街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で死亡した赤ちゃんの検死結果出る ~「授乳音 ≠ 授乳」

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イルカ Photo(C)MJMSOLO

デンマークのスカンジナヴィア野生動物公園(Skandinavisk Dyrepark) で11月23日早朝に誕生した双子の赤ちゃんは二日半後の25日の夜に共に死亡してしまった件についてはその経緯を逐次投稿してきました。この死亡した赤ちゃんたちの遺体の解剖が行われ、その結果をスカンジナヴィア野生動物公園は昨日火曜日に発表しました。

それによりますと、消化器の検査で一頭の赤ちゃんは僅かしか母乳を摂っておらず、もう一頭は全く母乳が摂れていなかったとのことです。このことはつまり、イルカお母さんは一応は母乳が出ていたものの、赤ちゃんたちが生き続けていくことのできる量の母乳は出ていなかったと同園は結論付けています。さらにスカンジナヴィア野生動物公園は、産室内の赤ちゃんたちがきちんと授乳されているかを判断するのにモニターカメラの音声を用い、そしてその音が聞こえていたことやその他の徴候によって「母親のイルカは母乳が出ている」と判断したももの、どの程度の母乳が実際に出ていたのかについては知り得るすべがなかったと述べています。

私が今までここで「授乳音」と書いていることは日本では一般的に「ささ鳴き」という呼ばれ方をしています。英語では “Humming vocalization” というような表現が行われます。大阪・天王寺動物園の産室内でのモモの「ささ鳴き」を再度聞いてみましょう。



この「授乳音/ささ鳴き/Humming vocalization」と授乳の有無については一般的には誕生後72時間以内に確認できなければならないわけで、この件については「大阪・天王寺動物園がバフィンお母さんの赤ちゃんへの授乳時の音声を公開 ~ 第一関門突破の可能性強まる」という投稿に書きましたので再度ご参照下さい。 さて、ところが今回のスカンジナヴィア野生動物公園の場合はこの音が聞こえ続けていたものの、赤ちゃんたちは非常に不十分か、あるいは全く母乳を摂ることができていなかったという、今までのホッキョクグマ飼育(繁殖)の常識とは非常にかけ離れた状況が生じていたことになります。つまり、

「授乳音/ささ鳴き/Humming vocalization」≠「授乳」

ということを意味してしまっていることになります。これは今までの常識を少し考え直さなくてはならないのかもしれません。それにしてもスカンジナヴィア野生動物公園というのは情報の開示が実に素晴らしいと思います。赤ちゃんの誕生直後からその産室内での推移について徹底的に説明を行い、そして検死記録からも重要な点を開示しています。赤ちゃんたちが死亡してしまったのは痛恨でしたが、同園では今までのイルカに代わって彼女の娘であるヌノが繁殖の主役の座につくことになります。期待したいと思います。

(資料)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Nov.29 2016 - Obduktion har skabt klarhed om isbjørneungers død)
アメリカ動物園・水族館協会 (AZA) 「ホッキョクグマ飼育マニュアル (Polar Bear Care Manual)」

(過去関連投稿)
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 乳腺刺激薬投与へ
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園のイルカお母さん、乳腺刺激薬の効力で再び母乳が出るようになる
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で誕生の双子の赤ちゃんは両頭共に死亡
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園の23歳目前のイルカ、繁殖の主役のバトンを娘のヌノへ
by polarbearmaniac | 2016-11-30 00:30 | Polarbearology

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