar bear)
Photo(C)Oregon Zoo/Michael Durham.

アメリカ西海岸・オレゴン州ポートランドのオレゴン動物園で飼育されていた現時点では31歳の雌のホッキョクグマであるタサルが昨日17日金曜日の朝に安楽死という処置にて亡くなったことをオレゴン動物園は発表しました。彼女の病気は卵巣癌 (ovarian cancer) による合併症の急激な進行だったとのことです。 タサルは先週、超音波診断にて異常が発見されたため組織検査が行われ、癌と診断されたために昨日の金曜日の朝から手術が行われたそうです。ところがその手術で彼女の体内には広範に病状が急速に進行していたことが判明したために安楽死という苦渋の決断がなされたとのことです。

In Memory of Tasul, 1984 - 2016 (タサルを偲んで)

本当にもう、深い溜息をつかざるを得ません。タサルは確かにもう32歳になろうかという高齢ですので、いつ何時に死が訪れtてもおかしくはないようにも思いますが、しかしこの時点での彼女の死は明らかにノーラがコロンバス動物園から来園したことにあると考えて間違いはないでしょう。そしてタサルは高齢であったにもかかわらずノーラとの同居の試みを強いられたのです。タサルの安楽死をもたらせたのは確かに卵巣癌の合併症だったかもしれませんが、しかし高齢のホッキョクグマにとって環境の「激変」はこういった以前から体内に抱えてはいるものの進行はしていなかったであろう病気の急激な進行をもたらすものではないかということは、本ブログでいくつもの例でもご紹介してきた通りです。「タサルは本来はまだ長生きできた」というのが私の率直な気持ちです。彼女がたとえ31歳という高齢であったとしても、現時点におけるタサルの死は私には理不尽に思います。彼女は、やはりこのオレゴン動物園で今年7月に亡くなったコンラッドと並んで世界のホッキョクグマ界に大きな貢献を行ったホッキョクグマだったのです(過去関連投稿参照)。
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タサル Photo(C)Oregon Zoo

また一方で日本人的な死生観で言うならは、新しく来園した年若いホッキョクグマの姿を見たタサルは、「もう自分はここでは必要とされていない」と悟ったために自ら生きる意欲を失ってしまった」......そういう解釈すらできるように思えるほどです。本当にタサルには気の毒なことをしたと私は感じてしまいます。私はここで何度も、今回のコロンバス動物園からのノーラの移動先がオレゴン動物園であることに疑問を感じ、そしてスッキリとしない気持ちであることを述べてきました。高齢のホッキョクグマに一歳になったかならないかの幼年個体の「母親役」を期待するというのは、高齢のホッキョクグマには無理は話なのです。ペルミ動物園のアンデルマにはできても、母親になった経験の無いタサルには一層負担が大きいわけです。幼いノーラの相手役は高齢のタサルである必要はなかったのです。
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タサル Photo(C)Oregon Zoo/Michael Durham.

謹んでタサルの死に深い哀悼の意を捧げます。本当に長い間ご苦労様でした。

(資料)
Oregon Zoo (Nov.18 2016 - Zoo mourns Tasul, one of world's oldest polar bears)
OregonLive.com (Nov.18 2016 - Oregon Zoo polar bear Tasul dead at age 31)
KGW.com (Nov.18 2016 - Oregon Zoo polar bear Tasul euthanized due to aggressive cancer)
KAPP-TV (Nov.18 2016 - Oregon Zoo mourns Tasul, one of world's oldest polar bears)

(過去関連投稿)
アメリカ・オレゴン州 ポートランド、オレゴン動物園のコンラッドとタサル ~ 別離なき永遠の双子兄妹
アメリカ・ポートランドのオレゴン動物園が麻酔を使用せずにホッキョクグマの血液サンプル採取に成功
アメリカ・オレゴン州 ポートランド、オレゴン動物園のタサルがホッキョクグマの生態研究に協力
アメリカ・オレゴン州 ポートランド、オレゴン動物園で29歳となった双子のコンラッドとタサルの「雪の日」
アメリカ・オレゴン州ポートランド、オレゴン動物園の双子兄妹のコンラッドとタサルの近況 ~ 新施設計画
アメリカ・オレゴン州ポートランド、オレゴン動物園の双子兄妹コンラッドとタサルが元気に共に30歳となる
アメリカ・オレゴン州ポートランド、オレゴン動物園の「国際ホッキョクグマの日」のコンラッドとタサルの姿
アメリカ・オレゴン州ポートランド、オレゴン動物園のコンラッドとタサルの双子が31歳となる
アメリカ・オレゴン州ポートランド、オレゴン動物園のコンラッドが亡くなる ~ 31歳での双子の別れ
アメリカ・オレゴン動物園でノーラとタサルの同居開始準備のため二頭の初対面が行われる
by polarbearmaniac | 2016-11-19 08:30 | Polarbearology

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